人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

ガザ地区空爆・・・政治の道具としての紛争

2008-12-31 07:10:00 | 時事/金融危機
■イスラエルのガザ空爆■

2008年は実に色々な事がありましたが、
イスラエル軍のガザ地区空爆で幕を閉じるとは実に後味が悪い。
今回の空爆はある意味予想されていた事でした。

○ハマスとイスラエルの停戦協定の期限が切れた。
○イスラエルが総選挙を控え、右派リクードの支持が高まる事を恐れる
 連立政権が、ハマスに対する強行姿勢を取らざるを得なかった。
○パレスチナの大統領戦を控え、ハマスは民意を集めたかった。

先にチョッカイを出したのは例によってハマスの方なので、
一方的にイスラエルを責める訳にも行きませんが、
ガキの喧嘩じゃあるまいし、100倍返しというのもやり過ぎの感があります。

■動機は内政■

今回の紛争のやりきれない点は、イスラエルの動機の多くが内政にある事。
イスラエルは現在中道の連立政権が右派のリクードと対立しています。
国民も長い扮装に嫌気して、リクード離れが進行しています。
しかし、エジプトが仲介したハマスとイスラエルの停戦協定で
政府が弱腰の姿勢を示せば、世論がリクード支持に回る恐れがありました。

ハマスもそこら辺を承知していて、停戦切れ前からロケット砲による攻撃を再開しています。
ハマスの存在意義もイスラエルとの対立あってこそで、
和平が成立したら、パレスチナ国民は経済支援を国際社会から約束される
ファハタ支持に回る可能性があります。
パレスチナの大統領選挙を控え、ハマスも内政的理由からイスラエルを攻撃しています。

ですから、本来は紛争を望まないイスラエルの現政権に
小規模な紛争の継続を望むハマスが喧嘩を仕掛けたところでしょうか。
結局、紛争の原因は、両国の内政事情です。

■思いがけないイスラエルの大規模空爆■

しかし、意外だったのはイスラエルの空爆が大規模だった事。
ハマスの力を削ぐにも、相手はゲリラ組織ですから、
本部や幹部を攻撃した所で、ロケット砲攻撃が止むとは思われません。
まして、簡単に移動できるロケット砲を空爆で沈黙させる事は不可能です。
攻撃が大規模になれば、国際社会も黙ってはいません。
ハマスも今回の空爆の規模にはビックリしている事でしょう。

■目的はガザ地区への国際部隊の駐留?■

本日の読売新聞にイスラエルの外務省高官の談話として、
「ガザ地区に(アラブ諸国中心の)国際部隊の展開は受諾可能」と掲載されています。
外相や国防相が強気の発言をしているのと対象的で、
ここら辺が政権の本音ではないでしょうか。

中途半端な空爆で紛争が長引くよりも、
いっその事、拠点施設を思い切り叩いてハマスを弱体化させてから、
親米湾岸諸国の部隊を駐留させて、ハマスの動きを牽制する。

■原油価格への影響■

湾岸諸国としても、中東の危機を煽る事で下落して原油価格が持ち直し、
混乱する国内経済に歯止めが掛かる事は歓迎しているはずです。

さらに、ファンドなど投機筋の決算の調整売りで原油価格が底を打っていただけに、
新年に向けては、原油価格は上昇する気運にあるはずです。
投機筋は底値で買った原油を、先物市場で高くさばきたいはずで、
彼らにとっても、この時期のガザ空爆は好感されるはずです。

当然、イスラエルはユダヤマネーとくっ付いていますし、
有効な投資先を模索するアメリカを初め世界のマネーは
中東での出来事を興味深々で見守っています。

■オバマ政権へのプレゼント■

ブッシュ政権は現状、積極的に調停に乗り出してはいませんし、
アメリカを無視してイスラエルがガザに空爆を加えるとも思えません。
今回の件は、ブッシュ政権とは調整済みとみるべきで、
オバマが今の所沈黙を守っているのは、
共和党と民主党の利害は意外と一致しているのかも知れません。

民主党の経済閣僚の顔ぶれを見ると、
今回の金融危機の最初の種を蒔いた面々ですし、
経済運営的には次期政権は、現政権の近い考え方なのかもしれません。

紛争が制御不能の事態にまで進展しなければ、
ブッシュ政権は、停戦調停を主導するという花道が得られるでしょうし、
あるいは、それをオバマの初仕事としてプレゼントする事もできます。
いずれにしてもアメリカはイスラエルへの影響力を維持できます。

アメリカにとって最悪のシナリオは、イスラエルの右派の台頭で
中東地域の緊張が制御不能なまでに高まり、
現在の経済情勢下で、イラクからの撤退もままならいまま、
イスラエルとイランやシリアが戦争に突入する事ですから、
空爆でイスラエル国内のガス抜きが出来るなら黙認するでしょう。

■犠牲になるのは爆撃下の人々■

いずれにしても犠牲になるのは爆撃下のパレスチナの人々で、
イスラエル人の死者に対して、パレスチナ人の死者は圧倒的に多く、
この非対称性は「虐殺」と呼んでも差し支えのないものかも知れません。
ハマスの対抗手段は当たるか当たらぬか分からない、ロケット弾だけですから。

日本でニュースに触れている私達は、「酷いな」とは思えても、
戦争を実感する事は出来ません。
むしろ、戦争の原因をあれこれ思い巡らせて、
大国のエゴを批判して満足してしまったりします。

実際に我々の頭上に爆弾が降ってくる事も、
道端に死体が転がっている事もありません。

ガンダム00を見る自分と、現実のニュースに触れる自分との間に
実はあまり隔たりが無かったりします。

■イラクで人質になった高東さんを批判した日本人■

以前、イラクで日本人3人が人質になりました。
あの時世論は、「自己責任」という言葉を使って
彼らを随分と批判しました。
私のその一人でした。

その後、高遠菜穂子さんの本を読んで大分反省しました。
彼女は確かに危機管理は出来ていませんでしたが、
紛争地帯に住む人々の苦しみを、
実感として捕らえる事の出来る数少ない人の一人でしす。
紛争地域で何が行なわれていて、人々がどうしているのか、
実際に自分の眼で確かめなければ気の済まない性格なのでしょう。

私の知り合いにも、イスラエルでパレスチナ人の子供と遊ぶ
ボランティアを続ける方がいます。
「危ないから止めたほうがいいよ」と思わず言ってしまいます。
「子供と遊ぶ事が、どう平和と結び付くのだろうか」とも考えてしまいます。
それでも彼女は何年間も休暇を利用してイスラエルに通い続けています。


■情報化の中で希薄化する実感■

現代はTVのニュースやインターネットで沢山の情報が得られます。
しかし、それはバーチャルな体験で、実体験ではありません。

人間はこの間接体験に慣れすぎてしまったのかもしれません。
パレススチナの出来事を口では非難しながらも、
実はその日の株の値動きのほうが気になる。

紛争のニュースは、景気や経済への波及効果とリンクして語られ、
暴力の実態は希薄化してしまう・・。
今もどこかで、我々の儲けの為に誰かが血そ流している・・・
世界経済の再生の為に、頭上に爆弾を降らされている人々が居る・・
そう考えると、呑気に新年を祝っている場合ではないのかもしれません。





アメリカ復活の切り札

2008-12-26 07:22:00 | 時事/金融危機
■GMACの銀行化■

「GMACの銀行持ち株会社化」。
GMにとっては、サンタクロースのビック・プレゼントですね。
これでGMACは公定歩合での資金調達が可能になります。
そのお金は当然GMの懐へ。
金融危機対策の資本注入も可能になりますから、
それもGMの懐へ。
これでGMの破綻は少し遠のいたのではないでしょうか。

■ドル安による輸入障壁■

とは言うものの、トラックの車台の大型SUVしか開発してこなかったGMに
日本車と競合して売る車があるのでしょうか・・・・。
一朝一夕には新車の開発は出来ませんから、
やはりGMの窮地には変わりありません。

しかし、今回、GMACを迂回してアメリカ国民の税金が投入される訳ですから、
アメリカ国民のGM救済の意識は高まるはずです。
その気持が、日本車排斥の気運に高まる恐れもあります。
自由貿易を推進する立場から、自動車関税を上げる訳にはいかないでしょうから、
やはり、ドル安誘導に輸入車排斥という流れになるのでしょうか。

ドル安になれば、生活用品初め様々な輸入品が値上がりして
国民の生活を圧迫しますが、
ドルと元が、事実上の固定相場であるので、
中国製品の値上がり小幅で済み、
生活用品の殆どを中国製に依存するアメリカ国民の痛みはそれ程大きくは無いのでしょう。
食料自給率は100%以上ですし、
原油価格もしばらくは低迷しています。

結局、ドル安で痛手を被るのは、日本車、日本製品という事になるのでしょうか?

■アメリカ国債への資金還流■

最近のアメリカ経済のダメダメぶりは信じ難いものがありますが、
アメリカ程の国が果たして、強欲資本主義によって崩壊するものなのでしょうか?
田中宇氏は、「隠れ多極主義者による意図的なアメリカの弱体化」と見ているようですが、
果たして、アメリカは世界の覇権を手放す気があるのでしょうか?

例えば一連の危機が意図的な物だとして、徳をするのは誰なのでしょう?
今、世界を徘徊するドルは行き場を失い、アメリカ国債に資金が向かっている様です。
ヨーロッパの資金もアメリカに還流しています。
この後に及んで「アメリカ国債」?とも思いますが、
金融市場が壊滅的状況で、資金がアメリカ国債に向かう事も道理です。

米国の企業や個人がアメリカ国債を所有すれば、
国際の投売りによる暴落リスクは低減します。

今回の金融危機は図らずも資金の国債への還流をもたらしました。

■アメリカの財政は大丈夫なの■

アメリカの財政赤字は6000兆円です。
6,000,000,000,000,000円。
コンピューター的言い回しをすれば、6千テラ円。
いくら日本のGDPの2倍を誇るアメリカ経済でも、
この金額を返済する事は大変な事です。


■デフォルトやデノミという危機演出■

アメリカは巨大な債務者ですが、
アメリカの破産は世界恐慌を誘発します。
ですから、日本や中国を初め、世界の国々はアメリカの突然死は望みません。

そこで、アメリカがちらつかせるカードは
国家破産(デフォルト)や、ドルの切り下げ(ブルーノードやアメロ)では?
「皆が助けてくれないと、破産しちゃうぞ!!」って、
「借りた金は返せないぞ!!」って、言外に匂わせるだけで日本政府はビビリます。
中国に対しては、「共産党政権を応援しちゃうよ。」って囁きが効果的です。

この2大債権国が、アメリカ国債の債権をいくらかでも放棄すれば、
アメリカの国債残高を減らす事が可能です。
損をするのは日本人と中国人。

日本人は従順ですから、多少の政治的混乱はあっても、暴動にはなりません。
中国人は、情報が秘匿されますから、いくら損したかも知らずに済みます。

後はドル安に誘導して、日本経済の競争力を削ぎながら、
国債負担を実質的に軽くする。
そして、国内産業の成長と復活を待つ内に、
紙くずと化していた債券や証券もいくらか価値を取り戻して、
アメリカ経済は不死鳥のごとく復活する・・・。

・・・てな訳ないか・・・。
とりあえず、オバマの一般教書演説が楽しみです。

SF(似非科学)の崩壊・・・ガンダム00

2008-12-24 06:51:26 | アニメ
■中3はオタク化の始まり?■

最近中3の息子のオタク化が著しい。
「オタクの息子はオタク」という事でしょうか。
頼むから、萌えキャラ系に走らないで欲しい。
私のオーディオセットで、萌え萌えのアにソンを掛けないで欲しい。
やはり男はガツンとガンダム!!

私も中3の時、受験そっちのけで、オリジナルのガンダムに夢中でした。
息子に聞くと「クラスではガンダム00は人気だよ、人間関係も複雑だし。」との事。
ちなみに00と書いて「ダブルオー」と読ませるらしい。
「ゼロゼロ」かと思ってました・・・。

■「オヤジ・ガンダム00を見る」■

「ガンダム・大地に立つ」的見出しにしてみました。
当然、頭の中では、チャチャチャーーン、チャチャチャチャンと鳴っています。

休日を利用して早速インターネットで最新ガンダムをチェック。
最新ガンダムは2ndシーズンで、続編でした。

ソレスタルビーイングという組織は4機のガンダムを所有し、
反重力炉のGMドライブを搭載して、圧倒的戦力で国連軍に対峙。
武力介入による危機誘発で、大国間の利害を一致させて地球連邦を樹立させ
争いの無い世界を創出する。
ソレスタルビーイングとガンダムは悪役に徹して「破壊による再生」を目指します。
ここまでが、1stシーズンの内容のようです。
(最終話だけチェックしてみました。)

2ndステージは、地球連邦樹立から5年後の世界。
連邦軍の精鋭部隊、独立治安維持軍「アロウズ」は連邦を維持する為に
非人道的な武力行使によって、連邦に参加しない国家や、
反対勢力を弾圧しています。
ガンダムの破壊によって再生した世界は、
結局、「暴力に支配された世界」に他ならなかった・・・。
そこで再び、ソレスタルビーイングが立ち上がり、
世界に真の平和をもたらそうと「アロウズ」に敵対していく。
(4話まで見たところ、こんな内容でしょうか)

00の技術的コアはGMドライブという反重力炉のようです。
GM粒子は電波撹乱やビーム撹乱効果もある様です。

■オヤジ・おおいに憤る■

オリジナルガンダム世代のオヤジには、ガンダム00は許せない内容でした。
ガンダムSEEDが、オリジナルガンダムの酷いリメイクならば、
ガンダム00は、Zガンダムの酷いリメイクでした。

サンライズはガンダムという資産をこんなに簡単に蹂躙して良いのでしょうか?
以前からガンダムには亜流がいくつも存在しますが、
オリジナル・Z・ZZ・シャーの逆襲へと続く、
「宇宙世紀」初期の歴史と世界観は確固としたものがあったはずです。

ガンダム00はどう見ても、連邦樹立期の宇宙世紀前史ですが、
技術レベルはオリジナルガンダムを遥かに凌いでいます。
いくら、オリジナル世代がもうガンダムなんて見ないとは言え、
ガンダムはサンライズの大事なコンテンツ資産であり、
ゆくゆくは、「世界のガンダム」として、
日本のコンテンツ資産となる代物です。
その世界観や歴史観は大事に扱われるべきです。

ディズニーは彼らのキャラクターや世界観を非常に大事ししています。
それが、世代を超えてディズニーが愛され、
全世界に浸透していく原動力となっています。
ディズニーランドにおいて、ミッキーは同時に同じ場所に二人は現れません。
ミッキーは一人(一匹)しかいないからです。
ディズニーランドの草花は枯れていません。(手で1本1本摘み取られます)
おとぎの国に枯れた花は無いからです。

コンテンツ・ビジネスはコンテンツが荒れてしまわないように、
細心の注意と管理が必要です。
サンライズは、儲けに走るあまり、コンテンツの価値を貶めています。

ガンダムSEEDを見て、富野は激怒してターンAを製作したようですが、
ターンAは、細心の注意を払って、オリジナルガンダムの資産を利用しています。

■科学亡国日本■

ガンダムは曲りなりにもSFです。
SFは似非科学ですが、似非科学なりのリアリティーが必要です。
ファーストガンダムのミノフスキー粒子はSF的発明です。
電波撹乱により通信を無効化した結果、宇宙における接近戦が必要になり、
接近戦よう兵器としてのモビルスーツが必要になる。
この初期設定は非常に重要です。

さらに、重力下ではモビルスーツは鈍重な存在です。
決して、空など飛べる代物ではありません。
この重量感と鈍重さが、モビルスーツの魅力なのです。

ところが、ガンダム00のモビルスーツは反重力炉を利用して空を飛び回ります。
これは、製作者が既にモビルスーツの魅力の本質を理解していない事を示しています。
空を飛べば、動きが早くなり、セルの節約になり、制作費の節約にはなります。
これはZガンダム時代にサンライズが編み出した節約法ですが、
他社はCGでこの問題を克服しようとしています。

マクロスFのCGは素晴らしいものがありました。(「スタジオぬえ」でしたっけ?)
樋口慎二のGONZOも、CG開発に余念がありません。
CG化に大きく遅れを取ったサンライズはオタクに擦り寄った
キャラクター路線に傾倒しています。

SF的設定事態が今の子供に受け入れられないのかもしれません。
だいたいガンダム00では、スペースシップが宇宙から大気圏に突入し、
減速せずに海中に突入します。
それにより津波を発生させて、敵施設を強襲する・・・・。
そんな、バカな・・・・。
これはSFではなく、単なる子供のアニメです。
だいたい、スペースシップの乗員がったったの8人です。
戦闘艦は24時間体制だから、休息すら取れません。
半舷休息になったら、4人体制になってしまいます。
家族経営の「ザンボット3」の時代に、サンライズは逆戻りです。

そりゃあ、これだけ理科の教科書が薄くなれば、
子供達の科学的知識も希薄になるでしょう。
昔はラグランジェ・ポイントなんて言葉に萌えたもんですが・・・。

子供の頃からアニメを見て育ち、アニメの専門学校に通って
アニメ製作者になった人が作るアニメなんだな・・・ってつくずく思います。
きっと、ハードSF小説なんて読んだ事ないんだろうな・・。
ニュートンなんて雑誌も読まないんだろうな。

■リアリティーの欠如■

ガンダム00はシリアスな世界観を設定しています。
大国間のエゴによる争いと紛争の世界。

しかし、そこにリアリティーが全然ありません。
概念があって、ディテールが無いからです。
絵的には中東であったりしますが、生活感が無い。
戦争のリアルも無い。

オリジナルガンダムの前半は、ひたすら修理と補給の話です。
モビルスーツをひたすら修理し、敵のパーツすら流用し、
敵の勢力化で多大な犠牲を発生させながらも、
マチルダ部隊が兵站を担う・・・。
戦闘の度毎に、傷兵が増え、軍医が駆け回る・・・。

戦争とは「大量の物資消費」であり、勝敗は兵站の確保で決まります。
太平洋戦争で日本は制海権を失い、南方はの兵站路を失います。
日本兵は、戦死では無く餓死で多くの命を失いました。

湾岸戦争においても、日本にアメリカが最初に要求したのは輸送船です。
イラク戦争でゲリラが襲ったのも兵站輸送の車列です。
パキスタンの混乱が悪化すれば、米軍やNOTOはアフガニスタンで苦戦を強いられます。

結局、戦争を知らない世代が、戦争を語る空しさ(私もですが)。
「世界は平和では無い」と声高に主張しても、リアリティーを伴わない。

■人が描けない現代アニメ■

オリジナルガンダムの魅力は何と言っても「人のリアリティー」でした。
安彦良和の作画の力も去る事ながら、
細かな人物の描写の積み重ねが、血の通ったキャラクターを作り出していました。
ブリッジでブライトの制服を繕うミライの些細な仕草に、リアリティーが宿るのです。
結局、小津安二郎の映画です。

アニメを見て育った世代に、そういう描写は出来ません。
派手な動きやカメラワークは出来ますが。

■アニメ教育■

結局、視聴率が取れるからガンダムを再生産する事は
ガンダムを消耗させてしまいます。
サンライズはオリジナルのコンテンツに挑戦するべきです。
今見ても、カーボーイビーバップの面白さは格別です。

アニメも40年以上の歴史を持つ様になりました。
父親達よ、息子達が萌えキャラオタクになる前に、
歴史的名作をしっかり見せようではないですか。
アニメはジブリとディズニーだけではありません。

ガッチャマンのスタイリッシュな絵作りを、
オリジナルガンダムの演出の上手さを、
ボトムスの重厚な世界を、
イデオンのSF的な面白さを、
エバンゲリオンの革新を
カーボーイビーバップの粋を、
しっかり子供達に伝える事が、
アニメコンテンツを輸出ビジネスとする日本のお父さん達に求められています。

アニメの輸出額は鉄鋼の輸出額より多かったと思いますが?



Kの正体が安斎真子だとは・・・ミステリーとしては

2008-12-22 04:41:37 | アニメ
■Kの正体■

我が家の週末の楽しみ、「ブラディーマンデイ」がとうとう最終回。
教団の影の支配者「K」の正体が安斎真子だったとは意外を通り越して唖然。
だって、初回からさんざん九条音弥の謎の表情を見せられていたので・・・。

最近、ミステリーなのにミステリーとして成立していない話が多くないですか?
伏線が無いのに、いきなり「犯人はこの人だ!!」みたいな。
娘に聞いた、「流星の絆」の結末も近いものがありますし・・。

本来、ミステリーは、
「あいつも怪しい、こいつも怪しいい・・・
 でもやっぱりこいつが犯人だったのか。」
という楽しみ方をするものでしょ。
それなのに、話のツマみたいなサブキャラがイキナリ
「実は私が犯人でした!」っていうのは反則だと思います。

「ブラディー」では、犯人はやはり九条でなければならない。
そして、大量殺戮に価する、信念が存在しなければならない。
そして、JはKの計画を阻止する為に、多少の犠牲を我慢する存在。
当然、マヤにも金意外の目的が欲しい・・・。
本当は加納さんもKの仲間でした。しかし最後は目的を違えて・・・。

・・・・しまった、妄想が暴走してしまいました。

■「想像せよ」■

しかし、「ブラッディーマンデイ」の様なテロが日本で現実に起きましたよね。
「オーム真理教」のテロでは細菌テロも計画されていましたし・・・。
結果として彼らの手にしたものが少量の、「サリン」だったので、
被害はあの程度に済みましたが、
もし、彼らの手にもっと殺傷力のある物があったとしたら・・?

サスペンスのジャンルでこそ、殺人には合理的な目的や、理由が要求されますが、
カルト教団のテロには、彼らの狂った理想はあっても
我々の世界から見た正当性は一切無い事も事実です。
そういった意味においては、「ブラッディーマンデイ」の安直に見える教団の行動は
意外と現実のカルト教団の行動原理に近いのかもしれません。

東京でウィルステロ、東京で核テロ・・・
そんな事は起こるはずが無いと、疑いもせず我々は生活しています。
しかし、実際にウィルスの持ち込みは防ぎようがありません。
新型の鳥インフルエンザは、人為を介さずとも鳥が運んできます。
隣のテロ国家は核兵器とその運搬手段を所有しています。

「想像せよ」とは、どこかのアニメのテロリストの台詞ですが、
現実は意外とフィクションと背中合わせなのかも知れません。


「貴族」と「庶民」・・・金融危機の先にあるもの

2008-12-18 05:22:00 | 時事/金融危機
■ビック3を救済

自動車産業が本当に大変な事になってきました。
ビック3は、経営が好転しうる要因が全く無いのだから、
政府に救済されようが、されまいが、
ゆくゆくは市場から消える運命なのでしょう。
救済策は、ソフトランディングかハードランディングかの選択。

例え救済されても、結局、本業の車が売れなければ、
3ヶ月、半年で事業資金が底を付いて、The END
それまでに米国内の部品メーカーの救済や再編が出来ていれば、
日系自動車メーカーは生き延びられるでしょうが、
それも失敗したら、日系自動車メーカーも一連托生・・・。
まさに、「死なば諸共」状態で・・・・。
尤も、少しくらい工場が止まった所で、膨大な自動車在庫が溜まっているでしょうから、
その間にどれだけ、サプライヤーを確保出来るかがカギとなるのでしょう。

■ドルは持ちこたえるのか■

ビック3が倒産となった場合、一番心配なのはやはりドル。
ドル不安が一気に加速して、誰かがドルを売り始めたら雪崩を打って・・・・。
イヤー、想像するだけでも恐ろしい・・・。

ネットには新北米大陸共通通貨(アメロ)や、
新ドル紙幣(ブルーノート)の話も飛び交っていて、
さらに、CNNが「アメロ」絡みの報道をしたり・・・。
これって、任期あと僅かなブッシュ政権のイヤガラセですか?
「イタチの最後っぺ」みたいな。(かの国では、スカンクなんでしょうが・・・)

ドルの崩壊論などは今に始まった事では無く、
以前から幾多の本が出版されています。
「刃物を見て、手を切る事を想像してしまう」に近いものがあるかも知れません。
ドルの一極体制はそもそも危険な物なのでしょう。

■投資銀行は商売になるのか■

ビック3倒産などというのは、崩壊の引き金にはなるのでしょうが、
崩壊のそもそもの要因は、やはり金融の崩壊。

今、アメリカ政府は必死に金融機関に資本注入していますが、
今注入しているお金は、既に明確化している返済に充てるのが手一杯でしょう。
元投資銀行は新しい商品を組成して売る事が出来ないのですから、
こちらもビック3同様、商売は成り立っていません。
利払いと、CDSなどの清算だけがグルグルと回っている状態でしょうか。
元手は救済資金でしょうか・・・・。

リーマンの破綻だけでこれだけの大騒ぎですから、
ゴールドマンあたりがコケたら、回るものも回らなくなる。
既に、ゴールドマンは創業以来の赤字を計上しています・・・。

■楽観論と悲観論■

全くもって危機的な経済状況ですが、
楽観的な見方も出来ます。
「アメリカの現在の金融政策は日本のバブル処理に似ています。
日本のバブル処理が上手く行ったのだから、
きっとアメリカでも成功して、何年後かには経済は持ち直す。」
・・・そんな予測でしょうか。

しかし、今回の金融危機と日本のバブル崩壊には根本的な差があります。
日本のバブル崩壊は確かに無理な融資が積み上がった結果ですが、
その融資先はリゾートであったり、ゴルフ場であったり、現物が存在しています。
破綻して一旦は価値が下がりますが、担保としての価値が残ります。
幾分目減りはしますが、経済が持ち直せば、不良債権も又価値を取り戻します。
再生機構入りした企業も、多くが再生しています。

しかし、今回の金融危機の場合、
お金に対してお金でレバレッジを掛けています。
1万円の手元資金しかないのに、10万借り入れて金融商品を購入する。
時価会計で、見掛け上の時価総額が膨れ上がり、巨大な融資を受ける。
こんなデタラメが繰り返されたお陰で、
収益として見込まれていたお金は、実はフェイクだった・・・。
はっきり言って、「詐欺に引っかかった」と思えば分かり易いでしょう。

こう考えると、悲観的にしか考えられなくなります。


■借金は誰が返すの■

こうして膨らんだ借金を誰が返すのでしょう?
アメリカ政府がいくら資本を注入しても、
国家予算の何倍にも膨れ上がったフェイクマネーを実体化する事は不可能です。
そもそも、フェイクマネーの実態がドルなのですから。
誰かが、「大様は裸だ!!」と言った瞬間に、
ドルは大暴落して、フェイクマネーは紙切れとなるのでしょう。

輪転機をガンガン回してドルを刷りまくったり、
国債をバンバン発行したりすれば(現にそうしていますが)
結局ドル崩壊、アメリカ国債の暴落、アメリカ国家のデフォルト行き着きます。
そう言った意味でも、今回のアメリカの0金利政策も量的緩和緩和も
長期的に見ればドルの終焉を早めるだけです。
ただでさえだぶ付いているドルをさらに供給するだけですから。


■実体経済の失速こそが本当の危機■
               
債権化、証券化された金融商品は、リスクヘッジという名目で細分化されていますから、
サプライムローンの時の様に、損失が確定するまでに時間が掛かります。
遅延タイマー付きの時限爆弾のように、来年あたりに思わぬ所で爆発します。

それが怖くて、各金融機関は手元に資金をなるべく残そうとしますし、
金融株の下落が自己資本率を引き下げてしまいますから、
貸しはがしこそすれ、大口の貸し出しは出来なくなります。

企業の直接金融市場も停滞していますから、
CPを発行しても普通の利息では買い手が付かない・・・。
健全な企業でも、資金調達コストはどんどん高くなって行きます。

流動性の極端に低下した状態の中で、
大企業といえども企業活動は大きく制約を受け、
世界経済は負のスパイラルに突入します。

■20世紀の終焉■

今年は21世紀に入っても続いていた「20世紀型の社会」が終焉した年として
人々の記憶に残るでしょう。
「実際の生産力以上の消費を続ける社会の終焉」とも言えます。

20世紀初頭は帝国主義という格差と詐収によって、
後進国の富を先進国が吸い上げてきました。

21世紀に入ってからは、金融というトリックを使って、
国家間のみならず、自国や世界の未来の富を吸い上げて来ました。

もう富の生産以上の消費は限界に達しています。
仮にBRIC'S諸国が20世型の消費社会に突入しても
吸い上げる富が枯渇しています。
中国やインドの発展は、自国内の格差が生み出すものですから(安い労働力)
あっという間に疲弊してしまいます。

■新貴族社会■

富の生産は有限です。
基本的には太陽によってもたらされるエネルギーの変換によって生み出されます。
石油も石炭も、鉄鉱石までもが過去の太陽エネルギーの缶詰のようなものです。
この有限の富を分配する人間が増えれば、当然一人当たりの分け前は減ります。
分配する国が増えれば、当然、それぞれの国の分け前も減ります。

結局、グローバリゼーションが世界を均質化する過程の中で、
富は世界に拡散して、薄まってしまいます。
覇権国家という概念自体がグローバル化した世界においては成立しません。

労働の国際化は先進国の賃金を引き下げ、
優秀な人材の国家間の流動性を加速します。

最終的には、少数の富める者と、大多数の中流以下が出現します。
「貴族」と「庶民」と言い換える事も出来ます。
富の世代間の流動性が確保されていれば、アメリカ型の社会になりますし、
流動性が低ければ、ヨーロッパ型の貴族社会が出現します。
「銀のスプーンを咥えて生まれてきた者は・・・」ってやつです。

自動車メーカーの蹉跌は、その辺を読み違えた事にあります。
25万円のインドの乗用車は求められますが、
高級車に乗れる人は、どんどん減っていきます。
それが、グローバリゼーションなのだから。
昨今の高級車ブームは、金融トリックによって未来の富を使ってしまっただけなのです。

今回の金融危機を境に、
世界はデモクラティックの幻想を捨てなければならないかもしれません。
既に、アメリカの民主党次期政権だって、
労働者の権利とは程遠い政策を採らざるを得ません。

人間が「生き物」で、本質的に競争を望む以上、格差は発生します。
又、競争の無い社会や生物は衰退していく事は、社会主義の消滅でも明らかです。

21世紀の社会で、「貴族」になるか「庶民」となるかは
「生命力」や「欲望」といた根源的な活力の違いが決定するのかおしれません。

私はというと、・・・・やっぱり「庶民」ですね。