人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

下品で愛らしい「宇宙人」・・・『宇宙人ポール』

2011-12-31 02:54:00 | 映画
 




■ 息子と映画を見に行こう!! ■

家内と娘が「女子会」に出かけてしまったので、
何となく息子と二人きりになってしまいました。
くやしいので、「男子会」をする事にしました。

・・・と言っても、息子も高3です。
「お父さんとラーメンでも食いに行くか?」と聞いたら
「イヤ、腹減ってねー。ラーメンは昨日食べたし」と瞬殺。

そこで映画で釣ってみる事にしました。
ネットで検索すると、こんな映画を見つけました。
『宇宙人ポール』

いかん・・・ツボった

息子に「『宇宙人ポール』なんてどう?」と聞いたら、
「これ絶対ハズスし・・」と言われてしまった・・・。
確かに親子で合計3300円をドブに捨てる気もするが・・・。
でも、「世間ずれすた宇宙人とオタク男二人のロードムビー」って書いてあるし、
・・・それに、このスチルの間抜けさはどうだろう・・プ!

息子とは、「昼飯に美味いもの食わせる」と言う事で手打ちしました。

■ 小ネタ満載のコメディ-映画 ■

映画の宣伝ページにはこう書かれています。

「『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』の
サイモン・ペッグ、ニック・フロストの作品である。これはもうハズレのワケがない。」

両作とも未見なので判断のしようがありませんが、
スチルを見る限り、何かビンビン来るものがあります。
ワクワクしながら、ポップコーンを頬張りながら、開演を待ちます。

<ここからネタバレ>

60年前、草原の中に一軒家での出来事。
飼い犬が騒がしいので、少女が外に出してあげると、
犬めがけて墜落してきたのが・・・UFO。

その60年後。
イギリス人のオタク、SF作家のクライヴ(サイモン・ペッグ)と
相棒であるイラストレーターのグレアム(ニック・フロスト)は
サンディエゴのオタクの祭典、
コミコン(アメリカ版の「コミケ」)にやって来ます。

幼い頃からの親友の二人は、コミコンを堪能した後は
キャンピングカーを借りて、
アメリカのSFスポットとUFOスポットを廻る旅に出ます。

仲良しの二人はSF映画の撮影スポットで怪獣ごっこに興じ、
UFOスポットとして有名なブラック・メールボックスで記念撮影。
さらに墜落したUFOが持ち込まれたと言われる
ロズウェル事件のエリア51に向かいます。

UFOカフェで怖いにちゃん達に絡まれた二人は、
一目散でキャンピングカーで逃げます・・・
と、猛スピードで追って来る車が・・・いきなりクラッシュします。

恐る恐る壊れた車に近寄る二人・・。
すると、背後から現れたのは・・・
ポールと名乗る宇宙人。

■ 陽気な宇宙人 ■

60年前にUFOが墜落してロズウェルに監禁されていたポールは
すっかり英語も達者で、アメリカン・スラングで喋りまくります。
途中で何故かキリスト教福音派の娘を拉致して(寝てました)
4人連れとなった一行は、、おかしな宇宙人と
次第に打ち解けて行きます。

ポールはウィットに富み、心温かで、そして悪戯心満載の
古き良きアメリカ人を絵に描いたような宇宙人だったのです。

そんな一行に追ってが迫ります。
FBIの捜査官風の男と、地元警察のオバカ刑事二人。

さて、ポールと一行は無事逃げる事が出来るのか・・。
ハートウォーミングでトホホな旅が始まります。

■ SF映画の小ネタが満載 ■

『宇宙人ポール』の見どころははっきり言って、
SF映画のパロディーやオマージュが満載な所。

「ET」に始まり「未知との遭遇」や「コクーン」
シガニー・ウィバーの出演や、スピルバーグのカメオと
SF映画ファンのハートを直撃するシーンが一杯。

■ 主演二人と宇宙人の掛け合いの素晴らしさ ■

この映画、単なるB級SFコメディーなんだけど、
主演の二人、サイモン・ペッグとニック・フロストの二人の演技が冴えています。
幼い頃からのオタク友達の絆が、ジンワリと滲んできます。

きっと、この二人、何をするにも一緒。
同じ物に感動して、同じ映画を見て、同じ本を読んで育ったのでしょう。
クライブはグレアムに淡い好意を抱いていますが、
この旅は、そんな彼の思いとの決別の旅でもあったのでしょう。

だから二人だけで、思い切り好きなSFのスポットを回る旅を楽しみたかった。
ところが、変な宇宙人は一緒になるは、
グレアムがキリスト教娘と良い雰囲気になるわで、
クライブにとっては、少し複雑な気分の旅となってしまいました。

ところが、そんなクライブの気分を察する事が出来たのは、
何と、宇宙人であるポールでした。
ポールはクライブに、友人の様に語りかけ、
いつしか彼の心を癒して行きます。

一方クライブはキリスト教娘にぞっこん。
彼女は彼女で宇宙人の存在を突き付けられて、
進化論すら否定する「福音派」としての信仰が消し飛んでしまいます。
慣れないスラングを連発してみたり、
クライブにキスをしてみたり、大はしゃぎです。
そんなクライブとキリスト教娘の恋は、
初めて恋をしたティーンの関係の様で、
キス一つにも、ドキドキします。

ポールとの出会いが、大人になれなかった3人の時計を
少しずつ進めてゆくのです。

■ 一晩たったら、良い映画になっていた ■

B級SFコメデェーを傑作とは言い難いのすが、
脚本をもこなすサイモン・ペッグとニック・フロストの才能は素晴らしい。
地元警察の二人組のドタバタした演技さえなければ名作と言っても過言ではありません。

劇場を出た時は、息子と「60点かな」などと言っていたのですが、
一晩寝たら、「85点」くらいの映画になっていました。

この脚本で、「レニングラード・カーボーイズ・ゴー・アメリカ」の
アキ・カウリスマキが演出したら、「外人=エーリアン」的視点から
歴史に残る名作になっていたでしょう。

或いは、「コクーン」のロン・ハワードだったら、
家族で楽しめる、ハートウォーミオングな大傑作になっていたかも知れません。

■ 記憶に残るオバカ映画 ■

息子と映画に行くのならば、「ミッション・イン・ポッシブル」が妥当でなのでしょうが、
やはり私としては「記憶に残る映画」を見たかった。

『宇宙人ポール』は、トホホ感と共に、
それでも息子の記憶に残り続ける映画だと思います。

「昔、オヤジとバカな映画を見てさ、でも、あれ、もう一度見たいんだよ」
将来、息子が子供にそう語っている所を妄想して、ニヤニヤしてしまいます。


■ 今年も一年間、ご愛読ありがとうございました ■

最後に、皆さま今年も一年、
「人力でGO」をご愛読頂きありがとうございました。
震災以降、こちらをお読みになられている方も、ありがとうございます。

激動の一年を締めくくるのが、B級SF映画とは、
何とも締まらないブログですが、
それゆえに、コメント欄も荒れる事無く続いているのだとも思います。


何かと落ち着かない2011年が終わり、
いよいよ明日からは2012年に突入します。

来年が皆さまにとって良い年でありますように。





変態ギタリスト特集(1)アート・リンゼイ・・・ギターってこんな楽器だっっけ?

2011-12-30 02:18:00 | 音楽
 

■ 音楽をかく乱するアートリンゼイ ■





ギターという楽器は調律された弦を弾いてメロディーを奏でたり、
コードを押さえながら、リズムを取る楽器だというのが世の常識です。

私が若かった頃、ギター少年の憧れはクラプトンやジミー・ヘンドリクス、
或いはヘビメタが隆盛を極めんとする頃だったので、ヴァン・ヘイレンだったりしました。

私は学生時代、大人の振りをしてジャズを聴いていたりしましたが、
実はフォービートジャズというのが面白く無い。

そんなある日、「ストレンジャーザンパラダイス」を映画館で見て
その主演の人を喰ったようなチンピラを演じているのが
ジョン・ルーリーというジャズプレーヤーだと知りました。
CDショップで、彼のCDを探すと「ラウンジリザース」というアルバムがありました。
「ラウンジリザース」はジョンのバンドで、
そのジャケットは飄々とした不思議な雰囲気をしています。

CDの一曲目から、なんだか怪しい雰囲気です。
オフビートの上を、脱力したアルトサックスが漂っています。
そして、キュッ、キュア、キュゥンッ などと変な音がしています。
ギターの音ではあるのですが、コードでも無く、
ただ適当に掻き鳴らしているだけの様な音が断続的に続きます。

???と思っていると、いきなりムチャクチャなギターが飛び出してきて、
もうイスから転げ落ちそうになりました。
お父さんのエレキギターを、3歳の子供が遊びで鳴らした様な目茶苦茶さです。
これが私が「変態ギタリスト」アート・リンゼイと出会った瞬間でした。

上のyoutubeの2分5秒であなたもイスから落ちるでしょう。

ギタリスト(?)の名前は、「アート・リンゼイ」。
彼は何と、調律されていないエレキギターを
本当に適当に掻き鳴らす、ギタープレーで注目され、
当時のNYアンダーグラウンドシーンの寵児でした。

アート・リンゼイの演奏は、既存音楽の予定調和を破壊する装置として、
ジョン・ゾーンを初めとするNYの先鋭的なミュージシャンに注目され、
さらにトーキング・ヘッズのデビット・バーンなども彼のファンでした。

NYアンダーグランドシーンは「フリーミュージック」のメッカでしたので
所謂、「ノイズミュージック」にはうってつけのギタープレイヤーだったのです。



■ ラテン・ファンクというジャンルを作り出した「アンビシャス・ラバース」 ■



一方、アート・リンゼイはキーボーディストのピータ・シェラーと
双頭ユニットである「アンビシャス・ラバース」でCDを発売していました。
相方のピーター・シェラーはクラシックの素養もあり、
ピーターの作りだす、ヘビーでタイトなラテン・ファンク・ビートの上で
アート・リンゼイのギターが時折炸裂するというスタイルで、
当時のNYや世界の新し物好きが飛び付きました。

上の映像はTV番組にアンビシャス・ラバースが出演した時の映像です。
アートは確かに普通のギタープレーはしていませんが、
何だか、彼なりの独自のセオリーに従って演奏しています。

その後何度か来日公演で彼の演奏を目にしていますが、
だんだんと派手なノイズは演奏しなくなり、
ギターの弦をコチョコチョと擦ったり、
ネックの辺りをコンコンと叩きながら、
細かなリズムを作るスタイルに変化します。

それでも、時折炸裂するノイズを観客は待ちわびます。
これはこれで、「放置プレー」状態で快感を増幅していました。

16歳までブラジルで過ごしたアートにとって、
ギターは打楽器に近い存在なのかも知れません。

ところで上のyutubeの映像にある「コピー・ミー」という曲は
アンビシャス・ラバースのCDに収録される前に、
ブラジルの現代ポップスの至宝、カエターノ・ベローゾがステージで歌っています。
カエターノがNYに来た時に、空港に迎えに行ったのが若き日のアート・リンゼイでした

アートも大学で「詩」を専攻していた事から二人は意気投合した様で、
カエターノ・ベローゾは自身のアルバムをアートにプロデュースさせています。

尤も、ちゃんとした音楽的素養の無いアートが何をプロデュースするのか不明ですが、
同様にアートをプロデューサーに迎えたトーキングヘッズのデビット・バーンは
「アートがそこに居るという空気感が良いんだ」といった発言をしています。

アートはブラジル音楽界とも繋がりが深く、
アンビシャスラバースのバックミュージシャンは、
ブラジルの天才パーカッショニストのナナ・ビスコンセロスや、
職人的ギタープレーヤーの、ロメロ・ルバンボなどです。

アンビシャスラバースはキリスト教の「七つの大罪」に従って
「envy(嫉妬)」「greed(強欲)」「ust(色欲)」と3枚のアルバムを出しますが
だんだんと音楽のプロポーションが端正になる一方で、
初期のアルバムにある様な、衝動を失ってゆきます。

7つの大罪シリーズの完結を見る事無く、
アンビシャス・ラバースは解散します。

■ 音楽の表層を切り裂きながら進むアートのギター ■

[[youtube:jkHo-IN7OEM]]

この時代のアートの演奏が光るアルバムを一枚上げるとしれば
バカテク・ギタリストのビル・フリーゼルの「Before We are born」でしょう。
あまり良いyoutube映像が無かったのですが、
独特なトーンから、いきなりジミヘン・スタイルの突入するビル・フリゼル自身の
ギタープレーも鳥肌ものです。
アンビシャス・ラバースの方割れピーターの生みだす
ヘビーなシンセベースのビートもカッコよすぎます。

そして、曲調が一変した4分目くらいからアートが静かに暴れます。
本当はこのアルバムの「The Lone Ranger」のアートの演奏が凄いのですが
youtubeにアップされていなかったので・・・。

ジャズ評論家の「清水俊彦」はこのアルバムのアートの演奏を
「ネオインダストリアルの表層を切り裂いて進むアートのギター」と表現しています。
清水俊彦の音楽評論は、シビレルなー。

ビル・フリーゼルバンドの来日公演でこのアルバムの曲を演奏した際には
アートのノイズパートは無くなるのかと思ったら
何と、バカテク・チェリストのハンク・ロバーツがチェロのアルコ(弓)で再現していました。
(ハンク・ロバーツも鼻血が噴き出しそうな程、素晴らしいチェリストなので
 後日紹介したいと思います。) 

■ 凍り付く様なボサノバ ■



アンビシャス・ラバース解散後のアートは、
様々なセッションや、プロデュースで大忙しでしたが、
ソロアルバムも順調に発売して行きます。

この時代のピーター・シュラーに変わる片腕が坂本龍一です。
アンビシャス時代の派手なラテンファンクとは一転して、
ボサノバを現代風に演奏するスタイルに変化してゆきます。

ブラジリアンポップスの持つ「暑さ」を徹底的に排除して
ひたすら「温度感の低い」音楽を目指している様に思われます。

坂本隆一のピアノが本当に素晴らしく、
さらにベースのメルビン・ギブスの沈み込む様なトーンに身を委ねると、
深海に沈みこんでゆくような酩酊感に襲われます。



これはアンビシャス・ラバース解散直前のアートとピーター。
アートのギターの奏法が変化している事が分かります。
最早ギターの形をした別の楽器として扱われています。



これは上の映像の続きです。
坂本龍一が加わっていますが、
「教授」のこんなアバンギャルドな演奏は珍しいのでは。
こんな演奏でも美しいのは、坂本龍一ならでは。

以前FM放送の番組中、坂本龍一はこう語ったそうです。
「アート・リンゼイは譜面も読めないし、コードも知らない。」
でも、アート・リンゼイは優れたミュージシャンである事は映像からも確認出来ます。

そう言えばこの二人、「相対性理論」のリミックスアルバムで、
素晴らしいトラックを提供していました。
(私的には眉美は、スパンク・ハッピー(菊池成吼)でしたが。)


■ アートの原点「DNA] ■

[[youtube:-Q2-N1BmGNs]]

最近のアートのアルバムは、ちょっとエモーションに欠けます。
その一方でアートはNYのアンダーグランドシーンで
ノイジーな演奏も継続している様です。

最後にアートリンゼイの最初のバンド「DNA」を紹介します。

ロキシー・ミュージックに在籍したブライアン・イーノは
バンドを抜けた後、「新しい音楽」を発掘するプロデューサーとして名を馳せます。
ブライアン・イーノがNYアンダーグランドシーンの若手ミュージシャンを
カップリングして世に送り出したのが、伝説的なアルバム「NO NewYork」でした。

その参加アーティストの一組がアートのバンド「DNA」でした。
「DNA」でアートは12弦ギターに11弦だけ張って、
ノン・チューニングで掻き鳴らしています。
ドラムのイクエ・モリ(日本人)は、バンド結成までドラムの経験がありませんでした。

このアルバムで世界はアート・リンゼイの存在を知ったのです。

今の落ち着いてしまったアートを聞くにつけ、
この時代の演奏が懐かしく思われます。

2012年は「おめでとう」で始まらないかもしれない・・・ギリシャ問題

2011-12-28 10:38:00 | 時事/金融危機
 

■ ギリシャ債務再編交渉(期限:12月31日午後11:59分) ■

現在進められているギシシャの債務再編交渉は
民間の金融機関が75%のヘアカットに応じるかどうかで揉めています。

「75%のヘアカットに応じなければ、ギリシャはデフォルトしちゃうよ。」
って、民間の金融機関が脅されている訳です。

これに同意出来なければ、ギリシャのデフォルトが確定的になり、
デフォルトイベントであるCDSの支払い義務が、
金融機関の経営を一気に圧迫します。

考えられるシナリオは・・・

1) 民間金融機関が75%の債務カットに合意
2) 各国政府がその損失を全額、或いは一部補てんする
3) ギリシャはデフォルトに近い状態だが、何故かデフォルトしない
   (コントロールされたデフォルト)

別のシナリオは

1) 民間金融機関が75%債務カットを拒否して交渉決裂
2) デフォルトイベントが発生して金融危機で2012年が幕開けする
3) 市場が休場しているので、誰も対応が出来ない
4) 翌日、銀行のシャッターが開くのか、各市場が開かれるのか分からない。

色々と「開かない」ので、「あけましておめでとう」は自粛・・・。

■ さらに酷い事が起こるとすれば、それは中東 ■

中東情勢が世界の混乱に拍車を掛けるかもしれません。
イランは「さらなる経済制裁にはホルムズ海峡封鎖で対抗する」と発表し、
訓練の名目で、配備も済ませています。

金融危機と中東有事が同時に発生したら、
それこそ世界は何が何だか分からない状態に突入します。

■ 最悪の事態を想定しながら、うららかな新年を願う年末 ■

今年の年末は何かと落ち着かない年の瀬です。
すこし「現金」を手元に置いておいた方が良いのかなとも思いますが
そうすると、絶対に使ってしまいそうです。

日本の経済には貢献出来ますが・・・。

何事も無いのが一番ですが、
いざという時の為の準備はしておいた方が良さそうです。

・・・こんな事を書くと、ギリシャに風評の流布で訴えられちゃうかな・・・。

<再録シリーズ>本物のセンス・オブ・ワンダー・・・電脳コイル

2011-12-28 08:31:00 | アニメ
 

イランを廻る情勢の緊張が高まっています。
前回のイスラエルとヒズボラとの戦争も
暮れも押し迫った時期に勃発しています。

開戦のタイミングとしては、市場が閉じている時期の方が、
開戦による過剰な反応を抑える事が出来て好ましのでしょう。
ロシア軍もアメリカとイスラエルを牽制する為に作戦を開始しています。
年末、年始は中東情勢には要注意かもしれません。


さて、色々と落ち着かなかった2011年も後残す所僅かです。
今日あたりは仕事収めの方も多いのではないでしょうか。

暮れから正月に掛けて、結構時間もありますし、
お暇でしたら、こんなアニメをTSUTAYAで借りて来るのは如何でしょうか。

NHKの教育テレビで2007年に放映されていた
「電脳コイル」という作品です。
「現実世界にマッピングされた電脳世界」という発想が秀逸です。

子供時代の気持ちに戻って、電脳空間を探索するのは楽しいかも知れません。

<2011.01.15 「人力でGO」より、再掲載>





■ センス・オブ・ワンダー ■

映画やアニメを見る楽しみや、
小説を読む楽しみは、
「センス・オブ・ワンダー」を
体験する楽しみです。

センス・オブ・ワンダーは、
「不思議な感覚」と訳せますが、
SFの用語として広く知られています。

私は未見ですが、キャメロン監督の「アバター」を観て
人々が感じる感覚が「センス・オブ・ワンダー」です。

キャメロン監督は「ターミネーター2」で
CGを導入して私達を驚かせましたが、
私としてはデビュー作の「アビス」で、
深海の高圧に耐え切れずに
潜水艇のライトが内破する瞬間の方が、
センス・オブ・ワンダーを感じるひとコマでした。

「センス・オブ・ワンダー」の語源は
意外にも「沈黙の春」で有名な
レイチェル・カーソンの小説の題名です。
レイチェルの遺作となるこの作品は、
彼女が夏の数ヶ月を過ごす
メイン州の海岸や森の神秘を
静かに綴った作品です。
「センス・オブ・ワンダー」とは
「小さな自然の神秘」を指す題名です。

これ見よがしのCGやアニメの映像より、
科学的に検証されたひとコマや、
日常が垣間見せる、思わぬ情景の方が、
レイチェル・カーソンの表現した
センス・オブ・ワンダーの語源に近い感覚でしょう。

■ 日常と重なり合うバーチャル ■

バーチャル・ワールドを描いた作品と言えば、
ウィリアム・ギブソンの小説「ニュー・ロマンサー」や、
映画「マトリクス」が思い浮かびます。

昨年夏、ヒットを記録したアニメ映画の
「サマー・ウォーズ」もこの譜系の作品です。

「バーチャル・リアリティー=非日常的な空間」
という認識が私達の間に確立しています。

ところが、NHKで2007年に放映された「電脳コイル」は
バーチャル空間が「日常にマッピング」されている事で、
新しい地平を切り開くと同時に、
近年稀に見る「センス・オブ・ワンダー」を体験させてくれます。

■ 電脳メガネを掛けた子供達 ■

2026年の未来、
メガマス社の開発した電脳メガネを掛けると、
現実空間にマッピングされた電脳空間が認識出来ます。

一見、何の変哲も無い日常の風景ですが、
例えばペットの犬はバーチャルな電脳ペットで
メガネを外すと見えなくなったりします。

電脳メガネには色々な機能があって、
携帯電話になったり、
ヘッドアップディスプレイとしても機能します。

子供達の遊びも、殆ど眼鏡を使った遊びで、
ケンカも電脳対決です。

■ バーチャル空間の中のホラー ■

実際の都市にマッピングされている電脳空間は
アップデートにタイムラグがあります。
アップデートが遅れた空間は
「古い空間」と呼ばれ、
現実とバーチャル空間に差異が生じています。

この古い空間を通して、
「ミチコさん」が住む異世界に
子供の意識あ連れ去られるという
「都市伝説」が広がっています。

この「トイレの花子」さんならぬ
「ミチコ」さんに、
子供達は言い知れぬ恐怖心を抱いています。

■ 他愛の無い子供の世界にひそむ異世界 ■

物語は電脳以外はいたって日常的な子供の世界を
転校生のヤサコ(優子)を中心に描いて行きます。

26話の前半は、子供の友情や、
対立やケンカを、
バーチャルなギミックを上手に使いながら
丁寧に描いて行きます。

ところが、中盤を過ぎると、
「ミチコ」さんと「あっちの世界」が
子供達に暗い影を投げかけてきます。

意識を「あっちの世界」に置き忘れてきた兄を救うべく、
異世界の扉を強引に開こうとする少女、イサコ(勇子)。
それを利用する大人や会社。

主人公ヤサコの過去の夢と、イサコの過去。
企業のエゴと、人のエゴが複雑に絡み合いながら、
物語は確信に迫って行きます。

「ミチコ」さんとは何か?
交通事故で死んだ子供の死因は何か?
4423と名乗る夢の中の少年は誰か?

■ SFとしての完成度の高さ ■

電脳空間と電脳眼鏡をギミックにした、
子供達の群像劇と思われた物語は、
子供の視点を損なう事無く、
SF的にどんどん深化してゆきます。

しかし、扱われる事象は、
客観的に見れば「学校に怪談」の域を出る事はありません。
アニメにありがちな世界の破滅も起こりません。

事件は少女達の極私的過去と、
データのバグを消去しようとする
大人達の些細な努力という
ミニマムな要素で展開して行きます。

しかし、むしろこの抑制の効いた設定が、
大風呂敷を広げて、たためなくなる事の多いSFにあって、
とても高い完成度と、物語としての魅力を生み出しています。

「深海のイール」や「パラサイト・イブ」の様に、
個人の物語を放棄するのでは無く、
イサコとヤサコの物語を丁寧に掬い上げながら、
物語は終焉を迎えます。

■ 賞を総なめした、隠れた名作 ■

私の文章ではこの作品の素晴らしさを表現出来ませんが、
この作品が2007年の賞を総なめした事からも、
多くの人にお勧めしたいアニメです。

2007年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞[1]、
第7回東京アニメアワードTVアニメ部門優秀賞、
第39回星雲賞メディア部門、
第29回日本SF大賞受賞作品。
また同作の原作・脚本・監督により、
磯光雄が第13回アニメーション神戸個人賞を受賞した。

■ この素晴らしいアニメが話題にならない悲しさ ■

「涼宮ハルヒの憂鬱」がヒットする理由は良く分かります。
そして「電脳コイル」が一部のファンにしか浸透しない理由も良く分かります。

「キャラに萌えられる」かどうかです。

「涼宮ハルヒの憂鬱」が「萌えキャラ」を
戦略的に利用して成功を収めたのと対象的に、
「電脳コイル」は「萌えキャラ」を排して
一般受け出来なかったと言えます。

普通の街、普通の子供達、
普遍的な子供の願望に隠れた
「センス・オブ・ワンダー」。

今どきの子供は、この素晴らしい世界に感応する力を
失っているのでしょう。

「電脳コイル」が話題にならない日本の将来を憂います。



金融兵器CDS・・・誰に対する兵器なんだろう?

2011-12-27 01:53:00 | 時事/金融危機
 

■ 金融核兵器 CDS ■

CDSは債権の購入者が、
その債権のデフォルトリスクを回避する為に購入する
一種の保険商品です。

一定の利息を支払えば、購入した債券がデフォルトしても
CDSの発行元が損失を補てんする仕組みです。

一般的はに、債権購入者がリスクを低減する為に購入しますが、
金融商品に加工されて、債権購入者以外がCDSの購入者となる場合もあります。

一見、投資家のリスクを低減する様に見えるCDSですが
ウォーレン・バフェットはCDSを称して
「金融大量破壊兵器」「金融核兵器」と言っています。

何故CDSが「核兵器級」の脅威なのか・・・。
ギリシャを例に取った記事がありましたので紹介します。

<日刊ゲンダイ  2011.10.15より引用>

まずは欧州の経済金融危機だ。基金の拡充や銀行への資本注入論議が進み、市場には安堵感が広がっている。十分な資本を準備できていれば、ギリシャが倒れ ても、金融機関は持ちこたえられる公算が大。危機の連鎖は食い止められるというわけだ。まずは資本の増強が必要という発想である。

しかし、それだけで万全の備えとなるわけではない。東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏が言う。
「ギ リシャ国債の発行残高は3500億ドル(約27兆円)ほどです。しかし、これに対するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、その4倍に なるとみられている。多くの金融機関が、ギリシャ国債の購入に際し、総額100兆円超の保険を掛けてリスクヘッジしているわけです。つまり、ギリ シャの債務不履行で問題となるのは、表に出ている数字の4倍ということになる。その支払いを迫られる金融機関は甚大な打撃を受けます。リーマン・ショック 時のAIGは救済されましたが、今回はスケールが違う。デフォルトしてもCDSが実行されない可能性も高いのです。

こうなると危機は世界中に広がります。CDSによるヘッジが機能しないとなれば、株や債券といったリスク商品はドッと売られる。日本の国債や株も例外ではありません。欧州だけの問題ではなくなるのです」
ギリシャ国債の元本は最大5割カットされる見通しで、事実上のデフォルトを迎える。しかし、危機は一国の破綻だけで収束しない。大量の日本国債を保有 する日本の金融機関も損失を抱え、アップアップだ。世界はコントロール不能の経済危機=恐慌に突入することになる。

<引用終わり>


■ アメリカに付きつけられる銃口 ■

問題はこのCDSを誰が販売し、受け取り手が誰かという事です。

ユーロ危機はギリシャのデフォルト危機をきっかけとしています。
世間ではこれはユーロ圏の弱体化の様に報道します。

ヨーロッパの国債にCDSを発行しているのはアメリカの銀行です。
JPモルガン、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、リーマンブラザーズ
と言った、アメリカの投資銀行の名前が挙がっています。

ギリシャ国債は民間は50%ヘアカットされ
本来ならばデフォルト認定です。
ところが、不思議な事に損失分を国が肩代わりする形で、
デフォルト・イベントは発生していません。

もし、ギリシャがデフォルトと認定されれば、
アメリカの投資銀行は、CDSの支払い義務が発生します。
受け取り手は、ギリシャ国債を購入したヨーロッパの銀行です。

ゲンダイの記事ではありませんが、
ギリシャ一国だけでも100兆円の支払いが発生します。
これは、とても民間銀行の手に負える額ではありません。

ですから、ギシリャのデフォルトは、
アメリカの銀行の破綻を引き起こします。
これは、ヨーロッパからアメリカに突き付けられた銃口です。

■ バーセルⅢを受け入れるFRBと、日銀特別融資を視野に入れる野村 ■

FRBはバーセルⅢをアメリカ国内の銀行に適用する準備をしています。
バーセルⅢは、自己資本の質を強化する事で、
金融危機発生時に備えて銀行の基礎体力を高める処置です。

しかし金融株の下落が著しい現状、
増資で自己資本を補強すると、株価下落という副作用が発生します。
「みずほ銀行」が良い例です。

バーセルⅢが適用されたら、アメリカの銀行は資産を売却したり
投資を引き揚げて、自己資本を積み上げるしか方法がありません。

これは今話題の野村證券とて同じです。
野村證券はリーマンブラザーズのヨーロッパ部門を買い取りましたが、
彼らはギリシャなどの国債のCDSを発行しています。

ヨーロッパは野村證券が経営破綻した場合に
日銀か国家が野村證券を救済する事を求めています。
これは、ヨーロッパの国債で、デフォルト・イベントが発生した場合、
野村證券は旧リーマンブラザーズが発行したCDSを、
日本国民の税金を投入しても、きっちり支払えという要求です。

■ 勝者は存在しない ■

ここまでの説明では、勝者はヨーロッパ、敗者はアメリカに見えます。

しかし、アメリカの銀行や財政は巨大なCDSの支払いに耐えられません。
これは、アメリカが世界に突き付ける銃口です。

要は、ヨーロッパで国債が破綻してCDSの支払い義務が生じたら、
アメリカ発の金融危機が世界を襲うぞと、脅しているのです。
結局、勝者は存在しません。

本日、昨日の課題に対する、私なりのレポートでした。


■ ブラック・クリスマスは回避された ■

今回、世界が「ブラック・クリスマス」を回避出来たのは
EUの首脳達が、格付会社に対して、
ヨーロッパの格下げを、2012年の1月まで延期する様に頼みこんだ結果
という記事がネットに出ていまいた。

来年1月には再びユーロ危機がクローズアップされて来ます。

野村證券は今回の騒動に対して、
広報部長が告訴を匂わせる脅しをTwitterに発表するという
前代未聞の対策をしています。

本来ならネットのガセネタなど無視が正しい対策ですが、
何を慌てているのかと、むしろ憶測を呼ぶ結果となっています。

ガセネタなどと言っていられるうちは平和な証拠です。
来年からは、ガセネタにも世間は敏感に反応せざるを得なくなるでしょう。