■ 「尖閣問題」も「地検特捜部問題」に目を奪われるな!! ■
昨日、一昨日と私もブログで「尖閣問題」と「地検特捜部問題」を取り上げました。今一番世間を騒がせている事柄なので、自分なりに整理して置きたかったからです。
しかし、現在我々が直面している最大の問題は、何と言っても「金融危機の第2波」です。
小沢氏を巡る政治の混迷や、尖閣、地検問題など新聞を賑わす記事は、世界的な社会体制の変革の一端に過ぎず、そこに目を奪われていると大局を見失います。むしろこれらの事件は事物の核心を隠す為の煙幕と捉えるべきです。
■ ルービニ教授の警告 ■
<ロイターから引用>
著名エコノミストのヌリエル・ルービニ米ニューヨーク大学(スターン・ビジネス・スクール)教授は27日、先進国の景気回復ペースは減速するとの見方をあらためて示した。
同氏は当地での講演で、新興国市場では一段と持続可能なペースでの景気回復が予想されるものの、資産価格の過熱リスクがあると指摘。「大規模な流動性が資産に流れ込み、ドルや円を資金とするキャリー取引という形で、かなりの流動性が先進国経済から流出するだろう」と述べた。
「新興国市場は通貨を緩やかに上昇させ、ホットマネーに対する資本規制や過度の信用の伸び抑制に向けた金融システムの監督に着手すべき」とした。
ルービニ氏は、今年下期の米経済成長の伸びは約1%に鈍化すると予想。「私の予想が正しければ、マクロ面におけるマイナスのサプライズによって、一段の株価の調整が引き起こされ、ボラティリティが高まり、リスク回避の動きが強まる」と述べた。
同様に、日本についても悲観的な見方を示し、日本経済の状況は「沈滞」と指摘。「日本経済は沈滞する見通しで、非常に厳しい状況となっている」とし、高齢化や財政赤字、デフレの慢性化を理由に挙げた。
<引用終わり>
比較的悲観的予測をするルービニ教授ですが、サブプライム危機を予見し、その後の経済予測も外してはいません。9月以降、世界経済は確実に悪化の傾向を示しています。教授の予測する様にアメリカの下期の経済成長が1%ならば、その殆どは財政出動によるものです。
アメリカ経済は今後、実質マイナス成長の突入する可能性があります。
日本の貿易黒字が15ヶ月ぶりに減少したという記事もありましたが、これも円高の影響では無く、アメリカの消費の落ち込みの影響が大きいでしょう。
■ アメリカが抱える危機 ■
リーマンショック直後の経済・金融の混乱期に比べれば、現在は安定している様に見えます。しかし、実際にはアメリカでは「負の清算」が全く進んでいません。
① 住宅市場が回復しない
中古住宅の在庫が一年分を越える為、銀行はローン滞納者の住宅の差し押さえを止め、
住宅が売れたらその代金でローンを返済する方法を取っている。
表面に現れない中古住宅在庫は1年分どころでは無い。
② 雇用が回復しない
財政出動による流動性は金融市場や株式市場に滞留し、実体経済を潤していない。
雇用は日々失われており、一度失われた雇用は回復していない。
失業率が10%を越えないのは、求職を諦めた人達がカウントされない為。
実質的な失業率は20%に迫っている。
③ 消費が回復しない
雇用の喪失と、住宅価値の減少でアメリカ人の借金経済は破綻している
消費が回復しないので、実体経済も成長せず、日本型デフレに陥りつつある。
④ シャドーバンクシステムが復活し危機が高まる
一時は崩壊したシャドーバンクシステムが潤沢な流動性の供給で復活している。
社債市場(ジャンク債市場)も復活し始めている。
自体経済の裏打ちの無いシャドーバンクシステムはサブプライム同様に脆弱。
⑤ 住宅債権(MBS)は不良債権化している ファニーメイやフレディーマックを実質国有化してしている
両者の抱える住宅債権は、住宅市場が壊滅している現在、事実上不良債権の山。
100兆円に上る不良債権が国民負担に変わろうとしている。
最近バーナンキ議長も、ガイトナー財務大臣も「米経済は低調ながらも底堅い」と言っていますが、先日のボルガーの講演や、上記のルービニ教授の発言の方が実態に即しており、彼らは金融システムの崩壊が不可避だと考えているようです。
■ それでもアメリカに投資し続ける日本の民間金融機関 ■
少し古いデータですが、日本の民間の資金の国際収支のデータです。
これによれば7月のひと月で4兆6千億円もの日本人の資産が海外に投資されています。ユーロ危機の時期ですので、殆どがドル資産となっていると思われます。金融システムは未だ不安定ですから、臆病な日本の金融機関がハイリスクな投資をするとは考えられません。これらの資産の多くは、米国債で運用されていると考えても差し支え無いでしょう。(当然、ブラジルやオーストラリア、あるいはアジアの新興国投資もあるでしょうが、比率が大きくは無いと思います)
① 日本国内は超低金利
② 少しでも高い金利を求めて、資金が海外に流出する
③ 安定資産として米国債が買われる
④ 米国債の金利が下がる
⑤ 円高が発生する
アメリカのヘッジファンドは7月頃はアメリカの短期国債も売り越していました。同様に中国も米国債を買い控えていました。それでも米国債の金利が低下した背景には、日本の民間金融機関が米国債を買い増しているという事実があります。
日本は自分達でアメリカに資金流出させ、その結果円高を招き、為替差損という付けを国民に払わせようとしているのです。
さらには為替介入によって、一日で2兆円もの財政赤字を膨らめながらも、その介入効果は短期間で消え去ろうとしています。9月24日の円相場を見れば、日銀が小規模な介入を繰り返している事も伺えます。(菅首相は否定しましたが・・・。)
■ 政府と民間でアメリカを支えるという愚行 ■
「日本国民が必死にアメリカを支えれば、2年後、5年後にアメリカは復活する。」この様な展望があるならば、我々の資産が一時期アメリカを支える事に依存はありません。
しかし、常識的に考えて、アメリカとドルを支える手立ては見つかりません。次の危機ならばいくらでも思いつきます。
① どこかの国がデフォルトしてソブリンショックが世界を見舞う
② アメリカの住宅市場が崩壊して、MBSショックが発生する
③ アメリカの州や郡が次々に財政破綻する
③ 中東でイスラエル右派が暴走する
④ 日中関係が拗れて日本経済が失速(崩壊)し、日本国債が暴落する
④ クリスマスセールで買い物が出来ないアメリカ人が暴動を起こす
⑤ 中間選挙でボロ負けしたオバマがヤケを起こしてデフォルトを宣言する
まあ、半分冗談みたいな項目もありますが、人心が一番あてになりません。何せ、多くの国民が銃で武装している国ですから・・・。