人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

何気に「スゴイこと?」になっている『サムライフラメンコ』

2013-11-30 03:33:00 | アニメ
 



■ 今期、一番の楽しめるアニメに成長していた ■

今期アニメは良作揃い。その中でも「ネタもの」としてキラリと輝きを放つ『サムライフラメンコ』が、なんだかトンデモ無い事になってきています。

実ヒーロー物に見る日米の違い・・・『サムライフラメンコ』VS『キックアス』

ヒーローをこよなく愛し、とうとう現実世界でヒーローの真似事を始めたイケメン・モデルの羽佐間 正義(はざま まさよし)。最初のうちは、タバコのポイ捨てや夜中のゴミ出しを注意する程度のしょぼいヒーローでした。しかし、本人の努力と協力者の出現で、どうにか暴力団相手でも正義を遂行出来る様になりました。文房具メーカーの技術者が開発するのは、「怪しげな強化文房具」。文房具ならば「銃刀法」に違反しないという配慮です。可愛らしいフラメンコガール達も加わって、日常ヒーローアニメとしては、それなりに面白い作品になっていました・・・7話の途中までは・・・。

この作品の笑いの構造は、「非日常である「ヒーロー物」を、現実世界で実現しようとすると、こんなにトホホな感じになっちゃう」というギャップの面白の面白さ。若干のリアリティーと適度な人情をスパイスにして、そつなくまとめる手際は流石は倉田脚本です。

「きっとこうなるだろう」という視聴者予想を毎回微妙に外しながら、Cパートで爆笑させられる事の連続。

■ アレ、シリアス展開になったぞ ■

でも、この作品、2クールもあるのに、このまま日常ヒーローが続くの?って少し心配もしていました。ネタにも限りがあります。

ところが、7話でガラリとシリアスな展開に。

すっかりご当地ヒーローとして人気が定着したサムライフラメンコ。しかし正義(まさよし)は祖父の遺品から、自分の両親が海外で事件に巻き込まれ殺された事を知ります。祖父が彼の為に残したサムライフラメンコというヒーローは、復讐の為のキャラクターだった事を彼は知る事となります。

彼は悩みます。「幼い頃に死に別れた両親の仇をうつのはヒーローものの定番です。でも、僕には怒りが湧いて来ないんです。なんか、面倒くさいというか・・・。だって両親の顔すらも知らないんですよ。何か他人事というか・・・こんなのヒーロー失格ですよね・・・」

これまでのお笑い路線から一転してシリアスで重たいムードが漂います。

そんな彼を救うのは、何かと正義の面倒を見る警官の後藤の一言。「俺はお前の事、最初は変態だと思っていた。それは今でも変わらない。ただ、お前のおかげで街が少しずつ変わって来たのを見て、今ではお前は、イイ変態なんじゃないかと思う様になった」

この作品の最大の魅力は、実は後藤の言動です。唯一現実的な視点を失わない後藤が、ヒーロー趣味の困った人達に手を焼きながらも、彼らを後藤なりに理解しようとする姿に視聴者はホロりとします。

良い年をしてアニメに夢中になっている私の様なオタクへの救いの言葉の様にも聞こえるからかも知れません。アニメなんて非現実的なものと、どう折り合いを付けるか悩む私達に対する救いが後藤の存在だったのです。

ここまでの展開は「日常に挿入された非日常」でした。

「日常のリアリティー」の中に、「正義ごっこ」という「ありそうであり得ない非日常」を挿入する事によって生まれるシチュエーションを、第三者の視点でヌルク眺めて楽しむという行為は、ある意味、アニメを見るという行為のメタファーでもあり、をれを意図的に視聴者に提示するこの作品は、なかなか食わせ物でもありました。

■ いきなりの展開に視聴者も大混乱 ■

ところが7話の後半で、視聴者はショックを受ける事になります。

ある程度の事ではビックリしないアニメファンの多くが、「ビックリした」とか「ウソだろう!?」って2chに描きこむ展開とは・・・・?

何と、本当の怪人が出現してしまったのです!!

そこそこの人気者になったサムライフラメンコに警察もあやかろうとします。彼を一日署長にして、麻薬売買の逮捕現場に立ち会わせ、警察の人気向上を図ろうと、後藤の上司が計画したのです。・・・これまた「ベタな展開」とニヤニヤしながら落ちを待つ視聴者は、本物の怪人「ギロチンゴリラ」の出現に唖然。

警官の首は飛ぶし、窓から地面に死体が放り出されるし・・・これまでの、トホホ・ホノボノ展開からは信じられないグロテスクな描写に、これはきっと「夢落ち」に違いないと解釈が飛び交いました。

丁寧に作り上げてきた物語世界を根本からひっくり返す展開に、さすがにファンからも疑問の声が上がります。「これだけは、やっちゃいけなかった」というのが正直な感想です。

■ 日常に呑みこまれた非日常 ■

「きっと夢落ちか、警察のキャンペーンで特撮映像を撮っているのさ。」そんな展開をファンは予想していました。

しかし、8話の冒頭、怪人とサムライフラメンコの戦闘が始まり???状態に。さらには、後藤が拳銃を発射してサムライフラメンコを援護しています。戦闘員達を、フラメンコガール達が痛めつけています・・・。

殉職した警官達の葬儀のシーンも描かれ、どうやら「悪の秘密結社」も「怪人」も現実?の存在らしい事を視聴者は認めざるを得なくなります。

しかし、現れる怪人達が、これ又、ヒーロー物のお約束の如く「トホホ」なキャラクター。「宙吊りトンビ」だとか、鍋のパンツを履いたサイだとか、ヤンキー暴走族のコブラだとか、極めつけは三角木馬の怪人まで登場する始末。

ところが、政府も市民も警察も後藤も、このあり得ない怪人達を現実として受け止めています。物語世界の中では、実際に警官が殉職し、市民にも脅威が及んでいるのですから、政府も閣議で対応を検討します、警察も怪人撃退にその名誉を掛けます。

一方、サムライフラメンコとフラメンコガール達は本物の怪人の出現に意気揚揚。それこそが、彼らが望んでいた「あり得ない現実」だったからです。週替わり(笑)で登場する怪人に、特訓の末に勝利し、それが2か月も続いている事が、後藤と正義の会話から明らかになります。

もう視聴者はビックリするどころか呆れてしまいます。あれ程丁寧に日常を積み重ねる事で、「あり得ない現実」であるサムライフラメンコを見事に日常に親和させていたのに、ここでその構造をブチ壊す意味が分かりません。

しかし、よくよく見ると非常に興味深い。

7話までは「日常に非日常が浸透」していました。
ところが、8話の展開は「非日常が日常に飲み込まれ」ています。


■ ヒーロー物を成り立たせる為の条件 ■

非日常(非現実)であるヒーロー物を成立させる方法は二つあります。

1) ヒーローが居る世界そのものを当たり前として描く
2) 怪人やヒーローの存在を成り立たせる科学的ギミックを用意する

1)の例は「怪傑ライオン丸」や「黄金バット」の様に、戦前の紙芝居から発生した初期のヒーローに該当します。ヒーローはどこからとも無く現れる存在で、その正体は重要ではありません。悪が存在し、それを制裁するヒーローが存在する事が当然として描かれています。作品の世界の人達は、ヒーローの存在を始めから全肯定しています。この世界感は「戦隊物」に継承されて行きます。どこからとも現れる敵と、超自然の力によって生まれるヒーロ。(たまに科学的に生み出されますが・・)

2)の代表例は「仮面ライダー」でしょう。先ずヒーローを科学的に存在させる為に「改造人間」という科学のギミックを用意します。悪の秘密結社のショッカーの力も、優れた科学力によって成立します。

ところが、時代と共にこれらの方法論は「子供騙し」として陳腐化し、ヒーロー物は衰退期に入ります。

時代が平成になった頃、ウルトラマンと仮面ライダーが復活します。

この二作に共通するのは、ヒーローや敵を「不可知」の存在として描いた事です。単純な宇宙人や改造人間とする事を避け、ヒーローに神話的な背景を与えたのです。こににより、ヒーローはある種の「神格」を獲得します。その自出を問われる事無く、悪に対峙する善として始めから肯定された存在なのです。これは、初期のヒーローに近い設定です。

一方で、ヒーローをリアルに見せる工夫もなされます。ヒーローが登場した時、治安部隊はヒーローを「敵性」と認識し、排除対象とします。ヒーロー達が敵を撃退し続け「実績」を出した時点で、初めてヒーローとして認められていきます。現代のヒーロー達は、先ずヒーローとしてのアイデンティティーの確立に努力が求められるのです。彼ら自身、ある日突然、人間からヒーローになるので、自我が崩壊しそうな状況に置かれます。

この様な「リアルヒーロー」ものは日本だけでなく、「バットマン」の近作などでも顕著な傾向です。ヒーローを見て育った世代が表現者となる時、彼らは大人になる過程で喪失したヒーローを、大人の視点で再び確立する必要があるのでしょう。「子供だまし」と言われないヒーローとは何か・・・・現在のヒーローに与えられた使命だとも言えます。

世界設定もヒーローの戦う動機も、以前の作品に比べて圧倒的にリアルになった事で、非日常的なヒーロ達が日常性(現実性)を獲得したのが現在であるとも言えます。

■ 極めて逆説的な手法で日常に飲み込まれたサムライフラメンコの非日常 ■

一方、サムライフラメンコの怪人達は、極めて伝統的な手法で日常に乱入して来ます。

それは「突然始まる殺戮」です。
いきなり、怪人が現れ一般市民を殺戮すれば、「悪の存在感」は一瞬にして確立されます。ヒーロー物でのヒーローの成立条件は「悪を倒す事」ですが、その為には悪は絶対的脅威である必要があります。

ところが、『サムライフラメンコ』の悪は伝統的に絶対的脅威ではあるのですが、それに対抗するサムライフラメンコがトホホな御当地ヒーローなので、悪もあっという間にトホホな存在に格下げされてしまします。これは言う成れば、「非日常である悪役が、あっという間に日常に飲み込まれた」状態です。

作中でも、怪人への対応を検討する閣議の緊張感は、日が経つにつれて失われて行きます。変な怪人が出現し、何故かご当地ヒーローに倒される事が日常化してしまったのです。

私達視聴者が、『サムライフラメンコ』に当惑するのは、「存在しないはずの悪の組織」が登場し、それがあり得ない事にあっさりと作品世界の日常に飲み込まれてしまったからでは無いでしょうか?

作品の序盤は、徹底的に「非現実としてのヒーローや悪の存在」を否定していながら、いきなり「非現実的な悪」が登場し、これにヒーロー達が「現実的」に対応しています。この違和感は多分、かなり意図的なものです。

「非現実」と「現実」の対立は、ヒーロー物に限らず、フィクションに付きまとう命題ですが、『サムライフラメンコ』ははたして、これをどう料理して見せるのか?

「リアルヒーロー」ものや「ヒーローもののパロディー」も出尽くした感じの現代において、サムライフラメンコの提示する悪とヒーロ、日常と非日常の関係は、極めて重層的でかつ複雑です。

今季一番の「ネタアニメ」は、もしかすると今季一番の問題作になるかも知れません。

世界の国債の長期金利が上がってきた・・・リスクオン?

2013-11-27 08:31:00 | 時事/金融危機
 




■ 長期金利が上昇してきた ■

債務残高のシーリング問題の際、一旦は上昇した米長期国債金利ですが、危機が深刻化する中で何故か逆に金利がスーーと低下し始めました。

その後、危機が回避されたので米国債金利が低下していましたが、再び上昇に転じています。一方、短期国債金利は低下しています。

私のいい加減な解釈では、債務上限問題が佳境を迎えた時、短期国債金利は正直に米債券のリスクに反応していた様ですが、長期国債は何だか危機によってテーパリングが先延ばしされるであろう事に強く反応していた様にも見えました・・・。

長期金利はテーパリングの予測に連動しているかもしれません。

1)金融緩和の長期化が将来的なインフレをもたらす
2)テーパリングの開始によって将来的に金利が正常化する

1)は悲観的観測、2)は楽観的観測です。

市場は危機が明確な時以外は「楽観的」なので、現在の金利上昇はテーパリングの開始予測によって発生していると私は考えます。

バーナンキの任期切れを前に、もしかすると「テーパリングへのロードマップ」が具体的に発表されるかも知れないという思惑が、長期国債の売りを呼んでいるのかも知れません。

将来的に金利が正常化した場合、低金利の長期債は含み損を抱える恐れがあるので、今のうちに売っておこうという意識が働きます。実際には日々、大量の国債が売買されるので、そんなに長期的な展望では無く、「その様な理由があるから今が売り時」と判断しているのかも知れません。

当然、状況が変われば、買い戻されます。

(あるいは、デフォルトは有り得ないとして逆張りしていた投資家が多かっただけかも知れませんが・・・・。)

■ 株式市場に流れ込む資金 ■

NYダウの上昇など、株式市場が実体経済と乖離した動きを見せていますが、債権市場から一時的に流出した資金が流れ込んでいるのでしょう。

「リスクオフ」というよりは、テーパリングへの警戒感から国債が売られているだけの気がします。これで、12月にFRBが何の発表もしなければ再び長期金利は低下するかも知れません。

■ 常識と反対の国債金利 ■

日本の長期国債の金利が米国債との連動を強めています。
異次元緩和以来の混乱が、ひとまず収まってきて、売買の量が回復してきているのでしょう。

面白いのは、金融緩和の長期化が予測されると、本来、将来的インフレを予測して長期国際の金利が上昇するハズなのに、どうも日米とも逆の動きをしている様に思えます。

これは、「市場が金融緩和の効果を疑問視している」からでは無いでしょうか。特に日本においては、日銀の異次元緩和でも、期待インフレ率は一時的な上昇の後、直ぐに下がっています。(金利の低下)

先日記事にした、「先進国の金融雄緩和はむしろデフレを進行させるのでは?」という妄想を、もしかすると市場も抱いているのかも知れません。

■ テーパリングが遠のくと、株価は調整に入る? ■

株式市場がバブル状態かと言えば、日米共にイマイチ迫力に欠けるので、未だバブル化はしていないと思われます。

一方で、テーパリングの発表が遠のくと予測されれば、長期国債を中心に買い戻され、株価は一時的に調整に入るかも知れません。

債権市場と株式市場、そして現物市場を資金が循環しながら、巧みにバブルが防がれているのかも知れません。

こうして、資産市場で緩やかにインフレが進行し、それが住宅市場に波及して景気が本格的に回復するというのがFRBと米国政府の狙いなのでしょう。

■ 意外に冷静な市場 ■

市場は金融緩和が続く限り、バブル化を警戒しながら資金を上手に運用している様に思われます。

金融緩和の長期化で一番心配されるのがバブルの発生と崩壊ですから、FRBは今の所、緩和余地を残しながら、テーパリングを匂わせるだけで、市場を上手くコントロールしていると言えます。

ここら辺が、FRBと市場の信頼関係(或いは共謀関係)なのでしょう。


はたして、椅子取りゲームの音楽はいつまで成り続けるのか・・・。
誰かがコードをいきなり抜いちゃった・・・なんて事は起きないでしょうが・・・。




本日は、自分でもモヤモヤしている空想を文章化してみました。


イラン問題は解決するのか・・・サウジとイスラエルの気持ち

2013-11-26 03:59:00 | 時事/金融危機
 

■ 激変する中東情勢 ■

ジュネーブにおける交渉の結果、イランへの経済制裁が一部解除されます。
イランが受け入れた条件を次の通り。

1) 5%以上のウラン濃縮の禁止
2) 西部アラクの実験用重水炉の建設中断

1)はウラン型原子爆弾の製造の事実上禁止
2)はプルトニウム型原子爆弾の事実上の禁止です。

尤も、ある程度の規模の原子炉を持たずに、5%以下のウラン濃縮だけ許されても、イランとしても困ってしまうと思います。小規模な研究用の原子炉の運用だけが可能という事かも知れません。

■ サウジアラビアとシーア派 ■

最近の中東情勢で目に付くのは、サウジアラビアの行動。
シリア問題でも、テロリストを支援していますが、今回も宿敵イスラエルと共同戦線を張って、イランの核開発を徹底的に阻止しようとしました。

サウジアラビアは「サウード王家」が支配する「絶対君主国」です。
サウード家は「ワッハーブ派」と呼ばれる厳格なイスラム教徒です。「ワッハーブ派」はイスラム2大宗派の一つの「スンニ派」に分類される事も多い様ですが、、厳格な法学派の一つ「ハンバル派」に属しています。

「ワハーブ主義」のサウジアラビアでは、厳格なイスラムの習慣が義務付けられており、女性はつい最近までは自動車の免許を取る事すら許されていませんでした。

一方、イスラム教のもう一つの勢力である「シーア派」はイスラム教徒全体の10~20%程度の少数派ですが、イランやイラク、レバノン、バーレン、イエメンなどでは多数派です。シリアのアサドはシーア派です。サウジアラビアの東部にもシーア派住民が居住しており、全人口の10%程度に当たります。

シーア派とスンニ派の違いは、シーア派が預言者ムハンマドの血統に拘るのに対して、スンニ派は預言者の血統に拘らない事が最大の対立点です。両派は比較的早い時期に分派しています。スンニ派は世俗的である一方で、戒律は厳格に守ります。一方、シーア派は婚前交渉や飲酒に比較的寛容で、ラマダンの絶食もしない人達も居ます。

■ 油田地帯にシーア派住民が多い ■

「アラブの春」の時にサウジアラビア近海の島国、バーレーンででシーア派住民による暴動が起きています。サウジアラビアが軍隊を送り込み、この暴動を鎮圧します。

同様にシリアにテロリストを送り込んでいるのも、アサド大統領がシーア派(シリア国内では少数派)で、イランのシーア派を連携しているからです。

何故、サウジ王家がこれ程までにシーア派を警戒するかと言えまば、サウジ王家は、国内のシーア派の分離独立を恐れているのです。

サウジアラビアのシーア派は、油断地帯が多い東部の湾岸地帯に住んでいます。この地域のシーア派が蜂起して独立したならば、サウジアラビアの国富を生み出す石油資源を失う事になります。

ここには国営石油会社サウジ・アラムコが本社を構える都市ダーランがあり、日量500万バレルの超巨大なガワール油田、日量80万バレルのカティフ油田とアブサファ油田や、輸出拠点となる巨大なラスタヌラ港、それにアブカイクの石油施設も存在します。

■ 敵の敵は味方 ■

中東戦争は本来、イスラエルVSアラブの戦いでした。
サウジアラビアは中東の盟主として、イスラエルと対立していました。
ところが、イランの核開発に関しては、対立するイスラエルとサウジアラビアが共同歩調を取ります。イランに限らず、シーア派が絡むと、サウジアラビアは同胞であるアラブ人に攻撃を加える事に躊躇しません。

■ 穏健派政権の発足が国際社会への復帰を促したイラン ■

イスラエルがイランを敵視するのは、原理的な傾向が強いシーア派が、イスラエルの存在を徹底的に敵視している事への裏返しです。イランは事ある毎に、イスラエルを刺激してきました。

イランはアメリカ大使館占拠事件などで、アメリカとも徹底的に敵対していたので、イスラエルとアメリカの利害も一致しており、イランは北朝鮮、リビア、シリアと共に、悪の枢軸として、国際社会から孤立していました。一方、アメリカと対立する中露はこれらの国に援助を行い、石油を獲得していました。

今回、イランが国際社会に復帰した背景には、イランに穏健的なロウハニ政権が発足した影響が大きいと言えます。今までのアフマデネジャド元大統領は、カダフィー同様にアメリカに対して敵対的でした。しかし、周辺国の反米政権が次々に瓦解する中で、イラン国民は穏健派のロウハニを大統領とする事で、生き残りを図ったとも言えます。

■ 面白く無いサウジとイスラエル ■

イランの国際社会の復帰は、サウジとイスラエルにとっては面白くありません。

イランは表面的にはオトナシクなっても、裏ではシリアのアサドや、レバノンのヒズボラ、その他のシーア派勢力を支援しています。

ヒズボラはイスラエルの喉に刺さった棘ですし、東部シーア派を抱えるサウジアラビアはイランを警戒しています。

■ 中東戦争のリスクは減ったのか、増えたのか? ■

今回のイランの核開発を巡る歴史的合意?で中東のバランスはどうなるのでしょうか?

1) イランが穏健国家に変貌して中東に緊張が弱まる
2) イランが国力を増すと同時に、北朝鮮の様に秘密裏?に核武装して中東の緊張が高まる

このいずれかなのでしょうが、イランが核武装すれば、イスラエルも容易にはイランを攻撃出来ず、中東は緊張の内にバランスします。

一方、イランが核開発を放棄しながらも、シーア派過激化に支援と続ける場合、イスラエルとサウジアラビアは、イランにお灸を据える欲望に勝てないかも知れません。

■ イランの国際社会復帰は、中東戦争のハードルを下げたのでは無いか? ■

イスラエルもサウジアラビアも常識の通用しない国ですから、イランが国際社会に復帰したとしても、イラン敵視を緩めるとも思えません。イランとて、簡単にはシリアやヒズボラの支援を止めるとも思えません。

イランが国際的に認められれば認められる程、サウジとイスラエルのイラン攻撃の動機が強まるとも言えます。

はたして、今後中東はどうなって行くのか。専門家で先が読み難い中東情勢。いつも何かが起きていて、それでいて決定的な事はなかなか起きません・・・。