人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

五十嵐大介「SARU」・・・読まずに死ねるか!

2010-10-31 05:29:00 | マンガ






■ 最近の秋葉原に行かれましたか? ■

失われた20年を生きる私達日本人は最近めっきり自信を喪失しています。

”Japan as NO.1"などと言われていた時代を、遠く懐かしく思います。現在の世界状況は”Japan”を”China”に置き換えると非常に当時と似ている気もします。GDPでも中国に抜かれ、日本はこのまま世界の二流国へと後退してしまうのでしょうか?

しかし、視点を文化に移してみると、”Japan as No.1"の状況が出現しつつあるのでは無いでしょうか?日々忙しく働くお父さん方はお気づきで無いかもしれませんが、秋葉原や中野や池袋は世界の”OTAKU”の聖地と化しています。

最近の秋葉原に行かれた方はご存知の様に、かつての電気街の面影は今は無く、ビルの外壁をアニメの巨大なキャラクターが覆い尽くすこの街は、現在世界で一番ストレンジでクールな街です。その証拠に大勢の外国の方が訪れています。

以前はいかにもオタクと言った風情の外国人が多かったのですが、最近は家族連れを良く見かけます。言葉も英語、フランス語、ロシア語から東欧系と思しきものまで様々です。

■ 世界の覇権と「文化」 ■

「文化」と言うと高尚に聞こえますが、世界の覇権は「大衆文化」に支えられています。

近代を例に取っても、ルイ王朝から市民革命、ナポレオンの台頭と大陸ヨーロッパで覇権を誇ったフランスはこの時代に文化の絶頂期を迎えます。

その後、覇権を握ったイギリスの文化は、日本人には明治維新後の「西洋文化」と認識され、ヨーロッパ文化のスタンダードと捉えられています。

一方、第二次世界大戦後は「アメリカ文化」が世界を席捲します。多くのTVドラマや映画を通して、人々はアメリカの文化に感化されました。解放後のロシアに最初に進出しロシア人を喜ばせたのはマクドナルドというアメリカの食文化でした。

■ 世界標準の「アニメ」や「マンガ」 ■

日本では「アニメ」や「マンガ」などは市民権を得たとは言え、未だに文化的には日陰者の扱いです。しかし、現在の世界の人々が興味があるのは、「お茶」でも「禅」でも無く、日本の「アニメ」や「マンガ」です。

私達が「アメリカ文化」をイメージした時に思い浮かべるのいが、「スーパーマン」や「スタートレック」やあるいはハリウッド映画の数々である事と同様です。ノーベル賞作家のソール・ベローやフォークナーを引き合いに出す人は少ないはずです。

フィリピンの刑務所の体操が「ハルヒ・ダンス」だったり、パレスチナのデモ行進の旗の中の「涼宮ハルヒ」に旗が混じって振られている映像がCNNで流れる程に、日本の文化は世界に浸透し支持されています。

現在の世界の「文化覇権国」は、間違いなく日本でしょう。

最近は韓国に押されているとは言え、日本のカメラも家電品も車も絶大なブランド力を誇っています。誰もがMAID IN JAPANを欲しがり、誰もが日本文化にあこがれる・・・これは「日本が現在の覇権国」である事の顕れではないでしょうか?

■ 「日本文化」を知らない日本人 ■

日本の「文化人」と言われる人達や、「知識人」と言われる人達の価値基準は、未だに「過去」や「西洋」にある様なので、「オタク文化」の最先端を理解出来ない人が多い様です。

手塚治や宮崎駿の名前しか知らない日本人では、現代の海外の若者の興味を満足する事は出来ません。

日本で放送されたアニメは瞬時にネットにアップされ、瞬く間に世界各国の字幕が着けられて世界中の若者がそれを夢中になって見ています。日本の若手のアニメの監督の名前なら、海外の若者の方が良く知っているかもしれません。

尤もこれと似たような状況はアメリカ文化にも言えるかも知れません。アメリカン・ニューシネマの監督の名前や、フリージャズのプレーヤーの名前は、一昔前の日本人の方が、一般のアメリカ人よりも余程知っていた時代がありました。

■ 「萌え」の裏側にある「オタク文化の真髄」 ■

前置きが長くなりましたが、日本のアニメやマンガが何故面白いかというと、それは「萌え」や「オタク」を支える「文化の屋台骨」がしっかりしているからです。

「萌え」や「オタク」はアニメやマンガを加速度的に「消費と再生産」を繰り返した結果現れた、水面のさざ波の様なものです。その下には何十年もの「アニメ」や「マンガ」の文化の蓄積があります。もっと遡れば、江戸時代の「黄表紙」や平安の「絵巻物」に行き着くのかも知れません。

日本の子供達の日常的に触れる「マンガ」や「アニメ」や「ライトノベル」は、文化の積層から浮き上がってくる泡の様なものです。それらの中では難解なSF的なレトリックが駆使され、男女の心の細やかな機微が繰り広げられています。若い作家達は、何代にも渡って純化され精製された「表現の結晶」を最初から手にしています。後は新しいアイデアと情熱さえあれば、そこそこの作品が量産されるのです。

台湾や韓国、中国がいかに真似ようとも、今後10年は日本に追いつけない程の蓄積が日本にはあります。

■ 五十嵐大介の「SARU」は日本マンガの水準を世界に知らしめる ■

以前、このブログでも「海獣の子供」を取り上げた五十嵐大介は、現在日本のマンガの水準の高さを知る上で最適な作家です。

その五十嵐大介の新作「SARU」の下巻がようやく発売され、完結しました。
上下二巻というコンパクトな内容ながら、「世界の理(ことわり)」に迫ろうとする大作です。

(ここからネタバレ)

フランスで交通事故に巻き込まれた少女に悪魔が取り付きます。バチカンから覇権されたエクソシストのカンディドは、悪魔祓いを試みますが、少女は突然「自分は斉天大聖・孫悟空」と名乗ります。

俺は「ハマタン」と呼ばれ、俺は「トロラック」と呼ばれる・・・俺は「ドゥナエー」、俺は「内臓を晒す者」、俺は「ヌヌマーン」、俺は「トート」、俺は「ヘルメス」、・・・そしてこうも呼ばれている。俺は「東勝神洲傲来国は花果山の生まれ。水廉洞主人たる天生聖人にして美候王・・・斉天大聖・・孫悟空」

彼は古代より人々に恐れられた「猿」の一部であると名乗ります。かつて世を支配した「猿」は「身外身」によって自在に体を分裂させ、何十、何百という分身を作っては又統合を繰り返してきました。

あるとき2頭の「身外身」が突然変異し統合を拒みました。そのうちの一体は「身体」だけの存在となり、もう一体は「精神」だけの存在となり更なる進化を遂げて行きます。

その後、世界は「身体」と「精神」という二つに「猿」の戦いのバランスによって均衡を保つようになります。しかし、そのバランスが崩れはじめました。「身体」が「精神」を滅ぼし始めたのです。

「精神」は何千、何万の「猿の家系」の人々に憑依し、分散して収容されていますが、その人々を「身体」の手先が抹殺し始めたのです・・・そう「猿」達は語ります。

「身体」はキリスト教の遺物、アーロンの杖の力で、インカを滅ぼしたピサロを復活させ、黒魔術と反魂術を駆使して、「精神」の欠片の人々を抹殺していきます。

「身体」に対抗できるのは、古代から人々に伝わる「歌と舞踊」。それらは空気を震わし、退魔の波動となって「身体」から人々を守ってきました。ところが、伝承の途絶や社会の変化が退魔の「歌」の力を弱め、「身体」と「精神」のバランスが崩れ、そして今まさに「身体」が復活せんとしているのでした。

復活した「身体」は巨大な低気圧の衣をまとい、その進路の都市を破壊し尽します。あらゆる軍事攻撃を跳ね除け、さらにはそのエネルギーをも吸収して成長する「猿」前に、人類は存亡の危機を迎えます。

最後の望みのロマ族に伝わる「歌」だけ・・・。はたして人類の存亡や如何に!!

■ 文章では表現出来ない面白さ ■

文章にすれば何と陳腐なものになってしまうのでしょう。しかし、五十嵐大介の「不定形なタッチ」で描かれるマンガは、ページから呪術的な力が立ち上ってきて、こんな荒唐無稽な物語に存在感を与えてしまいます。

歴史も宗教も伝統も人種も政治も軍事も恋愛も、そして全世界をも丸呑みにして、話は結末へと「ズルズルと力強く」進んで行きます。

こんなジャンルを超越して強引な作品がかつてあったでしょうか?
手塚治の蒔いた種は、今、五十嵐大介として育ち、「SARU」という作品で花を咲かせました。

これが現代の日本のマンガ、いえ「文化」の到達点でしょう。

村上春樹のノーベル賞落選に落胆している人達には分からない、自由でエネルギッシュな日本文化の現在の姿です。

「読まずに死ねるか!!」・・・をう叫ばずには居られないお勧めのマンガです。

経済学は未来を予測出来ない・・・悪魔の見えざる手

2010-10-27 13:32:00 | 時事/金融危機



■ 東芝は70円のレートを想定 ■

ドル/円レートが80円を割り込む勢いです。さすがに昨日は介入を警戒してドルが値を戻していますが、ドル安基調に変化はありません。ドルが対円で市場最安値を付けるのも時間の問題です。

ところでこのドル安はいったい何処まで行くのでしょうか?

<ロイターより引用>
http://jp.reuters.com/article/technologyNews/idJPJAPAN-17823720101025

1ドル70円の円高に備え対応策、事業構造を転換=東芝社長

東芝の佐々木則夫社長は25日、1ドル=70円の円高を想定したストレステスト(健全性審査)を昨年10月に実施し、その結果を基に売り上げ、生産、調達の海外比率を引き上げるなど事業構造の転換に取り組んでいることを明らかにした。

 25日の東京外為市場では、円が1ドル=80.41円をつけるなど15年ぶりの高値を更新。史上最高値をうかがう円高が、輸出勢などを中心に日本企業の業績を圧迫している。

 佐々木社長によると、東芝は昨年10月から、さらなる円高を想定し、「プロジェクト70」と呼ぶ対策に取り掛かった。同社長は「昨年10月にこの話をした時には、そんなことになるわけがないと言われたが、ドルの弱さと円の強さの両方を見ると、確率はあるかもしれないということで、ストレステストを実施した上で施策を進めることにした」と語った。

 昨年度上期は1円の円高が同社の営業損益ベースで8億円のマイナス要因だったが、今年度上期は1円の円高が7億円のプラス要因になるまで体質が改善したという。ただし、「ユーロは別」という。

 具体的な施策としては、短期的には「輸出入バランスの改善」が目標。同社長は「海外に生産を委託する場合でも、どういう形で生産委託していくか、現地調達やいろいろな面で改善するべきところがある」と指摘した。

 また、中長期的には「良くなる事業は伸ばし、悪くなるものを入れ替えていかないといけない」とし、さらなる事業構造の転換に前向きな姿勢を示した。

(ロイターニュース 泉沙智記者;記事作成 大林優香記者)

<引用終わり>


昨年9月の「人力でGO」で予想したレートも70円でした。
本当は貧しいアメリカ・・・ドルの実力
http://green.ap.teacup.com/pekepon/139.html

■ 下半期の想定レートを80円とするトヨタ ■

トヨタは下半期の想定レートを80円/1ドルとしているようです。既に80円を割ろうとしているのですから、80円以下を想定すべきですが、70円代では収益予測が下振れし過ぎて株価に与える影響も甚大になるのでしょう。

■ 2倍に膨れ上がったドル、3倍のポンド ■

ドル安には諸説いろいろありますが、単純に言えばドルが増えすぎたのですから、レートが下がるのは自明の理と言えます。

リーマンショック後、ドルは2倍、ポンドは3倍の通貨流通量になっています。一方、円は1.05倍ですから、50円/1ドルになっても良い訳です。ドルが踏ん張っているのは、ドルの機軸性が辛うじて保たれているからです。

■ 「悪魔の見えざる手」にいざなわれる世界 ■

経済評論家や経済学者の予測は当たりません。それは、彼らが「良識的」だからです。「経済は世界の人類の理性と知性の総和の上に成り立っている」と彼らは考えています。市場原理とい「神の見えざる手」は、神の物ですから、人類に悪意を持っていないと考えているのでしょう。

しかし、実際に世界経済を動かしているのは「悪魔の見えざる手」です。「奥の院」とも「イルミナティー」とも言われる一部の者達が、その利益を最大化する為に世界を恣意的に動かしています。

「起こるはずの無い事が起こる」から彼らは莫大な利益を上げるのです。

ですから、経済学者の予測は常に外れます。後付的に数式を操作して、科学の振りを装いますが、自然科学から見れば、社会科学の数式などパラメーターと関数を調整してたまたま事象に合った数式を見つけているに過ぎません。ですから、次の危機の出現で、その数式の根拠は根底から崩れてしまします。

稀に危機を予測する経済学者も居ますが、むしろ彼らは「奥の院」の手先として、地獄への水先案内人を務めています。

ケインズは不況下に需要を作る為「公共投資」の必要性を説きましたが、前回の世界恐慌は「公共投資」によって需要が回復したのでは無く、第二次世界大戦による「過剰生産設備の破壊」という生産の抑制と「戦後復興」という需要の創造によって景気が回復しています。

リーマンショック以降、ケインズの亡霊が世界中に現れましたが、大規模な財政出動はソブリンショックの大津波となって、世界経済を根底から破壊するでしょう。

■ ロスチャ系の企業に注目 ■

世界経済の先行きを見極めようとしたら、ロスチャ系の企業の動向に注目するのが一番です。

その筆頭がゴールドマンサックスであり、国内では三井住友や東芝、日産といった企業の動向が時代の方向性を先取りしているはずです。

先に東芝が70円/ドルを想定しているという記事を紹介しましたが、これはロスチャイルドが70円/ドルを容認していると読むべきです。東芝は過去にCOCOM違反でロックフェラーに叩かれましたが、近年、アメリカのウエスチングハウスを買収してロスチャイルドの原子力戦略の一翼を担う企業となっています。

日産もルノーと合弁した事で、ロスチャイルドの一翼を担う企業です。日産はゴーン氏の指揮の元、生産拠点の海外移転を進め、主力車のマーチをタイで生産するなど、円高に対応した企業体質になっています。

■ 石油に注目 ■

日産はEVのリーフを発表するなど、積極的に電気自動車戦略を推進しています。尤も、リチウムイオン電池が高価で充電設備のインフラも整わない現状では本格普及には至らない可能性が大きいです。

そこで、高級車のフーガのハイブリットモデルを市場投入しました。リーフに採用されるリチウムイオン電池を搭載しています。暫くはハイブリットで時間を稼ぎながら、バッテリーの性能向上と制御技術を練り上げていくのでしょう。

さて、東芝にしても、日産にしても、あるいはトヨタが出資させられたテスラモーターズにしてもビジネスの基本は脱石油社会です。原油価格が100ドル以下の現状では、これらのビジネスは成り立ちません。

温暖化による脱石油社会の構築はコペンハーゲンで減速を余儀無くされています。しかし、ゴーン氏の日産も、電気自動車を捨ててはいない様です。彼らのビジネスが成功する為には石油の高騰という現象が不可欠です。

■ 石油に裏打ちされたドル ■

ニクソンショック以降、金の兌換を停止したドルは、石油の決済通貨としてその価値を保っています。所謂、「修正ブレトンウッズ体制」です。

現在ドルが危機に瀕死ながらも未だにその価値を保っているのは、少なからぬ石油が未だにドル立てで取引されているからです。

ドルが暴落すれば原油価格は高騰します。尤も、事そこに至れば、ドルペックを続ける国々も流石にドルに見切りを付けるでしょうが、ドルの暴落は「信用通貨」自体を紙切れにしてしまうかも知れません。資源インフレが発生する事は必至です。

さて、日産の電気自動車戦略は、果たしてロスチャイルドの青写真に則った物なのか、それともゴーン氏が単なる技術音痴なだけなのか?・・・日産の動きからは暫く目が離せません。

フォークロージャー危機・・・抵当権は誰のもの

2010-10-25 15:30:00 | 時事/金融危機



■ フォークロジャー・ゲート事件 ■

今回のアメリカの担保差し押さえ中止に絡む疑惑を「フォークロジャー・ゲート」事件と呼ぶらしい。田中宇氏のサイトに内容は詳しく載っているので、是非参照して頂きたいと思います。

私もMBSやCDSという金融商品は成り立ちが複雑過ぎて、理解し切れないのですが、先日書き込みをしている際にも、金融機関がローンをフレディーマックやファニーメイに売却(債務保証)さいた際に、抵当権はどうなるのか疑問でした。田中氏のブログによると・・

① 金融機関が住宅ローンを貸し付ける(抵当権を得る)
② フレディーマックやファニーメイが住宅ローンの債務保証をする(抵当権が移動する)
③ フレディーマックやファニーメイがMBSを組成する
④ MBSを投資家や金融機関に販売する(抵当権が移動する)

という事で、MBSが組成される場合、ローンの抵当権はMBSを購入した投資家に移動している様です。そこで問題が発生します。

① ローンの支払いが滞る
② ローンの貸し出し銀行が、住宅を差し押さえる
③ MBS購入者に担保権が移っている為、銀行は本来担保権を有しない
④ 裁判所が銀行の差し押さえを無効として差し押さえを中止させる
⑤ 既に差し押さえられた住宅も不当な差し押さえと判断する
⑥ 住宅を差し押さえられた住民が訴訟を起こす可能性が高まった

さらに銀行は裁判所に提出する資料で抵当権者の資料を偽造して差し押さえを行っており、これが国民の怒りを買いました。

■ そもそもインチキなモゲージ ■

さらにバンカメやシティーバンクで問題になっているのは、モゲージを重複して販売したのではないかという疑惑です。同じモゲージが幾つものMBSに組み込まれてしまった可能性があるのです。

これは完全に詐欺行為ですから、MBSの購入者が買戻しを要求する事態に発展しました。

バンカメ傘下のカントリーワイドがこの様な不正を働いていた様です。バンカメは投資家から合計470億ドル分のMBSの払い戻しを要求されています。

さらには、06年と07年に発行されたシティーが組成したモゲージ債は、担保の不足が指摘されています。

この様に、モゲージ債事態がインチキ商品である可能性もある為、銀行は今後予想される「訴訟」と、「払い戻し」と、「差し押さえ中止」に戦線恐々としている事でしょう。




バンカメは悪魔に魅入られた?・・・住宅差し押さえ問題の行方

2010-10-21 18:18:00 | 時事/金融危機


■ モゲージ債の買戻しを要求されるバンカメ ■

住宅差し押さえ問題で揺れるバンカメが、またもや苦境に立たされています。

<ロイターより引用>
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17739420101019

米バンカメ、モーゲージ債問題で争う姿勢示す

 米銀大手バンク・オブ・ アメリカ(バンカメ)(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)は19日、大口投資家グループが、同行が販売したモーゲージ債について、担保となる住宅ローンに問題があったとして対応を求めたことについて、同行に責任はないとして争う姿勢を示した。

 関係筋によると、大口投資家グループは、バンカメが、本来投資家に販売すべきではなかった住宅ローンをモーゲージ債に組み入れたと主張。同行に対し、60日以内に問題を解消するよう求めた。

 関係筋によると、この大口投資家グループは、約165億ドルのモーゲージ債を保有。投資家グループには、米連邦準備理事会(FRB)も含まれている。

 ブルームバーグは、債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)と資産運用会社ブラックロック(BLK.N: 株価, 企業情報, レポート)も、この投資家グループに含まれていると報じている。 

 バンカメはアナリストでの電話会議で、同行が販売したモーゲージ債について多くの投資家から根拠のない苦情が寄せられていると批判。

 モイニハン最高経営責任者(CEO)は「シボレー・ベガを買った人が、12気筒のメルセデスが欲しかったと言っているようなものだ」と述べた。

 ただ同行は、モーゲージ債の損失が潜在的にどの程度まで膨らむかはわからないとも表明。これを受け、同行の株価は4%以上急落した。 

 投資家グループは、バンカメ傘下のカントリーワイドに対し「契約不履行通知」を送付。60日以内に問題を解消するよう求めている。

 猶予期間の終了後は、同行を提訴することが可能になる。

 PIMCO、ブラックロック、ニューヨーク連銀はコメントを拒否している

<引用終わり>


■ 訪れない「出口」 ■

NY連銀までもがモゲージ債の買戻しを要求している事が引っかかります。

FRBはリーマンショック後に金融機関のMBSを大量に買い上げる事で、市場に大量のドルを供給しましたが、最近は金融機関にMBSの買戻しを要求している様です。

MBSの買い上げは住宅市場崩壊を防ぐ緊急処置でしたから、時間が経てばFRBがMBSを手放すのは当然の事と言えます。

しかし、当初MBSの売却は出口戦略の一環として捉えられていました。出口が見えない今、FRBがMBSを手放す事は住宅債権市場を不安定にする要因になります。

住宅ローン金利は長期国債の金利同様に、長期金利を左右します。リーマンショック後、米国政府とFRBが金融機関からMBSを買い上げた理由の一つには、長期金利抑制という目的がありました。政府の意図に反して長期金利が上昇すれば、住宅市場が崩壊するだけでなく、長期国債の発行コストが増大するというオマケが着いてくるからです。

市場はFRMのMBSの買い上げは一時的な物であり、MBS市場が正常化すればFRBはMBSを市場で売却すると考えていました。しかし、長期の景気低迷が避けられない現状では、MBS市場はデット・マーケットの状態から抜けられず、いつまでも出口は訪れません。

それどころか、今回の差し押さえ中止騒動によって、金融機関がほとんどいい加減な審査で住宅ローンを組成し、さらにそのローンをMBSに組み替えて売却していた事が白日も下に晒されてしまいました。



上のグラフは住宅ローンの貸し出し年度とデフォルト率のグラフです。2005年から2007年にかけて、如何に住宅ローンがずさんに貸し出されていたかが分かります。これは、バンカメ1社の問題ではありません。


■ MBSとは? ■

MBS(住宅ローン担保証券)の成り立ちは複雑です。

住宅購入者は金融機関のローン審査を経て、住宅ローンを組みますが、金融機関はローンの貸し倒れリスクを軽減する為に、住宅ローン(モーゲージ)を、政府系住宅金融機関であるファニーメイやフレディーマックに売却します。

ファニーメイやフレディーマックは住宅ローンのリスクを金融機関から肩代わりして、住宅市場の円滑化を図る組織と言えます。

フレディーマックやファニーメイはこれらの住宅ローン債権を多数寄せ集めて、証券化して販売します。これがMBS(住宅ローン担保証券=モーゲージ債)です。ファニーメイやフレディーマックは民間の金融機関ですが、政府がバックアップしている事から、これらのMBSは国債に次ぐ高い信用力があると思われていました。

これとは別に民間の金融機関もMBSを発行しています。今回のバンカメで問題になっているのは、リーマンショックの際にバンカメが傘下に収めたカントリーワイドの発行したモゲージが、ずさんな審査によって貸し出されたローンを元にしていた事に端を発しています。そのモゲージを元にして組成されたMBSの信用が揺らいでいるのです。NY連銀はベアスターンやAIGの救済の過程で、その様なMBSを大量に抱え込んでしまいました。


■ 差し押さえの急増に事務処理が追いつかない ■

アメリカではリーマンショック後、多くの失業者が発生し、多くの住宅ローンが焦げ付いています。債権者はこれらの住宅を差し押さえて競売に掛け、債権を回収します。

今回の「差し押さえ中止問題」の始まりは、債権の回収を焦る金融機関が、それぞれに住宅を差し押さえようとして、混乱が発生した事もある様です。

バンカメだけで10万件の差し押さえを処理する為に、半ば「メクラ判」、あるいは「債務者のサインの捏造」などのムチャクチャな事務処理が行われ、裁判所もオーバーワークに陥った為、書類の手続きがずさんになった・・・。そんな背景があります。

■ MBSは担保が取れるのか? ■

ローンの直接的な貸し手である銀行は、契約が明確ですから、住宅を差し押さえる事が出来ます。

しかし住宅ローンを細分化して組成したMBSでは、債権の回収は絶望的です。仮に、MBSに含まれるローンを確実にトレース出来たとしても、一つのMBSに含まれる1件のローンが細分化の結果1万円になっていたら、担保を差し押さえに行く交通費にも満たなくなります。

ローンの債権者である金融機関は、モゲージ債を発行する際に、貸し出した元本を取り戻していますから、銀行が担保物件を競売に掛ければその売却益は見かけ上銀行の利益になります。

尤も、モゲージ債やMBSに金利を払い続ける訳ですから、長期的には銀行が回収した資金はこれらの債権や証券の買い手の元に移動して行きます。

■ 30年後までの利払いを誰が当てにするのか ■

約束上では満期までモゲージ債やMBSを持ち続ければ、元本に金利を足した金額が手元に戻って来ます。

しかし、モゲージ債もMBSもローンの流動性を高める為に開発された商品です。
誰も始めから長期保有を目的に購入はしていません。

ですから、モゲージ債やMBSの流動性が損なわれた時点で、商品としての価値は損なわれています。流通しなければ、「紙切れ」も同然です。

■ ババを引かされるバンカメ ■

MBSやモゲージ債はババ抜きのババ同然です。
誰もが手放せるものなら手放したい。

最近の「差し押さえ問題」はババを手放したい金融機関に恰好の口実を与えました。
元々インチキ商品なんだから、買い戻せ!!

しかし、バンカメ傘下のカントリーワイドに限らず、アメリカの金融期間は何処も似たり寄ったりのインチキMBSやインチキ・モゲージ債を発行しています。では何故バンカメなのか?

■ アメリカの国民銀行としてのバンカメ ■

アメリカ最大の銀行であるバンカメは、、カリフォルニアに端を発する土着の銀行が、同様の金融機関を合併する形で成長した、アメリカの国民銀行です。

NYの大手銀行はユダヤ資本によって作られ、その利益の少なからぬ額が大陸ヨーロッパに還流している事とは対象的です。

リーマンショック後、バンカメはメリルリンチを傘下に収めます。バンカメとしては弱かった投資銀行部門を格安で手に入れたつもりでしたが、蓋を開けてみるとメリルリンチは不良債権の溜り場でした。

そもそもバンカメのメリル買収劇は、バーナンキがバンカメに圧力を掛けて実現したとも言われています。議会もこの問題で公聴会を開いています。

・・・どうもアメリカの国民銀行であるバンカメは、ユダヤ資本に不当に貶められている感があります。

■ 大きくても潰す ■

アメリカの金融改革法案の最初の餌食はバンカメかもしれません。

アメリカ人の地域経済に密着したバンカメを潰し、そこから溢れた富を、ユダヤ系の銀行が美味しく頂くという狙いがチラホラと透けて見えます。

尤も、バンカメの破綻はリーマンブラザーズの破綻以上の影響を金融市場に与えるでしょう。ロスチャルドとしては敵の本丸であるシティーバンクを敢えて攻めなくても、バンカメの破綻の連鎖反応でシティーも共倒れしてくれれば言うこと無しと思っているのかもしれません。

どうやらバンカメは悪魔に魅入られてしまった様です

住宅市場崩壊直前?・・・差し押さえ中止の意味するもの

2010-10-18 16:49:00 | 時事/金融危機





■ アメリカで住宅の差し押さえが中止されている ■

アメリカで金融機関による住宅の差し押さえ・競売が中止されています。

<ロイターより引用>

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17706320101018

[シャーロット(米ノースカロライナ州) 15日 ロイター] 米銀行大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)のスポークスマンは15日、住宅の差し押さえに裁判所の承認が必要な23州で、10万2000戸分の関連書類を再審査している、と述べたうえで、そのうち3万戸の競売が中止される、との見方を明らかにした。

 米国では、金融機関による住宅の差し押さえ手続きに問題があるのではないかとの疑惑が浮上し、国民の反発も強まっている。バンカメは今月9日から、全米で差し押さえ物件の競売を一時停止している。

(後略)

<引用終わり>

バンカメに限らず、多くの金融機関で差し押さえ・競売が中止されています。

表面的には住宅の差し押さえから国民を守る政策の様に見える今回の事件には、実はアメリカ経済の病巣が隠されています。

■ 枯れた「金の成る木」 ■

アメリカでは既にローンの担保に入っている住宅でも、価格が上昇すれば価格上昇分だけ新たな担保が発生します。

① ローンを組んで住宅を購入
② 住宅価格が上昇
③ 住宅価格上昇分だけ新たに担保が発生
④ 新たな担保でローンを組んで消費を増大する

住宅価格が上昇している間はアメリカ人は次々にローンを組んで消費を謳歌する事が出来ました。リーマンショック前は「住宅」はアメリカ国民にとってまさに「金の成る木」でした。

しかしリーマンショックで「金の成る木」は枯れてしまいます。残ったのは債務だけでした。

■ 住宅の差し押さえが激増 ■

アメリカでも住宅ローンの返済が2ヶ月滞れば、住宅は債権者に差し押さえられます。リーマンショック後は差し押さえまでの期間が延長されていますが、失業率が高止まりしている現状では、いずれ住宅は差し押さえられて競売に掛けられます。(アメリカでは住宅を差し押さえられた住人は、その住宅を出て行けば借金からは開放されます。)

リーマンショック後はこの様に差し押さえられる住宅が激増し、中古住宅市場に大量の住宅が溢れ出しました。最近では中古住宅の在庫は、販売量の1年分を越えています。



上図は中古住宅の販売推移です。景気低迷の長期化で、中古住宅の販売量が減少している事が分かります。

① 差し押さえによって、中古住宅の在庫が増大する
② 景気低迷によって中古住宅の販売量が低迷する
③ 中古住宅が供給過剰になり価格が下落する
④ 良質で安価な中古住宅の氾濫は、新築住宅市場を圧迫する




上のグラフはアメリカの新築住宅の販売件数の推移ですが、最盛期の1/5の販売数にまで落ち込んでいます。住宅価格も30%~40%下落しています。

■ もはや差し押さえ出来ない ■

最近では住宅を差し押さえしても在庫が増えるだけなので、金融機関も差し押さえ競売を控え、債務者が住宅を売却したらその売却益でローンを返済する日本に似た方法を取っています。

しかし、中古市場がだぶついているのですから、売却は容易ではありません。結局は返済の滞りが長期化するだけの結果となるでしょう。

冒頭の記事は、「法的不備で金融機関が住宅の差し押さえを中止」していると報じられていますが、その真意が、これ以上中古住宅の在庫が増大すると市場が崩壊する危機があるので、差し押さえたくても差し押さえられないというのが現実でしょう。

■ 「危機」の病巣は拡大している ■

最近新聞ではドル安を「通貨戦争」などと報じていますが、ドル安は結果であって目的ではありません。実際ドルが安くなってもアメリカの製造業が復活するまでにはタイムラグがあります。

一方、リーマンショックの引き金となったサブプライムローン問題は、アメリカの失業率の上昇によってあらゆる所得階層の住宅ローンの焦げ付きとなって拡大し続けています。

住宅市場が崩壊すれば、FRBが大量保有するMBSも大暴落し、FRBの債務超過は確定的となりドルは大暴落するでしょう。

さらには実質政府が保有するフレディーマックやファニーメイは破綻を余儀なくされ(既に破綻していますが)、破綻処理のコストがアメリカの財政を直撃します。

グリーンスパンのバブル誘導政策でアメリカで膨らんだ「住宅バブル」の処理は、終わるどころか現在もアメリカ経済の最大の危機として存在し続けています。