■ アベノミクスに似るであろうトランプの政策 ■
トランプの政策はポピュリズムの政策ですから、基本的にアベノミクスと似ると思われます。
1) 負担の軽減
法事税の引き下げ
所得税の簡素化と引き下げ
2) 財政拡大
公共事業の拡大(国境の壁など?)
軍事費の拡大
但し、トランプは保護主義的貿易政策を取りそうなので、この点はTPPで自由主義貿易を推進するアベノミクスとは違う様です。
■ 実は公共事業を縮小していたアベノミクス ■
2013年に安倍内閣が発足した時こそ、大型補正予算で公共事業を拡大したアベノミクスですが、その後は緊縮財政路線に方向転換し、消費税増税も実施しています。
その原因はひとえに「金利」にあると思われます。「景気回復」を目標としている様に見せかけたアベノミクスですが、財務省の目的は日銀による「異次元緩和」と言う名の「隠れ財政ファイナンス」
少子高齢化が進行する日本においては既に税収で財政を支える事は不可能となりつつありますから、日銀による財政ファイナンスが不可欠な状況。但し、増え続ける国債の利払いの増加をどうにかしないと財政は発散してしまいます。
そこで考えだされたのが「異次元緩和」によって10年債までの金利をゼロ以下に抑えるという戦略。これならば国債残高が拡大しても利払いは増えません。償還期日を迎えたら政府は日銀にお金を払いますが、日銀はそのお金を国庫に納める仕組みになっているので、問題在りません。
そう、現在の日本は「無限国債」が実現しているのです。尤も、財政赤字が拡大し続けるので、どこかの時点で為替の下落に歯止めが掛からなくなり、それをきっかけに金融機関は国債を手放すので、破綻はいずれやって来ますが・・・。
■ 金利を上昇させない事がアベノミクスと異次元緩和のキーポイント ■
1) 「無限国債」を継続させる為には国債金利はゼロ以下である事が好ましい
2) 国債金利は市中金利の影響を受けるのえ、市中金利もゼロ近傍が望ましい
3) 金利上昇の原因は景気回復とインフレである
4) 日本は少子高齢化の進行で潜在成長率は0近傍であり、金利上昇圧力は生じ難い
5) 異次元緩和で供給された資金は金利差によって海外に流出(米国債)し、国内景気を刺激出来ない
上記の理由によって、アベノミクスと異次元緩和は「景気回復とインフレ率上昇」という問題亭をクリアーする事で、継続的な財政ファイナンスを実現しています。
■ トランプの政策が軌道に乗る前に米国債金利が上昇するだろう ■
日本とアメリカの最大の違いは「潜在成長率」にあります。
日本はゼロ近傍ですが、人口動態が日本よりもマトモで、移民による労働力が流入するアメリカでは潜在成長力は少なくとも2%は在りそうです。
1) トランプの財政拡大路線は一時的でも米景気を拡大させる
2) 減税政策も景気拡大を後押しする
3) アメリカの金利が2%を超えて上昇する
この予測の元に米国債金利が急上昇しています。現状は10年債金利が2.3%程度まで上昇しています。
■ 1%台の金利の米国債を買っても為替差益で儲かる日本 ■
金利1%台の米国債のババ抜きが始まっているとも言える状況ですが、米国債金利はいずれ頭打ちになるはずです。
1) 米国債金利の上昇に伴てドルが他国通貨に対して高くなっている
2) 金利の低い米国債を保有していても、為替でドルが高くなれば金利は実質の価格は下がらない
3) 日本を始めとする米国債を大量に保有する国の為替が下がる間は米国債の大量売りは起きない
4) 現状、中国やサウジが米国債を手放し、日本が買っている状況だろう
5) ヨーロッパの資金の新興国やEU圏内の国債を手放し米国債を買っているだろう
多分、現状はヘッジファンドなどが米国債を売って株式に資金を移す一方で、為替が下落している国が米国債を購入していると考えられます。
■ ドル高にブレーキが掛かると米国債金利の上昇ペースが速まる? ■
「ドル高が先が、米国債金利高が先か」という「卵と鶏」の問題はあるとしても、ドル高が進行している間は米国債の需要は確保され、金利の上昇は抑制されます。
問題はドル高が反転した時で、先の円高局面で日本国内の金融機関が慌てて米国債を手放した様な事態が発生します。この時は、世界的に金利水準が低下していたので、米国債金利はゆるやかに低下していましたが、今は金利は明らかに上昇トレンドに変化しています。
もし、仮にドル高にブレーキが掛かるとすれば、米国債金利はそれを合図に一層の上昇をすると思われます。
■ トランプに金利上昇を抑制する秘策は有るのか ■
日本は異次元緩和によって国債金利をゼロに抑え込んでいます。
一方、FRBはテーパリングを終え利上げに踏み込んでいるので、米国債を大量に購入して金利を抑え込む事が出来ません。むしろ、適切な利上げによって景気の過熱を抑制し、金利上昇にブレーキを掛けなればならない。
これでは市中金利に引っ張られて、FF金利(FRBの政策金利)もスパイラルに上昇してしまいます。
日本では「消費税増税」が景気回復を抑制し、金利上昇を阻止しましたが、トランプは減税のアクセルを踏もうしています。これでは景気が刺激され、金利がさらに高まります。
■ 低金利でバランスした世界の終わり ■
「FRBも金利を上げたがっているのだから、金利が上昇して何が悪いのか?」との疑問は当然あるかと思います。これが、通常の景気循環における金利上昇局面であれば何ら問題はありません。むしろ好感すべきです。
しかし、リーマンショック以降、世界中の中央銀行が狂った様に資金を提供した為に、あらゆる債券、金融商品などの金利は非常に低くなっていました。これらの金利の低い資産は、金利上昇によって巨大な「含み損」を生む事になります。
米国債が、新興国の国債が、シェール企業を始めとしたジャンク債が、クレジットかカーローンの債券を加工した金融商品が・・・これらの金利が見すぼらしい物に見えた時、人々は我先に金利の低い債券や金融商品を手放そうとします。
そう、リーマンショックの原因となったサブプライムローンの破綻に端を発したMBSやそれを合成したCDOの破綻と同じ状況が起こるのです。
■ 最後の饗宴 ■
ダウが19000ドルを超え、日経平均も18000円台を回復しています。多くの市場参加者は、トランプ就任までに利確しようと考えていますから、この相場は年末にかけて調整されるでしょう。
ただ、市場参加者の多くは、その後に「トランプ・バブル」を予測しています。トランプ政権のスタートダッシュに乗じてもう一儲けと考えているはずです。
そうなると資金がアメリカに一気に還流するので、新興国市場やヨーロッパの市場で絶対に破綻が起こります。上海ショックのもっと大規模な下落が発生するはずです。
はてさて、ドイチェバンクがイタリアの諸銀行がこのショックに耐えられるのか・・・。世界の金融市場は密接に繋がっていますから、アメリカの一人勝ちで終わるとは思えません。
はてさて、トランプ(或いは彼を担ぎ上げた人達)にどんな秘策が有るのか・・・陰謀論的な興味は尽きません。
とりあえずは確実視されているFRBの12月利上げが実行されるかどうかが焦点。FRBが利上げを見送った場合は・・・かなりヤバイ。