人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

米国債の需給の展望・・・BISの基準変更の影響は?

2015-04-30 09:02:00 | 時事/金融危機
 

■ 米国債を買い支えていた中国 ■

米国と中国は対立関係にあると思われています。しかし、米国債を買い支えていたのは中国です。

1)貿易黒字によって元高の傾向が強まる
2)元安の為替介入の為に香港市場で元売りドル買い介入を行う
3)介入の結果手元に溜まった外貨準備を米国債に投資する

中国は最近までは世界最大の米国債保有国だったんぼです。香港市場における為替介入は香港上海銀行(ロスチャイルドの銀行)を通して行われていますので、国際金融資本家達の影が見え隠れしています。

■ 安全保障に役立たない中国の米国債保有 ■

「中国が米国債を大量保有するのは、有事の際に米国債を売却するそぶりを見せる事で、米国の人質としているのだろう」という噂がかねてから有ります。

しかし、アメリカは法律で安全保障上懸念される場合は、他国が保有する米国債を凍結する事が出来ます。もし、米中で緊張が高まれば、アメリカは中国が保有する米国債を凍結します。この関係において、米国債保有のリスクは一身に中国が追う事になります。

これは日本においても同じで、日本が財政破綻しそうになって政府が手持ちの米国債を売却しようとしても、米国は安全保障を理由に日本の米国債を凍結するはずです。そうしなければ米国債が暴落して日米共倒れになってしまうからです。日本は世界最大の債務国だが、世界最大の債権国と思われている方は沢山いらっしゃいますが、日本政府は保有米国債を一同も償還した事すら無いはずです。ロールオーバーし続けながら、粛々と米国債を買い続けています。これは、日本が米国に払う税金の様なものです。

一方、中国は満期になった米国債をロールオーバーしないという選択肢も選べる様です。米国債の保有額が減少しています。

中国は手持ち米国債の残存年数を圧縮して、順次償還を迎えれば、米国債保有額を圧縮する事が出来、アメリカに正面から挑まずとも米国債保有リスクを軽減する事が可能です。

■ 元安で中国の米国債買いが減少している ■

世界的な需要の低下は、元安傾向を強める事によって米国債需給を圧迫しています。中国は世界最大の米国債保有国でしたが、直近で日本が世界一の座に帰り咲いています。

1)世界的な景気減速で中国の海外輸出が減少
2)中国の貿易収支が縮小して元安の傾向になる
3)元安誘導の為の為替介入の必要が無くなる
4)元売りドル買いの為替介入によって手元に溜まったドルを米国債で運用する必要が低下

■ AIIBは中国の巨大な外貨準備を米国債から域内インフラ投資に切り替える政策 ■

AIIBに難色を示すアメリカと日本ですが、アジア経済の主導権争いの他に米国債需給の悪化を懸念しての事と思われます。

1)中国は巨大な外貨準備を米国債投資で運用してきた
2)AIIBの出資に外貨準備を回した分だけ米国債購入を手控える

中国は積極的に米国債を売却せずとも、AIIBという出仕先を作り出す事で、米国債以外の運用の口実を手に入れた事になります。結果的に米国債の保有量を段階的に減少させる事が出来ます。

■ 中国の代わりに米国債を買わされる日本 ■

民主党政権末期、アメリカから米国債購入の圧力が高まりました。

「日本は政府ファンド50兆円を立ち上げて米国債を購入するだろう・・」という記事がブルームバーグなどに載ったり、「日銀による米国債購入を検討すべき」という意見が出されたりしました。

しかし、リーマンショック後の景気悪化の中で日本政府や日銀が米国債をアカラサマに購入する事は国民が納得出来ません。当時の国会答弁で民主党の前原氏も、「日銀が米国債を直接購入する事は不可能」と述べています。

そこで考え出されたのが異次元緩和です。日銀が米国債を直接買う事が出来ないならば、日銀が公的金融機関や民間金融機関の保有する日本国債を購入し、その分公的金融機関や民間の金融機関が米国債投資を増やせば良い・・・。

政府はGPIF(年金積立金)や、ゆうちょ、かんぽの運用比率を変更して、日本国債の比率をい減らし、日本株、外国株、外国債の比率を拡大しました。外国株とは米国株、外国債とは米国債の事を指します。こうして、公的資金や準公的資金を日本国債から締め出し、米国債投資を拡大させています。

一方、民間の金融機関に対しても「日本国債の保有リスク」と強調して、日本国債の保有量を減らさせています。IMFは日本のメガバンクに日本国債保有と残存年数の圧縮を提言していますが、メガバンク3社はIMFの提言通りの運用に切り替えています。

金融庁も地銀や信用金庫に日本国債偏重の運用を是正する様に指導しています。地銀はメガバンクに資金運用を委託する形で、海外運用を拡大しています。

■ バーセルの基準変更をほのめかしてて国債離れを促すBIS ■

BIS(国際決済銀行・本部スイス)は中央銀行の協調の場として、国際的な銀行の基準を定めています。銀行が国際業務を行う為にはBISが定めた基準を満足する必要があります。これをバーセルと呼びます。(現在はバーセルⅢ)

日本のメガバンクはかつて貸付が巨額でそれに対する自己資本比率が低い事が特徴でした。バブルの崩壊の直後、BISはバーセルに基準を変更し、自己資本比率が8%に満たない銀行は国際業務が出来ないと定めます。

日本の大手銀行はこの基準を満たす為に、融資を引き揚げ(貸しはがし)、増資によって自己資本比率を厚くしました。この結果、バブル後の日本の経済は長期に渡り低迷し、さらにに日本のメガバンクの株を多くを外国人投資家が保有する事となりました。資金繰りに苦しんだ多くの企業はハゲタカファンドの餌食となり、さらに資金調達の方法を銀行の融資から株式や社債などの直接金融に切り替えた大手企業の株式の半分近くを外国人投資家が保有する事となりました。

この様に、BISの基準変更は何等かの意図が見え隠れしているのですが、最近、BISはこれまで「リスク0(ゼロ)としてきた自国国債をリスク資産に分類する基準変更をほのめかせています。

もし、日本国債をリスク資産と見なした場合、海外業務を行っている日本のメガバンクや大手地銀は、日本国債保有に見合う自己資本の積み増しか、日本国債売却を迫られます。

自己資本の積み増しは株式発行による増資で賄う必要がありますが、希釈化による株価下落が予測される事から、日本国債売却を選択すると思われます。

日本国債の価格低下(金利上昇)を抑え込む為に、日銀は異次元緩和を超次元緩和に拡大して吐き出される国債を買い支えます。

金融機関はしばらくの間、国債売却資金を日銀の当座預金に積み上げる事になるので、日銀はこの資金で国債を購入します。要は国債のリスクが銀行から日銀に移る事になります。

銀行は国債売却資金のある程度を運用に回すでしょう。日銀の当座預金の利息は0.1%程度ですから、それより利率の良い安全資産は世界には沢山有ります。その筆頭が米国債です。

邦銀の保有する米国債も当然リスク資産ですが、金利差を考慮すれば、日本国債より米国債が魅力的となります。

こうして、BISの基準変更はメガバンクや大手地銀の資金の少なからなぬ量を、米国債に流す効果があるでしょう。


■ ヨーロッパの銀行や生命保険も、国債金利低下のリスクに晒されている ■

BISの基準変更は日本だけでなく世界の大手銀行に影響を与えます。

ヨーロッパ各国の国債金利は極端に低下しています。南欧諸国の国債はリスクを反映しない金利となっています。もし自国国債もリスク資産と分類されると、南欧債から資金が一気に逃避する可能性があります。ECBが国債買い入れによる量的緩和に踏み切った背景には、BISの基準変更が念頭にあったとも思われます。

IMFはヨーロッパの生命保険各社が金利の低下した国債を大量に保有するリスクに晒されていると警告しています。これは、近い将来国債金利が上昇する可能性を示唆していると思われます。

■ リスクウエイト・ゼロの米国債 ■

日本やヨーロッパ同様に米国債にもバーセルの基準変更の影響はあるのでしょうか?



上のグラフは2011年に私が作成した米国債の保有比率です。実はアメリカの金融機関(家計)は米国債をあまり保有していません。その後、QEによってFRBの比率が拡大し、米国内民間金融機関(家計)の比率はさらに低下しているはずです。


2014年12月 日本国債保有割合


比較の為に日本国債の保有比率を掲載します。異次元緩和によって日銀の国債保有比率は既に25%に達しています。日本国債はゆうちょ(中小金融機kジャン)とかんぽ(保険)の保有比率が高い事も特徴です。ゆうちょやかんぽは海外事業を展開していないので、バーセルの基準は適用されません。一見、日本とアメリカでBISの基準変更の影響は大差無い様に見えます。

しかし、問題は自国国債のリスクウェイトにあります。アメリカ国債の格付は(AA+)でリスクウェイトがゼロです。

一方(A+)~(A-)までの国債のリスクウェイとは20%となります。日本国債の格付けはフィッチが先日引き下げて(A)、ムーディーズが(A1=A+)、S&Pが(AA-)で(A+)の一つ上となっています。BISの基準変更で日本国債のリスクウェイとは20%とされる公算が大きいと思われます。

日本のみならず、南欧債や新興国国債市場から資金が炙り出され、AA+格でリスクウェイトゼロの米国債に流入させる為にBISは基準を見直すのかも知れません。


さらにボルガールールを厳格に適用した場合、米国の金融機関が保有する外国国債はリスク資産となる可能性が高まります。その結果、リスクゼロの米国債に資金還流が起こります。

こう考えると、BISの基準変更は、利上げに向けて金利上昇圧力が高まる米国債への援護射撃とも言えます。リーマンショック後、危機の震源地のアメリカでは無く、ギリシャ危機でユーロと南欧債に大きなストレスが掛りましたが、米国債やドルに圧力が掛る時、金融資本家達は生贄を見つけて米国債やドルを防衛してきたとも言えます。


■ 次なるブラックスワンに成りえる国債のリスク資産分類をBISが強硬するのか ■

リーマンショック以降、世界の国債金利は下がり続けています。これは国債金利がリスクに見合わない金利となっている事を意味しています。特に日本国債や南欧債に歪がたまっています。

BISがバーセルの基準見直しを持ち出してきたのは、国債金利の低下に警鐘を発する為だとも考えられます。リーマンショックの危機を脱しつつある中で、国債に集中してしまいた「低金利のリスク」を分散化し、リスク市場に資金を流す事を目的にしているのかも知れません。

ただ、仮にBISが自国国債をリスク資産としするバーセルの基準変更を強行した場合、歪がたまった国債市場に大きな影響を与える事は確実です。日本や南欧諸国の国債金利がぴょんと跳ね上がる可能性は否定出来ません。

次なるブラックスワンに成りうる自国国債のリスク資産化をBISが強硬するのなら、そこには国際金融資本家達の深遠な思惑が潜んでいるはずです。


「BISには気を付けろ!!」・・・15年前に痛手を負った日本の銀行マン達は、きっと戦々恐々としているかも知れません。


セル・イン・メイで日本株は小休止?・・・9月にゆうちょ・かんぽで爆上げしたらサヨナラ?

2015-04-29 10:27:00 | 時事/金融危機
 

■ 今年はセル・イン・メイ となるのか? ■

4月円高、株安と予測しましたが、なんだか円高も中途半端に終わり、株価も2万円代をキープしていて大外れでしたね。選挙が終わっても官製相場は続いています。

5月は株が売られ易い月です。ヘッジファンドの決済を前に利確売りが集中するからです。日本でも2013年5月に株価の大幅調整が有りました。

アベノミクスの匂いを感知したヘッジファンドは2012年後半から日本株を買い始めました。金融緩和が確実視される中、円安によって日本株が上昇する事を予測したからです。そして彼らは為替相場も円安を予見して動きました。そして5月で利確しました。

■ 少し調整してから「ゆうちょ」と「かんぽ」の上場に合わせて再上昇 ■

現在の日本株高は、公的、準公的資金、そして外国人投資家によって演出された相場です。日経平均が2万円を超えても、個人投資家は積極的にはなれず、出来高は低迷しています。

統一地方選挙も終わったので、そろそろ株高演出も一休みして、次の上昇へのエネルギーを溜めるのかも知れません。次はズバリ、「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の上場。ここに向けて相場の上昇を仕掛け、最高のタイミングで株式を売り出したいハズ。

■ アメリカの利上げのタイミング次第の日本株市場 ■

ちゅうちょ、かんぽが上場を果たすと、往年の投資家の皆さんの脳裏には「NTT株公開」の苦い経験が過るはずです。その頃、日本の経済が大幅に改善しているとは思えないので、「株価だけの高値」が悪目立ちし始めるかと思います。

ここで一気に売りに転じる個人投資家と海外勢に対して、公的、準公的資金が立ち向かうのかどうか・・・。

あまり当たらない人力株価予測。まあ、今回も外れるかな?


これはアフリカの国では無い、アメリカの光景だ・・・過剰な資本主義の末路

2015-04-29 04:33:00 | 時事/金融危機
 

■ ヒャッハー!!となったボルチモアの黒人達 ■

アメリカ南部、メリーランド州のボルチモアで暴動が発生しました。黒人が警官に逮捕された後、脊椎を損傷して死亡した事件の抗議デモが暴動に発展したものです。

ボルチモアは元々治安の悪い街だそうで、暴動は一時手の付けられない状況になり、暴徒はパトカーを破壊し、略奪をし、建物や車に放火し、警官隊と衝突しました。警官の中には重傷者も出ていて、非常事態宣言が発令され、州軍が鎮圧に出動する事態に発展しています。
















■ ネット系メディアは臨場感が高い ■


アメリカ大手ニュースの報道は、ヘリコプターからの空撮か、黒人記者が騒動を遠からレポートする内容が多いのですが、ネット系のニュースサイトは暴動の中に入って、黒人サイドからの視点の報道もしていて臨場感があります。





http://www.huffingtonpost.com/2015/04/28/baltimore-protests_n_7160006.html


「どこのイスラム国だよ?!」と思わせる光景ですが、これが現在のボルチモアの、そして近い未来のアメリカ各地の光景なのです。

■ 行き過ぎた資本主義は「自壊」する ■


リーマンショック以降、アメリカを始め世界の国々で貧富の差が拡大しています。中央銀行による金融緩和は、金融システムを延命させると同時に、資産を持つ者をますます豊かにしました。一方でバブル崩壊によって縮小した実態経済は容易には回復せず、貧しい者の所得は低下し、あるいは失業から抜け出せない人達が大勢います。

アメリカの雇用統計を見ていると雇用は回復していますが、平均所得は低下し、就職を諦めた人達が雇用統計からこぼれ落ちてゆきます。

こういった不満はマグマの様に次第にエネルギーを溜め、「警官による黒人の殺害」という事件が起きる度に暴動が発生し、そしてその規模は次第にエスカレートしています。

昨年8月にもミズリー州ファーガソンで大規模な黒人暴動が起きましたが、これらの暴動の映像が繰り返しTVニュースで流れる度に、貧困層の中に怒りのエネルギーが高まって行くのでしょう。

多分、「次なる金融危機」が発生したならば、アメリカ各地で似た様な暴動が発生し、もしデモ鎮圧で複数の死者が出る様な事態になれば、警官隊と暴徒との間の銃撃戦が起こるかも知れません。そうなれば、全米各地が内戦状態になり、米国債やドルの信用が一気に失われる事になるかも知れません。

なんだかNEVADAブログの煽り記事の様な書き方ではありますが、アメリカの警察は軍の中古の装甲車などで重武装化しており、逮捕状を取らなくても逮捕が可能になるNDDA法(国防権限法)の施行など、アメリカ国内では大規模な暴動を想定した準備が着々と進められています。

議会制民主主義や選挙といった民主主義の「形式」は本当の民主主義を実現する事はできませんが、古来、革命や暴動の発生においてのみ、国民は一時的に国家に勝利し、民主主義を実現しています。

マルクスが指摘した通り、資本主義の末路は貧富の差の拡大による「暴動」による国家崩壊ですが、フランス革命の時代から「中東の春」に至るまで、何度となく繰り返されています。

■ 2017年問題 ■

最近、欧米を中心に話題になっているのが「2017年問題」です。

1987年  ブラックマンデー
1997年  ITバブルの崩壊
2007年  サブプライムショック

見事に10年周期でバブル崩壊を繰り返すアメリカですが、次なる危機は「2017年」に起こるのでは無いか・・・そう囁かれ始めています。


私達は平和な時代に慣れ過ぎてしまい、国家と国民が対立する状況など想像も付きませんが、自由と民主主義の国アメリカでは、一部の国民が「ヒャッハー!!」となる事で、国民の本当の力を示す日が来るのかも知れません。

個人は国家に逆らえない・・・映画『イミテーション・ゲーム』

2015-04-27 11:40:00 | 映画
 


映画『イミテーション・ゲーム』より

■ これは観るしか無い!! ■

先週の金曜日、仕事と飲み会の間が中途半端に開いてしまいました。新宿で映画でも見ようと検索すると武蔵野館で『イミテーション・ゲーム』という作品がピッタリの時間。

武蔵野館なら面白い映画かも知れないと足を運びますが、「アカデミー賞8部門ノミネート」の文字がポスターに・・・。こりゃダメだ・・・そう思った時、「エニグマと天才数学者の秘密」というキャッチコピーが目に留まりした。

あれ、あれ、これってアラン・チューリングの話しではないですか。これは観るしかありません。

■ コンピューターの原型を作った天才数学者 ■

チューリングの名を知っているのはコンピューターの歴史に詳しい方でしょう。現在のコンピューターは「ノイマン型コンピューター」と呼ばれています。彼は実際に稼働可能なコンピューターの原型を作った事で後世に名を残し、現代ではコンピューターの父と呼ばれています。

一方、チューリングはより数学的概念の仮想機械としての「コンピューター」の論文を発表した事で注目を集めます。自動計算機のアルゴリズムを簡単な概念的機械で実現する「チューリングマシン」の論文は、コンピューターの最初のイメージであったとも言えます。その後のノイマン型の研究は「いかにチューリングマシンを実際の機械で実現するか」という挑戦だったのです。

■ 第二次世界大戦中、ナチスの解読不能の暗号『エニグマ』に挑んだ天才 ■

第二次世界大戦中、チューリングは海軍でナチスドイツの解読不能と言われた暗号『エニグマ』の解読に挑みます。『エニグマ』は自動暗号生成装置で毎日コードが変わってしまうため、連合軍はこれを解読する事が出来ませんでした。

暗号の組み合わせは天文学的数字になり100人がかりで解読しても20万年掛る・・そう映画の中では説明されています。

言語学者、数学化、チェスのチャンピオンなどがこの難問に挑みますが、チューリングは機械によってこの暗号を解読する方法を選択します。これこそが現代のコンピューターの原型であったとも言えます。無数の文字の配列の中から規則性を見つけ出し、暗号の中から文字のコードを見つけ出す事は現代のコンピューター技術を使えば容易い事です。ただ、当時はコンピューターは存在せず、暗号解読のアルゴリズムを実行する機械を1から開発する必要があったのです。


wikipediaより

上の写真はチューリングがエニグマ解読の為に作り上げた「bombe」のレプリカです。実際にはこのマシンをしても「エニグマ」は短時間には解読出来ず、思案にくれたチューリングが特定の配列を解読から除く事で、解読時間を短縮する事に成功します。

■ 秘密にされた「エニグマ解読成功」 ■

イギリス海軍がチューリングの研究によってエニグマを解読していた事は長い間極秘にされていました。20年経って、当時の公文書が公開された事で、この事実が明らかになります。

チューリングらは終戦の2年前にエニグマを解読していましたが、この事がドイツに知れればエニグマの構造を変えられ、再び暗号解読は不可能になってしまいます。そこでチューリングや海軍(MI6)は、解読した暗号の中から連合軍の勝利に貢献する可能性の高い作戦を抽出し、そして暗号解読以外の方法でその作戦を察知したとの偽情報を流します。

エニグマの解読はUボートによる海上輸送への攻撃を減らす事で連合国に大きく貢献します。ドイツは度重なるUボート作戦の失敗をイギリス軍のレーダー性能の向上が原因と考えていおた様ですが、エニグマが破れらていた事も薄々気づいていた様です。ドイツ軍の暗号電文に「イギリス軍に確認したか?」などのジョークが含まれるようになったと言われています。

そうして2年の間、イギリス海軍や政府は「国民の命の取捨選択」を繰り返す事で、暗号を解読し続け、ついにドイツ軍に勝利したのです。

■ 国家の前に国民の生命は統計のパラメーターに等しい ■

『イミテーション・ゲーム』はエニグマ解読に情熱を燃やした人達と、一人の悲運な天才数学者のヒューマンドラマとして、とても良く出来た映画です。派手な爆発シーンなんて無くても、映画はこんなにもスリリングなものなのかと再認識させられる傑作です。

その意味で、この映画がアカデミー賞を取る事の意味は極めて大きい。私も多いに期待しています。

一方、この映画の伝える本当の怖さとは「国家と個人」の関係性です。イギリス政府は「エニグマ解読」の「極秘」を守る為に、救える命を見殺しにする事も有りました。国家のとっては国民の命も統計上のパラメーターとして扱われる時が有るのです。

そして、エニグマ解読の功労者達も、任務の後はその偉業を発表する事も許されず、多分、一生国家の監視下で生活したと思われます。当時、ソ連との対立が激化していたので、優秀な人材にソ連のスパイが接触する事は十分に考えられる事でした。彼らがエニグマについて口外した時は、死罪になります。

国民は往々にして「国家が国民を守っている」と錯覚していますが、国家が守っているのは「国家というシステム」であって「国民」では無いのかも知れません。平常時には隠れていうこの原則は、戦争の様な非常時に躊躇無く行使されます。

「兵役拒否による投獄」などが良い例で、国民の権利などは国家の前には無いに等しいのです。この絶対の事実こそが、現代の国家を国家たらしめているとも言えます。


近代国民国家とは徴税権と警察権において国民を支配する存在なのです。ただ、システムとしてそれは上手く機能しており、他の統治や非統治の手法に勝っているので、国家は現在も地球上の存在し続けています。




私などは妄想が膨らんでしまう内容の映画ですが、ゴールデンウィーク中もいくつかの映画館でロングランしていると思います。素晴らし作品ですので、ご興味の有る方は劇場へGO!!




<追記>

チューリングの名は、人口知能と人間の違いを見分ける『チューリング・テスト』で広く知られています。

いくつかの簡単な質問をAIと人間にした場合、その返答に不自然さがあればAIだと判断されるテスト方法です。

現代のAIは自律思考する訳では無く、頂戴なデータベースと応答のアルゴリズムによって擬似的な人格を作り出す事しか出来ません。

ただ、今後研究が進む中で、自律思考する進化したAIが生まれる可能性は低くありません。そして、その様な「自我を持つ機械」が開発された時、私達は人間以外の自我に初めて対峙する事となるのです。

『パラサイトイヴ』でベストセラー作家となった瀬名秀明『デカルトの密室』は、チューリングテストの様子を具体的に描く意欲作です。

世界最高峰のSF、いや推理小説と呼ぶに相応しい・・・瀬名秀明「デカルトの密室」(2012.07.12 人力でGO)



読みやすい本では有りませんが、現代SFの最高水準に有る一冊としてお勧めです。ゴールデンウィークの時間潰しに如何でしょうか?

200Kmロングライド & 観光 & 花見 & 温泉

2015-04-23 05:55:00 | 自転車/マラソン
 

先週の日曜日、3月以来のロングライドに出かけてきました。距離は200Km。

久ぶりの休日の晴れということもあり、自転車乗り達が大勢繰り出していました。国道で後ろから抜いていった揃いのジャージのチームを追走していたら、信号でチギられちゃいました・・・・ここ何処?どうやら茂原街道に入っているみたいで、本日は外房をぐるっと回って鴨川を目指します。

外房の国道は道幅が狭く、車と並走で気を遣います。頭がボーとして来た頃、御宿に到着。ここまで80Km、メーター読みでAV27.6Km/h。足売り切れ・・・チーーーン。

ここからは観光。




御宿の砂浜に立つラクダ・・・名曲『月の砂漠』のモチーフになったのがこの御宿海岸です。「海岸にラクダはねぇーワ」って思ってましたが、意外にマッチしていてビックリ。




勝浦へは勝浦半島の海沿いをグルリと回って行きます。左へ左へと分かれ道を選択していれば間違いないのですが、あまりに細い道なので不安になって直進すると海から離れてしまいます。そんな、こんなで何度かミスコースしました、河津漁港は遠洋基地の勝浦港とは違い地元の小さな漁港です。



勝浦の街並みには古い民家や民宿が点在しています。街が発展したのは江戸時代からだそうです。かつてはカツオの水揚げ日本一でしたが、最近は焼津に抜かれています。やはり直接東名高速道路にアクセス出来る焼津には勝てない様です。



勝浦は飛騨高山、輪島と並ぶ「日本三大朝市」が有名です。江戸時代から続く朝市です。11時までで終了してしまうようで、11時30分に残っている屋台は数軒でした。カツオがドーンと一本売り!!



「おせん転がし」の辺りでポツリポツリと雨が降ってきました。・・・予報、外れたな・・・。



一時前に鴨川に到着。『アド街っく天国』でも紹介されていた定食屋の『オリーヴ』でお昼にします。ものすごりボリュームで値段は手ごろ。サーファーや地元民御用達の店だそうです。



とりあえず定番の日替わり定食650円を注文。焼肉定食でしたが、小皿が沢山付いてきます。さながら学生街の定食屋の様。周りの人達は刺身定食やエビフライ定食を注文していますが、なんなんだ・・・このボリュームとリーズナブルなお値段は・・・。



海を見て少し休憩してから帰路に付きます。先ずは清澄山ヒルクライム。ちょと食後の運動にしてはキツイですが、後半が緩斜面になるので、前半のヘアピンまで頑張れば良い楽なコースです。一気に登ってそのまま下りに突入。

この時期、南房総の山里の庭先にはミツバツツジに彩られています。新緑の一歩手前の山間の風景に華やかなピンク色が良く映えます。





曲がりくねった山道を走ると、薪を積み上げた民家に行き当たります。風呂でも炊くのでしょうか?



上の写真の草地は「川回し」で作られた水田でした。この峠の小さな売店を営むお爺さんのご先祖様が、江戸時代に近隣の農家4軒と共同で小櫃川の支流の水をトンネルで迂回させ、水の引いた川底を田んぼにしました。この時代は新しく開墾した田んぼの収穫は年貢が掛けられなかったので、各地で新田開発が活発になり米の生産量が拡大した時期です。房総の山間の村でも農民達が必至に田んぼを開墾したのでしょう。

今では高齢化が進み、深い谷を降りて農作業する事が不可能になっています。先祖が開墾した田んぼは、今では耕作放棄地になっています。田があった頃は多く生息していたモリアオガエルも今では減ってしまったそうです。

・・・そういえば、峠の売店、最近開いていません。梅干しが絶品なのですが・・・。



この時期、山の中に入ると山桜が芽吹いたばかりの柔らかい新緑にやさしい色を添えています。小櫃川の断崖にも山桜が咲いていました。





鴨川市と君津市の市境にある白岩温泉。関東では珍しい火山性で無い「硫黄泉」です。海底の堆積物が元になっていますが、湯の色はほのかに黄色みがかります。温泉通の間では「名湯」として有名の様ですが、辺鄙な所にあるので人の姿は有りません・・・。露天風呂から満天の星空が眺められるので、ぜひ泊で来たい温泉宿です。

ちなみに、千葉県で一番古い露天風呂で、昭和30年代に住民の手で作られたそうです。



白岩温泉のちょっと先の八重桜。見事しか言いようが有りません。


実は養老渓谷と鴨川を繋ぐ「養老清澄ライン(県道)」は、昨年4月のトンネル崩落以来、一年余り通行止めになっており、今年4月にようやく復旧しました。小櫃川沿いの自然が満喫できる素晴らしコースですが、道幅が狭いので車とすれ違う時には道を譲らなければなりません。でも、そんな時、眼下の川面を眺めていると、瑠璃色のカワセミが飛んでいったりするので、自ずとペースもゆっくりになります。スピードを出して走るには、あまりに勿体無い風景です。



そして、亀山湖方面との分かれ道の手前にあるのが「七里川温泉」。昨年春、『アド街っく天国』で紹介されてから客が増えたそうです。ここも「硫黄泉」さらに「源泉かけ流し」です。温泉通をうならせる名湯だとか。

温泉でさっぱりした後には「ちょっと一杯」と行きたい所ですが、ぐっと我慢して残り50Kmを走ます。日没頃に八幡宿駅に到着です。

ほぼ200Kmを、観光 & 花見 & 温泉 を堪能して走るノンビリ・ライドでした。