人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

会社は誰のもの?・・・外国人株主

2011-01-31 12:07:00 | 時事/金融危機


■ 会社は誰の物? ■

古くからある設問に「会社は誰の物」かというのがあります。
経済学的には「株主の物」というのが正解なのかもしれません。

日本やヨーロッパなどでは、会社は「従業員の物」でもあり、「社会全体の物」でもあるという概念も成り立ちます。(成り立ちました)

■ 米国化する日本企業 ■

株主にはいくつかのパターンがあります。

① 長期保有・・・企業の安定した成長に投資するタイプ
② 配当目当て・・ヘッジファンドなど、高配当や資産売却を目的とした保有
③ 投機的保有・・株の売買を目的とする

かつて日本は金融を中心に株を持ち合い、安定した企業経営が行われていました。
しかし、米国の構造改革要望書による持合の解消や、バブル崩壊後の間接金融の鈍化により、株式市場や社債市場で直接資金を集める企業も増えています。

こうした流れの中で、海外勢が日本企業の株式の大口の保有者となるケースも多くなりました。外国人投資家の中には、株主の権利を声高に主張する企業も多く、経営者の目は従業員よりも株主に向くようになりました。

■ 日本の企業? 海外の企業? ■

最近の円高で海外勢の日本株売りが加速し、企業の外国人持株比率は低下していますが、それでも多くの企業の株主が外国人である事に、皆さんはどれだけお気づきでしょうか?

自動車
日産自動車 69.3%
ヤマハ発動機 44.6%
スズキ 42.7%
マツダ 42.2%

金融
あおぞら銀行 64.2%
富士火災 63.5%
大  証 63.4%
新生銀行 51.6%
オリクス 49.9%
大和証券 40.2%
三井住友FG 38.0%

製造業
中外製薬 70.5%
HOYA 53.1%
花王 46.6%
キャノン 44.2%
レナウン 43.2%
ソニー 42.5%
任天堂 40.1%
富士フィルム 38.1%

不動産
三井不動産 47.1%
三菱地所 39.4%

自動車産業は多額の開発費を規模で賄う為に、早期から海外企業との系列化か進行した産業です。日産はルノー、スズキはフォルクスワーゲン、マツダはフォードの傘下に入っています。

金融業は経営危機後に欧米の資本が入ってきた企業と、BIS規制による自己資本増強の過程で増資をした結果、海外資本比率が高まった企業とに大別されるでしょう。

製造業は、技術力のある優良企業に対する投資が多いのでしょうが、レナウンの様に中国に身売りする様な新たなパターンも生まれています。

三井不動産や三菱地所も外国人株主比率が高いようです。

■ 株主配当が国外に流出 ■

外国人投資家はカネも出しますが、配当金としてのカネも受け取ります。
中にはハゲタカ・ファンドの様に、経営に強い影響力を持つ投資家もいます。

株主への利益の還元率が、純利益の30%~50%だとすると、海外株主比率の高い会社では、企業の利益の15~25%が海外に流出する事になります。

外国人投資家はリターンにシビアですから、人件費を削減しても、配当の充実を望みます。

2000年以降の円安時代に輸出企業は空前の利益を達成しますが、その間、雇用は非正規雇用に置き換えられるなど、徹底した合理化が行われ、利益の拡大が図られました。

そして、多くの利益が配当という形で国外に流出しました。

■ 萎む内需 ■

日本の長期低迷は、内需の縮小にその要因があります。

1) 輸出企業の利益が配当として海外に流出
2) 企業は内部保留を増やすが雇用は増やさない
3) 非正規雇用の増大で労働単価が下落する

国内の富を純粋に増やす事が出来るのは、1次産業である農林水産業と、資源輸出、そして加工貿易による輸出、さらに金融があります。

農林水産業の生産額が増えていない現状で、日本が豊かになる為には加工貿易で外貨を稼ぐ事は必須の条件です。

ところが、輸出額が増えても、利益が国内に還元しなければ、内需が萎んでしまいます。

■ 銀行の貸し渋りが招いた富の流出 ■

1) 日本のバブルを崩壊させる
2) 日本株を安く手に入れる
3) BISの規定で銀行の貸し出し能力を削ぐ
4) 増資によって従来株主の権利を希釈化させる
5) 経営の合理化を推進し、人件費を削減する
6) 配当をガッチリ頂く。

アメリカは第二次世界大戦後、日本に多額の投資をしをしますが、投資には回収が必要です。

バブル以降の日本の不況は、日本が投資家に刈り取られて、収穫されているからに他なりません。

イッツァ・マジック・・・日本の格下げ

2011-01-28 03:12:00 | 時事/金融危機



イラストシリーズの第3弾です。

■ 格下げなんて怖くない ■

アメリカの格付け会社「S&P」が昨日日本国債の格付けをAAからAA-に引き下げました。

ニュースを中心に、日本国債危機がクローズアップされ、増税と財政緊縮に国民の目が向かざるを得なくなってきました。

私は日本国債の危機をずっと説いてきましたが、しかし、日本国債の暴落が日本の国内事情によって発生するとは決して考えていません。

① 日本国債は、95%が国内でファイナンスされている
② 海外勢が5%の国債を売り浴びせても、国内勢が買い支える

以上の様な理由から、投機的な売り浴びせに対して、日本国債は非常に安定しています。
もし、海外勢が日本国債下落で一儲けを企んでいるのなら、今回も失敗に終わるでしょう。

■ ドルを支える円 ■

現在ドルを支えているのは円と元です。

アメリカはまだまだ延命するつもりですので、命脈の日本や中国の混乱は望みません。

突然、破産宣告して世界をあっと言わせるのはアメリカでなければならないのです。

日本の財政破綻ごときでアメリカが連鎖破綻したら、アメリカの面子が立ちません。

■ 増税の口実 ■

今回の菅内閣は明らかに増税内閣です。

外圧を利用して、「国民の意見を増税止む無し」としたいのでしょう。

しかし、仮に5%の消費税が10%になっても日本の財政に対しては焼け石に水です。

一方、お金に印は付いていませんから、増税分の浮いた予算、例えば温存された特別会計の資金がアメリカに渡っても、国民は知る由もありません。

■ 自分の事は棚上げ ■

「醜い財政」と言えば、アメリカの方が日本の上を行きます。

GDP比こそ日本ほど大きくありませんが、アメリカの赤字は巧妙に粉飾されて、いろいろな所に隠されています。

州や郡や市などの地方のレベルでは、既に夕張市以下の自治体がゴロゴロしています。


アメリカは自国国債を売るためには、他国の国債の格下げな平気でします。
だって、S&Pやムーディーズはアメリカの会社ですから。

■ 危機は海外から ■

確かに日本の財政は中長期的には破綻が確実です。

しかし、慢性疾患の患者がなかなか死なない様に、
日本は不健康ながらも生きながらえる事は可能です。

しかし、慢性疾患の患者も急変する事があります。
「感染症」です。

ウィルスは海外からやってきます。

アメリカ発の金融危機第二段なのか?
中国バブルの崩壊なのか?
アメリカのデフォルトなのか?

とにかく、日本国債の命運は、海外に握られています。
そして、日本だけが元気に生き残る事は決してありません。

ROCKの落し物・・・浅井健一

2011-01-26 03:48:00 | 音楽


■ ロックがカッコ良かった頃 ■

革ジャン、バイク、タバコ、ROCK・・・。

こんな単純な関係が成り立っていたのは、何時の頃までだったのでしょうか?
少なくとも、私がROCKを聞く様になった頃は
第二期ブリティッシュ・イノヴェーションと呼ばれた時代でしたから、
骨のあるROCKなんてものは、ほぼ全滅していました。

革ジャン、バイク、タバコ、ROCK・・・。
こんなダウンタウン・ブギ・ウギ・バンドみたいなのがカッコ良かったのは
何時の頃までだったのでしょうか?

■ オバカ?? ■

「BLANKEY JET CITY」を友人から借りたのは、もう15年以上前だったでしょうか?
確か「幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする」というアルバムでした。

何てオバカな歌詞なんだろう・・・これが私の浅井健一の第一印象でした。

普通、あり得ないでしょう。
「港区にある、クリーム色のビル。そこに住み着いた、一組のカップル。・・・」
なんて歌詞で始まるROCKなんて・・・、「港区」だよ・・。「横浜」ならまだしも・・・。

でも、これが妙に耳について離れないまま15年以上が経ちました。

その間、椎名リンゴが「丸の内サディスティック」の中で
「そしたら、ベンジー、私をグレッチでぶって~」
なんて歌っていたりしたので、
私にとって「BLANKEY JET CITY」と浅井健一はずっと気になる存在でした。
(ベンジーは浅井健一のあだ名、グレッチは愛用のギター)

■ アニメ「BLEACH」のエンディング ■

私はオタクなので仕事の合間に、パソコンでアニメを見る事を無二の喜びとしていますが、
昨年、「BLEACH」のエンディングに流れた浅井健一の「Mad Surfer」にはヤラレました。

そもそも「BLEACH」のオープンングやエンディングは昔からカッコイイのですが、
昨年はスキャンダルの「少女S]を採用したOPといい、
浅井健一の「Mad Surfer」といい、完全にノックアウトでした。


■ オバカな歌詞は昇華していた ■ 

浅井健一の最新アルバム「Sphinx Rose」は、とにかくカッコイイ。

オバカな歌詞はそのままなんだけど

「杏仁豆腐、タピオカ、ショートケーク、your smile・・・」

なんて歌詞をカッコ良く歌えてしまうのは、
世界広しと言えども、浅井健一だけでしょう。

これを、カラオケで私が歌ったら、すげーダサイんだろーなぁ・・・・。

「Do You have Chees Bageurger?
 Super Slow Waitress.
 Heart Breke Rescue Go!」

と歌われた日には、「お前、中学英語かぁ~」と突っ込みたくなるんだけれど、
でもカッコイイ。

「室外機、腐ってるCooler
 よどんだ 風を出してる。
 誰かショットガンで打ち抜いておくれ。
 見返りは 空の青」

「室外機」で始まる歌っていうのは、「港区」ぐらいショックです・・・。
でもカッコイイ・・・。

一度、浅井健一に感染してしまうと、
オバカとしか思えなかった歌詞も、
彼なりの美学なんだと納得してしまうから、不思議。

椎名林檎でなくても、「グレッチでぶって」欲しくなるから・・・不思議。


ところで、私のiPod中には、浅井健一の後にT-rexがたまたま続いて入っているのですが、
浅井健一からT-rexにアルバムが変わった事に気付かずに聞いてしまうんです・・・。

浅井健一・・・マーク・ボラン・・・・どっちもカッコイイなぁ~。


最近TVで斉藤和義「ずっと好きだったんだぜ」を見る度に、
浅井健一を思い浮かべてしまいます。
この二人の間にある、決して埋める事の出来ない差って何なのでしょう・・。

現代においてはダサさを突き抜けた先にしか、
ROCKは成立しないんでしょうね。



■ ここからは「良い子のお友達」の時間 ■


きっと直ぐに削除されてしまうのでしょうが、


「BLEACH」 第一期OP オレンジレンジ 「アスタリスク」 
http://www.youtube.com/watch?v=Y3-mTHG0SAU&feature=related
これは今見ても、凄いセンスですね。

「BLEACH」 OP スキャンダル 「少女S」
http://www.youtube.com/watch?v=L7fiGVmuowM
第一期のOPを越えましたね。

「BLEACH」 ED 浅井健一 「Mad Surfer」
http://www.youtube.com/watch?v=46HGJrWRNHY&feature=fvw

ところで昨年はアニメソングは豊作だったですね。

「ナルト」 ED オレスカバンド 「自転車」
http://www.youtube.com/watch?v=xk8kGyaTSC0&feature=related
何年かぶりに「ナルト」を見たら、EDが何と「オレスカバンド」でした。
昔「オレスカ」のデビューアルバムをジャケ買いしてしまいました・・・。
それ以来、気になるギャルバンドですが、この曲はベストじゃないですか。
ちなみに私は「ひなた派」です。このEDは涙もんです。


「鋼の錬金術師」  スキマスイッチ「ゴールデンタイムラバー」
http://www.youtube.com/watch?v=0iAF8TJAqp4&ob=av2el
この曲はカッコ良すぎですね。
ところで、スキマスイッチのアフロって・・・。


「君に届け」 ED Chara 「片思い」
http://www.youtube.com/watch?v=dt_IvtMXFNw
久々のCharaは、やっぱりCharaでした。
スワローテイルの「Yen Town Band」は今聞いてもイイですね。

良い子の時間、終了。

「そんな事は起こるはずが無い」・・・生物はリスクを正確に認識出来ない

2011-01-24 17:10:00 | 時事/金融危機



金融危機の第二波は来るのか? ・・・・ 来るかもしれないし、来ないかもしれない

米国財政は破綻するのか?   ・・・・ 破綻するかもしれないし、しないかもしれない

ドルは崩壊するのか?     ・・・・ 崩壊するかもしれないし、しないかもしれない

日本の財政は破綻するのか?  ・・・・ 破綻するかもしれないし、しないかもしれない

中国バブルは崩壊するのか?  ・・・・ 崩壊するかもしれないし、しないかもしれない

・・・危機はいつも未来に存在します。

■ そんな事が起こる訳が無い ■

上に書かれたリスクは、時間軸を長く取れば、全て50%の確立で発生しうるリスクです。

しかし、人間はリスクを低く認識する習性があります。
これは生物に備わった本能とも言えます。


リスクを正確に認識すると、生物は生きていけません。
ネズミが巣穴を出ると、外的に捕食されるリスクが高まります。
多くのネズミがこうして、タカやフクロウやキツネの餌になります。

しかし、ネズミがリスクを正確に理解したら巣穴から出る事が出来ません。
巣穴に篭ったままのネズミを待ち受けるのは、餓死という新たなリスクです。

この様に、生物はリスクを実際よりも低く見積もる事で、生存を続けてきました。

「そんな事は起こるはずは無い」という思考は、人間の本能に支配されています。

■ 「そんな事」が起きたらどうするの? ■

アメリカのメガバンクが破綻すれば、世界の金融機関が破綻する。

オバマがある日突然、アメリカのデフォルトを宣言する。

イスラエルが突然イランを攻撃する。

日曜日の新聞に、預金封鎖の告知がされる。

・・・「そんな事は起こるはずが無い」と思っています。

銀行の破綻は突然やって来ます(リーマンは突然破綻しました)。

ニクソンは突然、ドルの金の兌換を停止しました。

日本軍は突然、真珠湾を攻撃しました。

戦後の日本の預金封鎖は、日曜日の新聞で突然告示されました。

「そんな事は起こるはず無い」から、起きた時の効果は絶大です。
過去の出来事が全てを物語っています。

■ 預金が危ない? ■

株やFXなどに手を出していないから大丈夫?
そんな事はありません。
銀行預金も、郵便貯金も、個人年金も、全てリスク資産です。

「ペイオフがあるから大丈夫!!」現在の預金保険機構の積立金では、メガバンク一行だけでも救う事は出来ません。

大きな危機が発生した時、人々は銀行や郵便局の窓口に殺到するでしょう。
しかし、日本の夜の間に、NYやロンドンで危機が発生したら、翌朝、シャッターを開ける銀行があるでしょうか?

■ 日本国債が危ない ■

明確な危機が表面化し、人々が預金を引き出し意思を示した時、日本国債は暴落します。
金利の上昇は、日本の財政を直撃します。

■ ローンは固定で、運用は流動で ■

資産運用の鉄則は、「ローンは固定で、運用は流動」です。
危機が表面化すれば、金利は上昇します。
住宅ローンの2.5%の金利が安く感じる時代がやってきます。

日本が財政破綻を回避する為には、大幅なインフレ政策が必要です。
固定金利で借りている住宅ローンの返済は、インフレで所得が上昇すれば、相対的に安くなります。
一方、賃貸住宅の家賃は、インフレに連動して上昇していきます。

■ 最大の流動性を確保 ■

普通預金はいつでも引き出せますから、ある程度の流動性を確保しています。
しかし、預金封鎖をされては、その流動性も無意味です。

最大の流動性は、「現金」です。
しかし、それとて、新券発行という政府の裏ワザを前には無力です。


■ だって、そんな危機は来ないかも知れないじゃない? ■

「だって、そんな危機は来ないかも知れないじゃない?」
家内に保険の解約や、定期の解約の話をすると、こう反論されます。

「その時は皆同じよ。戦後は皆貧しかったのよ」
実家は母は、老人はそんな難しい事は分からないと言います。

では、もし「危機」が訪れたらどうするの?

人間は来ないかもしれない危機よりも、目先の1%の金利が大事に思える生き物です。

確実に言える事は、誰もが資産保全を意識した時に、生き残れる金融機関は存在しないという事です。

その時は、銀行のシャッターは開く事はありません。



・・・皆さんはリスクヘッジをされているでしょうか?


ステルスインフレ②・・・世界は一つ

2011-01-24 15:46:00 | 時事/金融危機


■ 消えた「円」の不思議? ■

上のグラフは日本のマネタリーベースとマネーストック(マネーサプライ)の関係です。

私は経済学者ではありませんから、あまり詳しくは説明出来ませんが、

マネタリーベース = 日銀の通貨供給量
マネーストック  = 市中に出回る通貨と預金の総量

と簡単に定義する事が出来ます。

リフレ論者達は、「日銀が通貨を大量に供給してマネタリーベースを拡大すれば、国内に通貨が供給されて景気は上向く」と論じています。

しかし、グラフを見れば明確な様に、2000年代に入って日銀はゼロ金利政策を採用し、大量の「円」を供給してきましたが、日本のマネーストックは増えていません。

では、供給された「円」は何処へ行ったのでしょうか?

■ 円キャリートレードで国外に流出した円 ■

日銀のゼロ金利政策で潤沢に供給された「円」は「円キャリー・トレード」として、海外に流出しました。

① 日銀が低金利(ゼロ金利)の円を供給
② 「円」を買って、「外貨」に交換する
③ 外貨運用で利ざやを稼ぐ。(国債運用でも5%程度の金利が得られる)
④ 稼いだ「外貨」を市場で安く調達した「円」に交換する
⑤ 「円」を返済し、運用益と為替差益を得る

こうして海外に「円」が流出するので、日銀がマネタリーベースを拡大しても、国内のマネーストックは一向に増えませんでした。

■ ゼロ金利がもたらした円安 ■

大量に供給された「円」は為替市場でだぶ付く事になり、「円」は実力以上に値下がりします。

① ゼロ金利政策で大量に「円」が供給され「円安」を誘導する
② 「円安」によって輸出が拡大する。
③ 貿易黒字が拡大する

2000年代初頭に国内の不景気とは対照的に、輸出企業が市場最高益を更新していった背景には日銀のゼロ金利政策の恩恵がありました。

■ 「財政赤字の拡大」を可能にする「貿易黒字」 ■

「ドーマの定義」というのがあります。
 「名目GDPの成長率 > 国債金利」であれば財政は破綻しない」という定理です。

家計でも所得が増えれば、借り入れ上限金額も増やせます。国家でも同様であるという理論です。

① 国債金利は限りなくゼロに近い
② 輸出によって名目GDPが成長する
③ 「ドーマの定義」によって、財政破綻が回避できる。


尤も、私はかなり胡散臭い理論に思えます。何故なら、家計では「稼ぐ人=返済する人」ですが、国家では稼ぐのは国民で借金するのは国家です。「国民資産=国の資産」という考え方無くしては成り立ちません。

国家が財政破綻しそうになったら国民資産を没収しなければ「ドーマの定義」は成り立ちません。

いずれにしても、日銀は巧みな金利操作によって、日本の財政赤字拡大を可能にしました。

■ 円はアメリカでバブルを作った ■

この時期、アメリカは盛んに日本に金融緩和を促しました。

① 低コストで「円」を手に入れる
② 日本からの輸入物価を安く抑え、米国内の消費を支える

いずれにしても、ゼロ金利政策は日本とアメリカの双方にメリットがありました。

しかし、過剰に供給された「円」はアメリカで住宅バブルを成長させていきます。

① 住宅価格が上昇する
② アメリカのインフレ率が経済の実体以上に上昇する(バブルの生成)
③ 米国金利が高止まりする
④ 世界の資金が米国に還流する

この様に、日本の不景気を背景としたゼロ金利政策が、アメリカでマッチポンプの様にバブルを膨らめました。

■ 日銀の金利引き上げが招いたリーマンショック ■

日銀は2006年7月にゼロ金利政策を解除します。

これによって「円キャリートレード」の流れが逆転します。アメリカの住宅市場から急激に資金が流出してゆきました。

「住宅価格は永遠に上昇し続ける」というアメリカ人の幻想が崩壊した瞬間です。

① 日銀のゼロ金利政策解除
② 円キャリートレードの逆転
③ 住宅市場からの資金流出
④ 住宅価格の下落

サブプライムローンは元々ローンの返済能力の無い人々が、住宅価格の将来的な値上がりを担保に組んだローンです。低金利で供給される「円」が無ければ、こんなリスクの高いローンは生まれなかったでしょう。住宅価格下落は、最も返済能力に劣るサブプライム層のローンを直撃します。

① 住宅価格が下落する
② 住宅価格の値上がりを見越した「ローンの借り換え」が出来なくなる
③ サブプライム層のローンから破綻し始める

サブプライムローンはよりリスクの低いローンと一緒にごった煮にされ、MBSとしてさらに切り売りされていまいた。

① MBSや派生的金融商品にサブプライムローンが混入
② MBSを中心に債権価格が暴落
③ 金融機関に債務超過の疑いが発生する
④ リーマンブラザーズが生贄となり、世界は金融機関を税金で救済する

東洋の島国の不景気が、世界の不景気の引き金を引いた瞬間です。

■ ドルキャリートレード ■



上のグラフはリーマンショック後の「ドル」と「ユーロ」と「円」のマネタリーベースの推移です。

ドルは二倍に膨れ上がっているのに対し、円は増えていません。

円高・ドル安を経済の観点から難しく説明するよりも、このグラフを見れば一目瞭然です。
ドルはリーマンショック後、1/2に減価しているのです。

低金利で津波の様に供給されるドルは、日本の場合と同様、マネーストックには結び付かず、ドルキャリートレードが発生します。

① ドルが津波の様にばら撒かれる
② 新興国市場に投資される
③ コモディティー市場(資源・食料・石油)に投資される
④ 債権市場に投資される
⑤ 株式市場に投資される

この様に低金利で供給されるドルは、実体の無いバブルを生み出しています。

ダウ平均株価が1万ドルを回復したのも、アメリカ国債が買われ続けるのも、コモディテー市場が高騰するのも、全て偽りの回復です。

■ ステルス・インフレ ■

グローバル経済では、金融緩和政策は自国内よりもよりリターンの大きい市場に資金を供給する結果となります。

リーマンショック以降、世界に供給された莫大なマネーは、新興国やコモディテー市場でバブルを形成すると共に、本来価値が下がるはずの株や債権の価格を不当に吊り上げています。


これは、隠れたインフレ=ステルス・インフレです。

バーナンキは「インフレなど15分で潰して見せる」と豪語していますが、中国やブラジルで発生するインフレは15分では潰せません。

繋がった世界では、金融緩和政策は遠くで見えない危機を生み出すのです。