■ そうだ、温泉に行こう!! ■
前半と後半に真っ二つに分かれた今年のゴールデンウィーク。娘はバスケット部の練習なので家内と二人で何処かに行こうと計画しました。
夫婦二人で温泉なんて良いかなと思ったのですが、ただ温泉に入るだけでは面白くありません。ブログのネタになるように「人力的イベント」を何か組み合わせたい・・・。「自転車で巡る房総の温泉」というのも良いなと思ったのですが、家内は自転車に乗ると直ぐに「お尻が痛い!!」と苦情を言い出すので長距離は無理。
そこで考えたのが、養老渓谷まで電車で行って、そこから自転車で七里川温泉と亀山温泉を巡るコース。ルートラボで調べたら距離は15Km程度。標高差は137m。少し上り坂が連続しますが、きつくなったら自転車を押して歩けば良いだけ。
ただ、たった15Kmでは私はツマラナイ・・・。家内だけ輪行させて私は自宅から自走しようかと思いましたが、娘のミニベロを持ち上げたらロードバイクより重たい。10Kg以上ありそうです。これを抱えて駅のホームの上り下りは家内には無理そうです。そこで、私は家内と一緒に電車移動して、現地の移動は自転車の横を自分の足で走る事にします。何だか戦国時代の足軽兵の様ですが仕方ありません。
自転車は普段娘が乗っているミニベロにしました。コンポがシマノのSORAなので結構走りますが、さすがに10年間も酷使しているので、あちこちガタが来ています。良い機会なので、各所分解してグリースアップし、消耗パーツも全部取り替えました。タイヤの振れ取りもしたので、新品の走り心地に戻った感じ。
■ 小湊鉄道沿線はアートイベント開催中 ■
8時過ぎに新浦安を出て、五井で小湊鉄道に乗り換えれば10時過ぎには養老渓谷に到着する予定。実は途中、内房線と外房線を乗り間違えてヒヤリとしましたが、時間に少し余裕を見ていたので五井の乗り換えにギリギリで間に合いました。
車窓の景色は田植えの真っ最中。今年は4月に入ってから気温が低めなので例年より少し遅いかも知れません。
」
小湊鉄道は五井から上総中野を結ぶ私鉄のローカル線です。単線、ディーゼル、古い車両、古い駅舎と鉄道マニアの心をクスグル人気路線です。とにかく、徹底した合理化というか、新しい投資を一切しない事が功を奏して黒字を確保しています。この「何もやらない」事で、むしろ昔の風情が残っており、ドラマや映画のロケに使われたり、鉄道マニアを引きつけたりする稀有な路線です。
車内の天井には昔ながらの扇風機。ガードはスカスカで、今なら「指が入ったら怪我をするじゃないか!!」と言われそうな構造ですが、昔はこれで良かったんですよね。「扇風機に指を突っ込んで怪我するヤツが悪い」という当たり前の事が、当たり前として通用していた時代の遺物ですね。
駅の付帯施設も古いままで、何とも言えない「味」をかもし出しています。
丁度ICHIHARA ART FESTAというアートイベントが開催されていたので、それを目当ての乗客も多い様です。アートフェスタの入場券と乗り降り自由の1日乗車券のセットで\38,00です。アートフェスタの会場は駅周辺の廃校や古い家屋などです。小湊鉄道は1時間に1本程度しか走っていないので、各駅で降りて、フェスタの会場を見て、駅に戻る列車が来る、こんな感じで一日を楽しみます。地域振興に鉄道を活用する面白い試みです。
各駅にもオブジェが展示されていて、イベントの雰囲気を盛り上げています。
■ 上り坂はつらいよ ■
養老渓谷の駅で自転車を組み立てたら出発です。本日は暑いような日差しが照りつけます。ウグイスの囀りに混じって、キジのケーンケーーンという声も聞こえています。
養老渓谷温泉を過ぎると長い上り坂になりますが、家内もまだ元気一杯なので・・・ゆっくりと上ります。私があまりスピードを出して走ると、家内を置いてきぼりにしてしまうので、度々立ち止まっては家内が追いつくのを待ちます。
本日はトンネル内は歩道を走行します。
こちらは川のトンネル。これ、房総独特の「川回し」と呼ばれるトンネルです。柔らかい砂岩質の房総の山は、川によって侵食され易く、房総丘陵の川はどれも激しく蛇行しています。蛇行の頂点同士をトンネルを掘って結ぶと、蛇行していた元の川底は湿地となって新田開発が出来る様になります。こうして、江戸時代には川回しと呼ばれるトンネルが沢山掘られました。今やこうして苦労して開拓された田んぼも、耕作放棄地になっている所も少なく無いようです。
粟又の滝との別れ道からは、筒森峠までは長い直線の上り坂が続きます。既に満開の八重サクラを楽しむ余裕はありません。
そして、とうとう自転車を押し始めました。
この坂道、徐々に勾配がきつくなるので分からないのですが、実はトンネル手前で斜度は9%もあります。これ、結構キツイ坂です。
筒森峠のトンネルでようやく上りが終わります。ご苦労様。
■ 自転車の背中を押す ■
筒森トンネルを出て少し下ると、再び上りが始まります。下りでは元気な家内も・・・とうとう上りでは私が走りながら家内の背中を押します。自転車のロードレースでトラブルで停車した選手の再スタートで見られる光景ですね。
君津市との市境のトンネルを越えたら、七里川温泉はすぐそこです。良く頑張った!!
■ 満開の八重桜の下で露天風呂を満喫 ■
七里川(しちりがわ)温泉は山の中にポツンと一軒だけで建っています。、東京近辺では珍しい「単純硫黄泉」。透明な湯に湯の花がチラチラと舞う、知る人ぞ知る名湯です。温泉通の中には「千葉の別所温泉」と言う人までいます。沸かしてはいますが、「源泉掛け流し」です。
午前中とあって風呂は貸切状態。春の日差しの下、ウグイスの囀りを聴きながら、露天風呂を満喫しました。
室内のお風呂はこじんまりとしていますが、湯治場的な雰囲気を醸しだしています。
■ イノシシの肉を頂きました ■
七里川温泉の楽しみと言ったら囲炉裏。ロビーにも大広間にも囲炉裏が沢山あって、客は持ち込みの食材を炭火で焼いて食べる事が出来ます。飲み物だけ注文すればOK。その他には冷凍の干物や自分で焼く「焼きおにぎり」などを購入する事も出来ます。
私達夫婦が良さそうな囲炉裏を探していると、ホテルの修繕にいらしたオジサン達が「こっちの炭がいい感じだよ」と同席させてくれました。ビールを注文しようとしましたが、フロントには誰も居ません。オジサン達が、「奥の厨房に行かないとダメだよ」と言うので、厨房に行って注文を伝えます。
「ビールの大瓶下さい」
「そこの冷蔵庫から勝手に持ってって、栓抜きは上。コップは横にあるからさ」
このラフな感じな好きなんですよね。
ビール片手に隻に戻って来ると、家内はすっかりオジサン達と盛り上がっていています。
「オジサン、冷凍の干物ってどっちから焼けばいいの?」
「皮から、セクハラ!!」
いいね、この感じ・・・。
お世辞にもキレイとは言えない宿ですが、熱烈なファンが居るのはこういう雰囲気のおかげ。「俺は客だぞ!!」と怒る様な人は2度と来ないでしょう。
「今夜の客に出すいい肉だけどちょっとあげるよ」と、イノシシ肉をおすそ分けしていただきました。
「イノシシは若いメスじゃなきゃ美味しくないの。それも外側に脂が付いてるやつね。赤身だけのは良く売ってるけど、これは脂が付いてるからオイシイよ。若いメスだからね」
家内曰く・・・「こんなに美味しい肉食べたの初めて。脂がバターみたい」
頬っぺたが落ちそうでした。
そんなこんなで、ビール大瓶2本。生中1杯。キンメの開き。アユの干物。焼きおにぎりを堪能して、1時半頃、七里川温泉を出発します。
■ ビールが回ってきました ■
七里川温泉から亀山湖までは下り基調。でも、ビールを飲んで、温泉にも入った体はグダグダ状態。でも、酔って走るのはいつもの事。昔は終電を逃すと東京から20Kmくらい走っていました。酔っ払うと走るスイッチが入っちゃうんですよね。「家内からスーツと靴が磨り減るから止めてくれ」と怒られたものです。
小櫃川の支流ですが、川床は小石ではなくて平らな岩です。房総の川の川底はだいたいこんな感じです。侵食を受けやすい柔らかな岩なので、谷も深く、複雑な地形を形成しています。
順調に走って亀山湖に到着です。ここは水生植物園になっていますが、かつて設置された木道はボロボロで歩ける状態ではありません。
実は亀山湖は度々氾濫を繰り返す小櫃川を堰き止めて作ったダム湖です。確か昭和50年頃にダムが完成していますが、37軒の民家と田畑が湖底に沈みました。問題は先述した様に複雑に入り組んだ地形をダムにした為に、ダム本体の規模に比較して、整備すべき橋が異常に多い事です。
結果的に25本もの橋が作られました。ところが、この橋も老築化が進んでいます。前回来た時に通れた橋が通行止めとなっていました。ボルトが破損して危険なのだとか。この橋、通行止めになっても、すぐ横を国道の橋が通っているから、全然不便しません。元々、必要性が低いのです。
今後、日本のあちこちで、橋やトンネルが老朽化して行きます・・・。
■ 亀山温泉は黒い湯だった ■
久留里線の上総亀山駅に到着すると次の電車までは2時間以上あります。そこで、かねてから行ってみたかった「亀山温泉」に行ってみました。何故ココに来たかったというと、小学校時代に千葉県の地図帳を見ると、温泉マークはここにしか無かったからです。
亀山温泉は地下2000mから毎分600リットル自噴するヨウド泉です。昔の温泉宿は現在は湖底に沈んでいます。現在の建物は湖畔にありますが、結構大きなホテルです。ここで、入浴だけなら1千円です。
ヨウドや塩類を沢山含んだチョコレート色の温泉で、お肌はツルツルになります。待ち合わせの時間に少し遅れてロビーに現れた家内は、「5回も入っちゃった。だって、ここ気持いいんだもん。もう、お肌ツルツル」と言っていました。
「エー、又温泉に入るの?さっき入ったじゃん」って言ってたのは何処のどいつだ!!
■ ローカル線2本目は久留里線 ■
温泉でいい感じに時間を使ったので、上総亀山駅には直ぐに汽車が到着します。木更津から上総亀山を結ぶ久留里線はJRのローカル線です。元々の計画では大原と上総中野を結ぶ旧国鉄の「木原線」(現いすみ鉄道)と接続する予定でした。木原線の「木」は木更津の木。「原」は大原の原。しかし、計画は頓挫して木原線は上総中野で私鉄の小湊鉄道と接続しています。
久留里線を走る車両は比較的新しいのですが、電化されていなにのでディーゼル・ハイブリット車両が導入されています。きれいな緑と黄色の配色で、この車両が緑の田んぼや、黄色の菜の花畑の中を走る姿はなかなか絵になります。
久留里線も鉄道マニアには人気があります。車内には大きなカメラを首からぶら下げている鉄道マニアがチラホラ。
山間の段々になっている田んぼが、平面の広い田んぼになるにつれ、民家も増えて来ます。木更津に着く頃には日が暮れていました。
本日は、「ローカル線と自転車で行く房総の温泉」をお送りしました。家内も大満足だった様です。