■ 先進国の成長力の低下 ■
日本の貿易赤字が定常化しています。
短期的な原因は二つあります。
1) 原発停止によって天然ガスの輸入量が増大
2) 海外の消費が回復していないので円安でも輸出量が減っている
アベノミクスの支持者達は、上記の短期的理由に着目して、世界経済が回復すれば輸出も回復し、原発が再稼働すれば天然ガスの輸入量も減るから問題無いと主張するでしょう。
一方、歴史的に見れば先進国の製造業が衰退するのは避けられません。
同じ製品が出来るのならば、コストの安い国に創造設備が移転する事は止められないからです。
1) イギリスはかつての工業国であったが繊維産業は海外に移転した
2) アメリカもかつての工業国であったが、日本やドイツにその座を譲り渡した
工業が隆盛で加工貿易によって外貨が流入する時期は、貿易収支は大幅に黒字になります。同時にその様な時代は、国家のインフラ整備が盛んな時期に重なるので、内需も大幅に拡大します。
インフラ整備には財政出動が伴いますが、経済成長による税収の増加と高いインフレ率によって財政状態は良好に保たれます。
しかし、製造業が海外に流出し、さらには国内にさらなる生産性向上になる新規インフラ投資が少なくなるにつれて、経済は停滞を始めます。
1) 製造業の海外移転で貿易黒字が減少しやがて赤字が定着する
2) 新規公共事業による生産性の向上がゼロかマイナスに転じる
多くの先進国がこの様な経緯を辿って、低成長時代へと突入して来ました。
■ 製造業から金融業へのシフト ■
イギリスは大英帝国時代に世界中から富を簒奪します。
彼らはその富を金融という手段を用いて運用して来ました。
イギリスはアメリカを成長させる事による、アメリカを介して世界の富を集めるシステムを構築します。
アメリカの銀行の株を通して、アメリカの利益の上米を効率欲ピンハネする方法を編み出したのです。
アメリカは基軸通貨ドルの力を使って世界の富を集めています。
ドルはニクソンショック以降は単なる紙切れに過ぎませんが、人々の幻想によってその価値は保たれています。そしてFRBがドルを発行すれば、アメリカは世界中の物を買う事も出来ますし、世界中に投資する事も出来ます。
その代償として財政赤字が膨らみますが、その借用書としての米国債ですら、世界中で大人気です。
こうして、かつての覇権国家は、製造業が衰退した後も利益を確保する方法を生み出しています。
■ お金でお金を稼ぐのは効率が良い ■
製造業は生産を拡大する事で利益を拡大します。
その為には設備投資や雇用の拡大が必要で、資金を借りれば金利負担も生じます。
作った商品が思い通りの価格で全部売れる訳では無いので、損失も発生します。
この様に製造業が利益を上げるには大変な労力や計画性が必要です。
一方、お金でお金を稼ぐ方法は効率的です。
経済が安定して成長している国に投資すれば高い金利が得られます。
業績が確実に上昇する企業に投資しても、それなりの金利が得られます。
■ 見せかけのお金がお金を生む ■
資産(ストック)の美味しい所は、相場の上昇によって生まれる「見せかけの利益」がさらなる利益の源になる事です。
例えば保有する株価が上昇すれば資産総額は増大します。この「見かけ上増えた資産」と担保にさらにお金を借りて投資する事も出来ます。
土地も価値が上昇している時には担保価値が上昇するので銀行は沢山のお金を貸してくれます。
■ ストック経済はやがてバブル化して崩壊する ■
ところが相場が過熱すればいつかはバブルが弾けます。
ストックに依存した経済は、さらなる利益を求めて「架空の利益」を膨らめてゆきます。「架空の利益」とは実質的な価値に裏打ちされない利益です。
ストック市場の拡大速度は、実体経済の成長速度を大きく上回っていますから、どこかで限界に達すると実体経済の規模まで縮小します。これがバブルの崩壊です。
■ ストック市場の崩壊を資金供給で食い止めるのが量的緩和政策 ■
現在、世界の中央銀行が行っている量的緩和政策は、ストック市場の崩壊を資金供給によって強引に食い止める政策です。
ストック市場の価格は「見かけに価格」なので、危機が去れば元の「見かけの価格」に徐々に戻って行きます。量的緩和の目的は、紙くず同然になったMBSなどを政府や中央銀行が買い取ったり、銀行の損失を公的資金で補てんする事で、「見かけの価格」を維持する事です。
こうしてリーマンショックによって減少したストック市場の価格は、近年、リーマンショック前の水準かそれ以上に回復しています。
■ 実体経済の成長を犠牲にするストック市場 ■
近年問題なのは巨大化し過ぎたストック市場が実体経済本来使われるはずの資金を吸収してしまう問題です。
1) 人々が労働の対価となる賃金の一部を預金する
2) 銀行は金利が高い投資を選好する
3) 実体経済への投資より、資産市場での運用が高利回りならば資金は資産市場に集まる
4) 実体経済で必要な資金が不足するので、結果的に需要が圧迫される。
近年、先進国で問題となっているのは「潜在需要の不足」です。
本来、人々の物欲は再現が無いので、資金が実体経済で循環していれば、人々の旺盛な購買行動が経済を発展させます。
しかし、資金が資産市場に滞留すると、一部の資産家が資金を独占する為に一般の労働者の賃金が伸び悩む事になります。一部の資産家の消費出来るモノの量は限られていますので、富が資産家に集中すればする程、実体経済は停滞します。
■ 投資によって成長力の高い国が発展する ■
資産家は金利の高い投資を好みます。
成長が鈍った先進国よりも新興国の資金需要は旺盛なので、金利も当然高くなります。こうして本来国内で循環するはずの資金は、資産家や銀行の投資によって国外で運用されます。
先進国の経済成長率が低下する分だけ、新興国の経済が拡大します。
資産家や銀行は投資利益を国内に還元せず、新興国に再投資するので、新興国経済は過熱しながらも拡大を続けます。
■ 先進国の量的緩和は新興国を発展させている ■
FRBのテーパリングで新興国経済が最初にダメージを受けるのは、新興国経済を支えていう資金が量的緩和に供給されているからです。
一方、新興国の国民がせっせと働いて生み出した製品の多くは先進国の国民、特にアメリカ国民が買っています。
新興国には貿易黒字のドルが積み上がりので、外貨準備は米国債へと姿を変え、アメリカがさらなるドルを刷る手助けをする事になります。
■ 新興国の経済成長をドルを支えている ■
米国債の海外保有分の40%がコンスタントに日本と中国によって保有されています。
かつての新興国である日本と、現在の新興国である中国は、米国債とドルをせっせと買い支えています。
特に中国は為替をドルに緩やかにペッグさせている為、香港市場で大量のドルを買って元を売っています。
■ 日本は金融では損をしてばかり・・・ ■
日本の実体経済の成長が鈍化する中で、「貯金から投資」への変換を促したのが小泉政権でいした。
老人達は老後の資金を「投資信託」に投資する様になります。
その結果、利益を上げた人は居るでしょうか・・・・・。
多分、リーマンショックで皆さん損をしてしまいました。
世界はバブルを成長させたり、あるいは崩壊させたりしながら巨大な資金を生み出したり、消失させたりしています。
その過程で成長力の低い国の資金は、「投資」を通して成長力の高い国へと誘導されます。市場を拡大するにはある程度の資金が必要ですから、日本の老人の資金までもが「投資」として利用されます。
そして、バブルが弾ける直前に「相場を作った人達」は一足先に売りけ、巨大な利益を手にします。後には可哀そうな逃げ遅れた人達が残されます・・・・。
こうして、日本の老人の様な「小金持ち」の資金をも吸収しながら金融資本家達は巨大になり続け、日本の若者達は、「スカンピン」になった老人達を押し付けられる事になるのです。
アベノミクスはNISAによって、ささやかな庶民のお金までも投資市場に投げ込もうとしています。
確かに「お金でお金を稼ぐ」投資は儲かります。しかし、それは「見せかけの利益」である事が世界の真理です。
人々のささやかな欲望が、貧富の差を生み出している事に私達は気付いていません。そして最大の欺瞞は、中央銀行が失業率を金融緩和の理由にしている事です。金融緩和こそが貧困を生み出しているという歪みに気づくべきなのでしょう。
日銀の異次元緩和の生み出したものは、賃金の上昇無き物価上昇でした。要は、私達の実質賃金は下がったのです!!
韓国開発院(KDI)は日本の「失われた20年」を精密に診断し、反面教師とする提案を行ったようです。日本はバブル崩壊後、1992~2000年の9回にかけて124兆円の財政を投じ、景気浮揚に失敗した。日本は公共投資の53%を道路・港湾・空港に集中的に注ぎ込んだが。一方、限界生産性が高い情報技術(IT)や鉄道にかけた公共投資比重は10%にとどまった。日本の道路・港湾・空港の限界生産性は、IT・鉄道の5分の1だ。というもの。韓国も今、景気浮揚策として生産性の低いインフラに力を注いでいるのでは?と、いう事です。
※たしかにその一面はあったと思います。しかし、GDPが伸び悩んだ反面、低成長の経済のソフトランディングを可能としました。急激な離職、企業崩壊も免れました。海外進出と為替に左右されない経済体質、ジワジワと21世紀型の政治体制に移行しています。中国や韓国、新興国の発想は“数字での安定的な経済発展”です。失われた20年を自国で再現しないようにする提言ですが、一見経済成長をしていないと失われた!!などと、言っている発想がそもそも異常だと思います。この20年で日本国民は“やや賢く”なったのであり、この間の20年は今後の国政において決して無駄ではなかったと思うのです。経験していない国にはなかなか解らない事だと思います。
政府はインフレ課税と
消費税と言う名前の通貨の間引きが行われています。
「一万円札が10%短くなっているように見えませんか? 」
私は個人的には、日本はここ10年で世界の進歩から随
分と遅れてしまったという印象を受けています。
ネットやITの活用方法もそうですが、あらゆる分野でガ
ラパゴス化する事で、外資の侵入を拒む一方で、世界標
準との差が日本への投資を阻む結果を生んでいます。
日本は良くも悪くも現状維持を選択していますが、経常
赤字が定着すれば、それはジリ貧でしか無いと思うので
す。
自発的な変化を嫌う日本人はいつの時代も外圧や自己崩
壊による強制的変化によって変わって来ました。今回も
その舗装が発動されると思うのですが、その引き金は財
政破綻だと私は予想しています。それが10年後なのか
、或いは予想に反して5年後なのかは長期金利次第です
が、現状は量的緩和が長期金利を上手に抑制しています
。
一方で中央銀行による金融抑圧は民間の金利収益をも抑
制しますので経済の成長力を犠牲にします。
これら日本の現状であって、好んで成長していない訳で
はありません。日本の財政は景気回復で破綻してしまう
だけなのです。
限界を超えた財政赤字を維持する方法は金利上昇を抑制
する金融抑圧しかありません。
日本の財政赤字を相殺する様なインフレは2%などとい
うハンパなものでは無いはずで、日銀の掲げるインフレ
目標は財政ファイナンスの口実でしか無い様に思われま
す。
「失われた20年」は、安倍晋三総理大臣によって、本物となっ
たと思います。
そういう意味では歴史に名を残す方ですね。
私は、敢えて言えばジリヒン礼讚です。
真珠湾という選択肢よりかは、圧倒的にマシだと思うのです。
個人の選択としては「低成長」は素晴らしいと私も思い
ます。ただ、国家の選択となると別問題では無いでしょ
うか。
そもそも現在の成長率では10年の内には結局は福祉負
担から国家財政破綻か、現役世代への大増税に追い込ま
れてしまいます。余力のあるうちに自己改革すべきなの
ですが。それが出来ないから失われた20年が有る訳で
・・・。
会社員の方は「既得権」側なので変化を嫌う傾向にあり
ます。逃げ切れるなら逃げ切りたいと思うはずです。た
だ、既得権に在り着けない者達があまりに増えると社会
は急激に不安定化します。
日本の幕末がまさにそういう状況だったと思います。フ
ランス革命も似た様なものかと。
ただ、現在の革命は、無責任な暴力や略奪終わる可能性
が高いと思います。欧州の荒ぶる若者達を見ても、そこ
に希望や理想を見つける事は難しい・・・。
最後に頂いたベーシックインカムに関するコメント。自
分のコメントを添削しようと思って、間違って消してし
まいました。申し訳ありません。もし宜しければもう父
度投稿して下さい。
ベーシックインカムはフラットタックスや税率の高い付
加価値税の補完として存在すると思います。目的は税制
の簡素化と行政コストの削減。
生活保護など煩雑で恣意性の高い制度をベーシックイン
カムに一元化する事で行政コストを軽減し、さらに税制
上の不公平を是正する目的があるのかと。
ただ、ベーシックインカムなどは国内の再配分の問題で
あって、国全体が貧しくなる場合には、弱者の生活はま
すます悪くなります。
では、累進性の高いかつての税制が良いかと言えば、勤
労意欲が低下したり、高額所得者の海外移住を助長する
様に思われます。
結局、グローバル化の時代には、人・物・金は国境を軽
々と越えてしまうので、魅力の無い国はこれらが流失し
て衰退速度を速めます。
「現状維持」が不可能になっているのが現在の日本で、
経常収支の赤字化がそれを端的に表しているのではない
でしょうか?
特に日本の様に高齢者や生産性の低い地方などを多く抱
えている国が衰退期に入ると加速度的に経済は縮小して
財政がさらに悪化して行きます。これを止める手だてを
現状は誰も思いつきません。
日銀の財政ファイナンスで時間を稼いでいる間に何等か
の対策が必要なのですが・・・
たしか、大博打を打つならベーシックインカム+消費税5割が良い
、とコメントしました。
この国は、70数年前にもジリヒンを辛抱しきれず、戦争という大
博打を打ちましたが、それが無謀な博打だってことは当時のひと
びとも充分に認識していた。にもかかわらず、それを実行した。
現代も同じことが進行しています。
同じ大博打なら、破壊的な方法で借金をチャラにするのではなく
、たとえば財務省や厚労省を解消し、体質を改善し低成長に甘ん
じる生活を目指すべきだというのが私の主張、ということになる
でしょうか。
ベーシックインカムについては、おっしゃるような負の面も多く
ありますが、正の面もあるでしょう。そこは有る意味、実験する
しかない。ええ、私の主張も無茶苦茶ですが、それでも現状進行
している奈落への「道行き」よりは、全然有望だとの認識です。
ソフトランディングが良いか、ハードランディングが良
い間・・・当然、ソフトランディングを人々は希望する
はずですね。それが現在の日本の状況です。
一方で、現在の世界経済に潜在するリスクを見れば分か
る通り、大規模な金融緩和や財政出動でバブル崩壊の影
響を緩和しても、その根源が改善されない限り、危機は
規模を大きくしながらほぼ10年周期で発生します。
日銀の異次元緩和に意味があるとすれば、日本の一人負
けを阻止する事で、結果的には米国債や世界経済への悪
影響を防いでいるという事では無いでしょうか。
明らかな財政ファイナンスである異次元緩和に世界の他
の国が一応の理解を示しているのは、日本経済の崩壊が
世界に与える影響が現状では非常に大きいらかではない
でしょうか。
一方で、米国債やドルにもしもの事が起きれば世界全体
は道ずれにならざるを得ず、日本とて例外ではありませ
ん。むしろ米国債を大量に保有する日本の外貨準備が一
気に消し飛ぶ事もあり得ます。
私は以前より日本の財政維持に関してあまり興味があり
ませんが、それは次なる危機も再びアメリカ発で発生す
ると信じているからです。
それまでは、日本は一人で先に躓かない程度の政治・経
済運営しか選択肢は有りませんし、アベノミクスの異次
元緩和も予想した程の危機も効果も発揮しませんでした
。
問題は次なる経済危機がリーマンショックの規模や影響
力をはるかに上回った場合、世界が戦争という選択肢を
選ばないかという一点に尽きます。
かつて経済の失敗が何度となく戦争を招いて来た様に、
ショックドクトリンとしての戦争が選択された場合、平
和憲法を持つ日本とて無関係では居られないのではない
でしょうか。
安倍政権に感じる危機感は、実は集団的自衛権の確立に
よって日本が好まざる戦争に引きずり込まれる事への心
配です。そして、右傾化を強める世論は、中国が尖閣へ
の行動を起せば、容易に集団的自衛権の確立を選択する
可能性があります。
杞憂だと思うのですが・・・「歴史は繰り返す」という
のも世界の真理の一つである訳で・・・。
はたして、現在の日本の劣化した民主主義が、国民のヒ
ステリックな行動によってかつての過ちを繰り返すので
はないかと私も心配しています。