『105度』では椅子作り、今回は靴作り。いずれも職人を目指す中学生を主人公にしている。
そして謎のこのタイトルは『靴ノ往来堂』のことで、昔からあるお店の看板が右から左に書かれてあるから、左から読むとこうなる。しかも1段ではなく3段に分かれているからややこしい。これはとても落ち着いたタッチの小説で特別なお話の展開はない。普通にあり得そうな話をさらりとしたタッチで綴っていく。中学2年生の女の子が主人 . . . 本文を読む
水丸さんが亡くなってもうすぐ10年になるのか、と感慨に耽る。(まだ9年だけど)この新刊は晩年に書かれたエッセイにイラスト、俳句をセットにしたもの。睦月から始まり師走まで。12章からなる。東京のさまざまな場所を歩いて描いた(書いた)。思い出を共にして。特別な場所ではなく、なんでもない街角散歩。
娘が東京で暮らしてから、毎年何度か行くようになって、結構さまざまな場所を歩いているから、 . . . 本文を読む
前田哲監督も怒濤の快進撃中。『すべては海に流れる』(あんなに素敵な映画なのに、興行的には失敗したし、それだけでなく、わけのわからない輩が酷評しているし)に続く新作が公開された。今度はコメディ時代劇だ。浅田次郎原作で、今話題の『らんまん』神木隆之介が主演している。実はあまり期待してなかったのだが、これがまさかの傑作で、途中から何度も涙が出てしまった。笑って泣けて感動する、そんな凄い映画なのだ。主人公 . . . 本文を読む
11の短編からなる。最初の作品『海』がその全体像を伝える。一艘の小舟でこの世界が終わった後の世界をたったひとり旅する者(本の表紙の絵には熊がそこには描かれている)は生命が絶えた静かな海を渡り、やがて陸に出る。廃墟の街。生き物の姿はない。彼は図書館に行き着く。たった1冊の母国語で書かれた本を手にする。読み終えた後、再び海に戻り、持ち帰ったある限りの本を海に流す、沈める。不思議だけど納得する行為だ。も . . . 本文を読む