この映画はとても気になっていた。でも、わざわざ見るのはなぁ、とも思うし。でも、えいやぁ、と借りてきた。昨年同時に2本、地味に公開されていた。アメリカでは大ヒットしたから、すぐに続編が作られたのだろう。しかし、日本ではすぐには公開しなかった。(2013年作品)それくらいにためらいがあったということか。大作ではない。低予算のB級アクション映画だ、とも言える。だが、この扱う問題はかなり際どい。アメリカ映画はこういうのが好きだ。彼らは人殺しが大好き。だからみんな銃を手放さない、とそこまでいう気はないけど、そんなことをジョークで言えるくらいに、際どい。日本ではまるでヒットしない『ハンガーゲーム』はアメリカでは特大ヒットとなる。これも、同じだ。
もちろん、アメリカを批判するのではない。いろんなことがかなり微妙なことは誰でもわかるだろう。たとえば、『ハンガーゲーム』より前に日本では既に『バトルロワイヤル』が作られている。(この2本の映画の酷似は明らかだろう)それだけではない。この『パージ』以前に日本映画では『リアル鬼ごっこ』が何本も作られている。そんなふうに考えると、日本人とアメリカ人ではどちらが残酷か?
相変わらずイーサン・ホークはこういう微妙な題材の映画にすぐ飛び付く。独特の嗅覚を持つ。彼の選択は面白いから好き。安全圏で仕事をしないのがいい。だが、今回はハズレ。この映画は惜しいところで、B級レベルに留まる。
ここで描かれる怖さは、普遍性に至らない。ただのアイデアでしかない。作品世界を広げられなかったのが失敗の原因だろう。それは家から出ないからではない。1年に1日だけ殺人が合法化される社会、という設定にリアリティを与えられなかったことが問題なのだ。そんなことで、犯罪が激減するはずもない。ストレスにはガス抜きが必要で、というのはわかるけど、そのためのシステムとしてこれはあまりに安易だ。この映画が描くべき問題はまずそこだったはず。いくらアホなアメリカの政治家でもこんなシステムを合法化しない。ありえない、ということが、ありえる、と思えるとき、恐怖が生まれる。ドキュメンタリータッチは正解だが、それだけでは映画は成り立たない。