自宅でドニー・イエン最新作特集を勝手に挙行する。それにしてもこの2本の大作映画におけるドニーはあまりに精彩を欠く。CGを駆使したアクション映画ではバリバリの肉体派の彼を必要としないからだ。合成でなんでも出来てしまうし、たとえ過激なスタントを生で彼が演じても、それすら合成による加工に見えてしまい、興ざめしてしまうからだ。だからジャッキー・チェンはこういうタイプの映画には出ない。
2本ともがっかりの映画で、こんなことなら他の作品にすればよかった、とも思うけど、中国映画界が総力を挙げて挑んだ映画における彼を目撃するのは悪くはないことだと思い、納得する。未見の(劇場公開された新作の)もう少しいつものタイプのアクション映画も何本かはある。でも、こういうエポック作品は後学のため必要なものだ、と思うことにした。(何が後学やら)
2本ともシリアスが似合う彼にコミカルを演じさせている。それもまたどうだかなぁ、とは思う。2本ともドニーである必要性はゼロなのに、ここに彼はいる。なぜか?
答えは簡単だ。彼が大スターだからである。アクションや演技を必要としないシーンでは、そこにスターがいるだけで映画は引き締まることとなる。そんな理由で彼はこの2本の中国映画3D超大作のセンターを張る。そして本国で大ヒットを飛ばすことで使命を全うすることとなる。
それにしても凡庸で何一つ取り柄のない映画である。こういうのも、今の日本ではちゃんと公開されたり、DVDになる。ソフトの乱発から娯楽映画の敷居がとても低くなったのだ。マニアにとってはそれはとても好ましいことで、僕たちドニーファンはこんなくだらない映画でも見る。
『モンキーマジック』なんか、チョウ・ユンファやアーロン・クロックなんかが出ているのだ。本国では200億円を稼ぎ出したその年の№1ヒット作、ということだ。初歩的な3D技術を駆使して、単純に楽しめる。ただ、全編合成だらけで、ペラペラの映像はあまりに安っぽく、見ていてまったく映画の世界に入り込めない。何事もほどほどにするほうがよい、ということだ。それにしてもほぼ被り物のドニーの孫悟空は痛々しい。
その点、『アイスマン』のほうが、まだ見やすい。タイムスリップもので、お話にはまるで仕掛けがない単純さはどうか、と思うけど。それなりにドニー・アクションは炸裂するし、見ている分には楽しめないこともない。でも、なぁ、なんだけど。