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前作の『あつい胸さわぎ』再演を見逃したから、久しぶりのiakuだ。その間、横山さんは第一作の小説が出版されたり、『あつい胸さわぎ』が映画化されたりと大車輪の大活躍。終演後、久々にお話も出来て楽しかった。
今回のiakuは岸田國士と横山拓也のコラボ企画。ふたりの『葉桜』を並べた。静と動。朗読と演劇。昔と今。演出は横山さんではなく、彼の信頼するパートナー上田一軒。変わらないものを提示するふたりの作家の作品を、同じくふたりの役者(林英世、松原由希子)を介して見せてくれる。
久しぶりの上田演出のiaku作品を堪能する。しかも、僕が見た回は横山、上田によるアフタートークがオマケに付いて(役者のふたりも交えて)いた。上田さんは役者でもあるから、舞台に立つとアフタートークでも楽しい。
前半の朗読はリーディング公演というより、テキストを手にしているが、劇に近い。一転、後半は横山作品なのに、ハイテンション。岸田作品との落差が楽しい。敢えて対比を狙ったのか。30分から40分という短編と中編の間くらいの微妙なスケールがいい。このサイズだから可能な芝居。
岸田作品のさりげない切なさをさらりと描いた後一転しての『あたしら葉桜』のドタバタもまた切ない。母と娘が、しばしの別れを前にして向き合う。取り留めのない会話から、母娘だからこそ通じ合うものが、見えてくる。女性同士の恋愛ということをスパイスにして、さらりと同性愛の困難な状況も描かれる。無理せず、丁寧に今の気分が描かれるのがいい。気合いの入った大作もいいけど、こういう小品もいいなぁと思う。