久々のNGRである。(前回は旅行に行っていて残念ながら見ることができなかった)久しぶりの浦部作品を堪能した。今回まず、舞台美術に注目。初めて今井弘に依頼した。すっきりした空間は今までのNGRとはまるで違う。明るい。だが、お話の方は暗い。そのアンビバレントが今回のアプローチ。
これは図書館を舞台にした作品だけど、図書館の内部は描かれない。1階の外。フリースペースが舞台となる。図書館からの帰り、しばし休憩していくための屋外にあるオープンスペースだ。喫煙は禁止だが、頻繁に吸い殻が落ちている。誰かが夜間にここで喫煙しているのだろうか。ここは図書館の施設だが、建物側からだけでなく、反対側からも入ることができる。ここはWi-Fiがつながるから便利。ほっと一息つく空間。
ここに集まってくる図書館帰りの人たちやなんとなく休憩に来る人の交わす会話劇。この開かれた空間で、なぜか心の闇が明かされていく。隠すべきものが平然と明かされていく不条理。明るく開放的な場所だから、反対に心を開いてしまうのか。開けっぴろげで明るい場所に広がる闇の世界。浦部さんはいつもの浦部さんではなく、ダークサイドの裏浦部を提示してくる。性を扱うのも初めてではないか。
3人の女たちの会話から始まる。海外での売春旅行から夫の浮気を察知する。なんとなくの噂話をきっかけに気づく。主婦たちの雑談。自らの過去を語る。もとAV女優とそのストーカー。過去に性的な奉仕をするコンパニオンをしていた図書館員。そこにつけ込む男。
なんだろう。図書館を舞台にした話というパッケージングから遠く離れたお話が展開していく。過去から逃れるためにここにいる。さらには、パンを踏んだ報いってなんだろう? 知らない間に犯す罪。彼らの過去と未来。密かにこの場所で、彼女たちが自分と向き合う時間。浦部さんが描く新しい一面。