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映画・演劇のレビュー

『BAD LANDS バッド・ランズ』

2023-10-03 18:41:00 | 映画

原田眞人が監督・脚本・プロデュースした最新作。安藤サクラと山田涼介が特殊詐欺を生業とする姉弟役を演じたクライムサスペンス映画。こんな作品が作られるって嬉しい。しかもB級映画ではなく堂々たる大作。上映時間も2時間23分。全く飽きさせない。ドキドキがラストまで持続して最後はサラッとカタルシス。安藤サクラがほぼ全編出突っ張り。山田涼介は最初30分は出ない。しかも、その冒頭の30分が凄い。特殊詐欺の現場のドキュメントが描かれる。「3塁コーチ」の安藤と、そのクルーVS警察が大阪市内を縦横に駆け巡る。タイトルの『バッドランズ』がカッコよく出るまでのかなり長いシーンだ。(30分というのは僕の体感で実質は20分くらいか?)

アバンタイトルでここまでするか? しかも、そこでは西成のディープな空間がこれでもか、と描かれる。気合い入りまくり。緊張感が持続する。ここまでだけで1本の映画を見た気分。でもお話はもちろんここから始まる。姉と弟の逃亡劇。

余談だが、突劇金魚のサリngROCKと山田蟲男が重要な役で出ている。関西の小劇場界ではピカイチの集団のツートップが、主役の2人と入れ替え可能なくらいのポジションで共演するなんて、夢にも思わなかったから、映画を見ながらひとり盛り上がってしまった。同時に、南河内万歳一座の鴨鈴女と内藤裕敬も出ている。もちろん生瀬勝久。彼が元そとばこまちの座長をしていたなんてことは今ではもうあまり知られていないけど。ということで、これは、関西の小劇場から凄い役者たちがかなりの重要な役で参加している映画でもあるのだ。

さて、映画である。原田眞人は作り方によってはB級映画にもなる作品を大作なのに細部にこだわるマニアックな作品に仕上げる。役者への拘りもその一環だ。初めに安藤サクラありき。彼女の魅力をここまで引き出した映画は今までなかったのではないか。

東京から大阪にやって来て、ここを自分の庭にしているアウトロー。圧倒的な強さではなく、頭のよさと人柄で周りを惹きつけ、まさかの逃亡を完遂する手腕。ラストで動物園前から天王寺まで走っていく姿が清々しい。彼女はこのままこの後、関空からジャカルタまで走っていくんだ。(もちろん飛行機に乗っていくけど)


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