『フランダースの犬』の日本版なのだが、そこにとどまらない。ラストの思いもしない展開には感動した。ネロとパトラッシュが死ぬシーンで終わらせない。そこでは終わらない。その先を見せなくては納得しないぞ、という覚悟は心地よい。今、このお話をする意義をそこに設定したのか、と感心する。
戦後すぐ、焼け野原となった日本を舞台にして、1匹の犬と少年、祖父の生きた貧しいけど、豊かな時間。オリジナルの設定を踏襲し、そこに日本の戦後を重ねたドラマ作りは巧みだ。
作者のテーマが明確で、生きるということをこういうふうにとらえるのか、と感心する。いろんな意味でこれはうますぎる。でも、そこが鼻に付かない。この単純なお話に納得する。こんなつらい話なのに、そこから目を背けることはできない。しっかりと受け止めなくては、と思わせる。
少年の純粋さに心打たれる。こんないいひとはいないだろ、なんて思わない。こんないいひとがいるのだ。そして、出来ることならみんながこんなであればいい。でも、現実はそうじゃない。とんでもない人たちがたくさんいる。理不尽なことばかりだ。読みながら、これはもう『火垂るの墓』かい、と突っ込みをいれたくなるような悲惨さなのだが、それでも先を読まずにはいられない。
ラストには救いがある。悲劇には終わらせないという確かな覚悟がある。その先をちゃんと描くことでこれは『フランダースの犬』で終わらせないのだ。未来はある。