今はこういう青春映画が作られる。一時期はやったキラキラ青春映画はすたれた。なのに、東映は懲りずに作る。東映はなぜか音楽をテーマに据えた高校生による「学園もの」も作る。散々作られた少女マンガを原作にした恋愛ものではなく。もちろん東宝のまねをしてその手の映画も作ったけど、まるでヒットしない。だから『キセキ』を当てた実績に則り、こういう映画に手を出す。そしてまた失敗する。今年は『愛唄』に続いての興行的敗北。昔、ヒット曲をモチーフにした映画が量産されていたこともあった。70年代くらいからはそれも廃れた。そんな時代の趨勢の中、(まぁ、そんな言い方は大袈裟か)今だにこんな映画を作り、番線に乗せる。コケる。
少しハードな内容も組み込んだ高校生の日常を描く映画は観客の支持を得ないから、興業的には惨敗をするのは目に見えている。なのに作り続けるのは使命感、というわけでもない。しかも、ノー・スターによる作品で、全くどの客層にもアピールしない。
沖縄を舞台にしてフェンス越しの友情を描くのだが、なんだか煮え切らない。米軍基地で暮らすアメリカ人の少女と、地元の高校生の交流が描かれる。だけど、こちらはサブストーリー扱いだ。基地問題に踏み込むのならもう少し描き方があるのではないか。しかも、お話のメインはあくまでもバンド活動のほうで、事故で死んだ仲間の遺志を受け継いで自分たちの歌を歌うこと、というよくあるパターンだ。
悪い映画ではないのだが、これではどこにもアピールしない。2時間3分というこの手の映画としては少し長い尺数なのは、きっと伝えたいことがたくさんあったからだろう。だけど、それは伝わりきらない。見終えたとき、すべてが中途半端な印象が残る。意欲的な試みではあるだけにもったいない。