『人を食った話』は田舎町の取調室を舞台にして自由自在の老婆と東京からやってきた検事によるマイペースのやりとりを描く短編作品。最後までそのタッチは崩さない。そして、いつのまにか彼女のペースに乗せられてしまう。なんのひねりもない小品だけど、その素朴さがいい。へんにストーリー展開で仕掛けると、あざとくなる。このくらいのさりげなさがちょうどいいのかもしれない。
15分の休憩をはさんで2本目は『すももの木』。こちらもシンプルな中編。戦死した息子の恋人のところに数十年前に死んでいる老夫婦がやってくる。ずっと独身を通しているその恋人のところにいろんな人がやってきて、彼女をかき回そうとするのだけど、彼女の想いはずっと変らない。そんな彼女を見て死者である老人たちはなんだかうれしい。終盤老夫婦の姿が見えてきた恋人と、老人たちのやりとりが微笑ましい。もう少し、ドラマのほうにメリハリがあってもよかった気もする、そうすることで笑いと緊張が生まれて変化ができる。いかんせん話が単調すぎる。フラットな芝居で少しもの足りない。
ただ、2本位共通することは、この単調さで、もしかしたらそれこそが作り手のねらいだったのかもしれない。さらりとしたタッチで40分、60分の芝居を流れるように見せること。無理せずに、小さな話を小さなままに提示する。そんな自然体の良さも感じた。高齢者の役者たちが、ひょうひょうと演じている。その軽やかさ。なんだか好ましい。舞台に立つという事の楽しさが伝わってくる。