習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

上杉 那郎『おもひで屋』

2009-10-28 23:33:38 | その他
 表紙のジャケットに魅かれて読み始めたのだが、タイトルはインパクトが弱いし、少し心配もしたが、ここまで予感が的中するとは。

 読みながらこれは駄目だわ、と思った。安っぽい作り方をしている。安易なドラマは底が抜けているから、少し読めばわかる。19年前にタイムスリップして、自分が生まれる前の両親に何があったのか、を知る、だなんて手垢のついたお話を平気で書ける無神経ぶりも凄いが、それならそれで新機軸でも、あるいは「設定なんかどうでもよいぞ」と思わせるくらいの『何か』でもあればまだしも。ここにはなんもないではないか!

 でも、何もない。ここまで拙いと、読んでいて反対に最後まで読まずにはいられなくなったほどだ。最後まで読んで納得がいくとか、感動するとか、これまた安直なことが帯に書いてあったから素直に騙されたのだが。

 こういう話はそこそこ書ければけっこうツボに嵌まる場合もある。うまく映画にでもしたら監督の才能によっては面白いものになる可能性はある。読み終えた感想としては、それほど酷くもないし、まぁここまでぼろ糞に言うほどではないのだが、この手の作品には傑作が多いからどうしても点が辛くなる。しかも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をここまで意識するのなら、あの映画を超える仕掛けくらいは用意して欲しい。あの映画のオマージュですらない。世間ではこういうのをパクリと言う。

 両親の謎を解明し、2人がなぜこんなことになったのかがわかっても、それだけ。

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