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映画・演劇のレビュー

『相談』他4本

2025-03-14 17:52:00 | 映画
昨日の3本が面白かっただけに、(予定を変更して今日も見に来た)期待したのだが残念ながら5本とも昨日の作品には及ばない。

午前中に見た2本にはガッカリした。矢口史靖、鈴木卓爾の『ONE PIECE』のコンセプトを引き継ぐ『TEN EASY PIECES』だが、これはワンシーンワンカット1作品5分10話からなるオムニバス。10人の監督による作品。いずれもコントのレベルにしかならない。5分は厳しい。

『不完全なわたし』も真面目な映画だが、それ以上のものはない。主人公の女性が障害者雇用枠で入社して来た男に心惹かれていく過程が描かれる。上から目線での付き合いから始まって、やがて彼を頼ってしまう自分の弱さと対峙していく姿が描かれる。彼女の中にある葛藤がもう少し上手く描けたならいい映画になったのだが、残念だ。

午後の3本はいずれもとても上手い。だけど後一歩が足りない。張曜元監督作品『相談』は西岡徳馬、阿部力主演。有名俳優を使って力の籠った作品に仕上げた。ふたりが(もちろん手を抜くことなく)力演する。北海道ロケによる緊張感のある30分を堪能した。だけど(だから)30分は物足りない。残留孤児だったこと。プライドを賭けた戦い。息子との確執。さまざまな要因が呼応する中、彼が何を選択するのか、が描かれる。仕事を失いたくないけど、プライドを棄てるわけにはいかない。日本に帰って来て辛酸を舐めてきた。生活は苦しいし年老いたけど自分の力で生きる。演じた西岡徳馬が素晴らしい。だけどあまりに尺が短くて(上映時間は30分)彼の内面のドラマまでは描き切れない。

ウイグル出身の大迫夢希監督の自伝的映画『ヤキシムシス』も惜しい。こちらも同じである。39分で描けることには限界がある。これは短編用の題材ではないのだろう。だけど短編として作る以上この長さで完結できるように描く必要がある。そのためにはピンポイントで見せることが大事。詰め込み過ぎると消化不良を起こす。日本で暮らすウイグル人女性の結婚を彼女の置かれた状況の中で描く。映画監督としての立ち位置、故郷の家族とのこと、優しい彼、さまざまなことをこの長さになんとか上手く収めたものの、それでもいろんなことが漏れてしまう。

その点、木村慎監督『真アジ』は潔い。24分で見せることを前提にした。だから余計なことは入れない。説明もしない。だけど結果的に説明不足。ふたりの恋を描くことが大切だが、仕掛けが生かされきれないのが惜しい。タイトルの真鯵が生きない。スーパーで彼女を見失った後、謎の夫婦と出会いラストに至る流れに説得力がないのが残念。


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