習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

2014-02-02 20:32:03 | 映画
 ドヤ顔のデカプリオ(わざと、です!)が、満身の笑みを浮かべる。よくもまぁ、こんな映画を作ったものだ。顰蹙を買うためとしか言いようがない。久々にマーティン・スコセッシ監督がやりたい放題している。楽しそうだ。湯水のようにお金を使って(凄い製作費だろう)、同じようにアホほどお金を使い、放蕩の限りを尽くす男を描く。あの『華麗なるギャツビー』の後で、この映画を平気で演じられるディカプリオって凄すぎ。僕はこの映画を高く評価する。こんな映画は二度と見られるはずもない。いけいけ過ぎて、どうなるのか、と心配になるほど。でも、勢いは止まらない。どこまでも、行くぜ、って感じだ。3時間、恐れを知らない狂気の沙汰だ。

ただ、この後に書くことは、そんなふうにこの映画をちゃんと認めたうえでの、僕だけの感想だ。別に気にしないでいい。

上映時間は3時間である。今時珍しいこれだけの長尺になったのは、プロデューサーも兼ねるディカプリオがスコセッシに自由にさせたからだ。好きなように作ってもいいと。映画は実にやりたい放題の作品になっている。上映時間の長さだけではなく、当然18+になるしかないような過激な描写の連続技。こんな不謹慎な映画をよくぞ作ったものだ。主人公は映画の中で終始「ファック!」を連呼する。もちろん、やってることもセックスとドラッグ。凄まじい。金をここまで使うって(しかも無駄なことに)爽快。

  実在の株式ブローカーの回顧録を映画化したものらしいが、バカにも程がある。この手の成功譚は枚挙に暇がないけど、その乱行をここまで、しつこく見せる映画はない。悪趣味だと思う人もいるだろうが、そもそもそれがこの映画の狙いなのだ。

 最初は笑いながら見ている。映画だし。だが、だんだんあまりのバカさに笑えなくなってくる。僕ら貧乏人だから、こういうのって、だんだんむかついてくる。アブク銭だから、こんな使い方でいいのかもしれないけど、それにしても、こいつらのバカ騒ぎは、見ていて、悲しくなってくる。狂気の沙汰が延々と描かれていく。3時間ずっとだ。どこまでもやる。際限がない。

 そのうちだんだんお金なんか、意味がないと思えてくる。もちろん必要なお金がないと生きていけないことなんかわかっている。でも、必要以上のお金は人間を腐らせる。しかも、口八丁手八丁で、他人から掠め取っていく。株の売買って、凄いな、と改めて思う。というか、そんなことは思わないな。驚きではない。このくらいのこと、想像ならいくらでも出来る。だが、自分とはあまりにかけ離れた世界なので、不思議の国の出来事のように映画を見ることになる。虚しくないのか、と思う。僕はこの映画を見ているだけで、虚しくなった。こんなことしても、何の意味もない。こいつらとは、生きる世界が違うし、憧れるはずもない。

 だいたい僕は、バブルの頃だって、まるで世の中がそんなことになっていると言うことすら知らなかった。ただ、目の前にある自分の毎日の仕事をこなしていただけ。もちろん何の恩恵も受けることはなかったし。

 映画はつまらないわけではない。呆れた男たちのバカ騒ぎに取り込まれ、ジェットコースターに乗った気分で、あれよあれよという間にとんでもない世界に連れていかれる。そういう意味では、これは実に映画らしい映画だ。だが、見終えてなんだか虚しい気分になった。


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『メモリーズ・コーナー』 | トップ | 白石一文『彼が通る不思議な... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
老い? (北本貴子)
2014-02-07 04:39:37
私、バブルとは遠い隣村で芝居してたのでこの映画を観るか怯みますね。
だんだんバブルな人々を表現するのにフィルターが無くなっていて、心構えが間に合わず どきりとしてしまう事があります。
子供のころはもっとえげつない映画みてたはずなんですけどね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。