これは凄い。久々に心震える。読みながらこんなにもドキドキした。この男がどんなふうに生きるのか。教育とは何なのか。生きるとは何なのか。いろんなことを考えさせられる小説だった。お話を楽しむだけではなく、ここには、一体何が起きているのか、それを見届けるために読んでいる。そんな感じだ。
今という時代を生きる子どもたちに何ができるのだろうか。これからの時代を生きる彼らの困難を少しでも緩和してあげることが大人の使命のはずなのに、彼らは目先のことしか考えていない。自分たちのことで精一杯なのだ。わからないでもないけど、でも、あなたたちよりも、もっともっと困難な時代を生きるこれから先の世代のために、あなたたちにはやるべきことがあるはずだ。自分の利益さえ享受できたなら、後のことなんかどうでもいいと考えるべきではない。
小学校の先生になって、子どもたちのために生きようとしたひとりの教師は、当然のように学校を放逐される。システムの中では不可能なのだ。教育は職業ではない。生き方だ。だから、サラリーマンではないのだから、自己の使命を全うするには辞めるしかない。だから彼は無理だとわかった時、潔く辞める。
虐待を受けている子どものために、親と戦うなんてことをしたら、そりゃあ、首になるだろう。子どものために保護者に刃向かうような教師は今の教育現場では生きていけない。本当にふざけた世の中になったものだ。
彼は現行のシステムが誤りであるのならば、自分が正しいシステムを作る。傲慢なことではない。それこそ正しい行いではないか。これは目が覚めるような小説だ。彼と彼の妻になった霧子の物語である。タイトルにある「私」が彼の妻の霧子だ。この小説の面白いところは、主人公である「彼」ではなく、視点を彼の妻の側に置いたところにある。ふつうの人間である彼女の目から「神の子」である彼の無謀な行為を客観的に見守ることで見えてくるものを、同じように彼女の視点から我々も見る。奇跡を目撃するのだ。
子どもたちの生きる力を育てるためには何が必要なのか。漠然と「生きる力」なんていう文科省の役人が言いそうな曖昧な言い回しをしたが、そんな言い方すら真実になるほど、彼の実践はリアルだ。これはきれいごとではない。
人にはそれぞれの寿命がある。理不尽なものもそこにはあるだろう。だが、大人が幼い子供の命を奪うことはあってはならない。しかも、それが彼らの親であるなんてとんでもない話だ。これは、虐待されている児童を守るための戦いを、個別のケースから描くのではなく、その元を断つための戦いとして描こうとする。これは絵空事ではないし、絵空事であるべきでもない。荒唐無稽な設定をベースにしてそこからこんなにもリアルな物語を立ち上げた。僕たちが今何をしなくてはならないのか、この小説は教えてくれる。生きる勇気がわいてくる。
今という時代を生きる子どもたちに何ができるのだろうか。これからの時代を生きる彼らの困難を少しでも緩和してあげることが大人の使命のはずなのに、彼らは目先のことしか考えていない。自分たちのことで精一杯なのだ。わからないでもないけど、でも、あなたたちよりも、もっともっと困難な時代を生きるこれから先の世代のために、あなたたちにはやるべきことがあるはずだ。自分の利益さえ享受できたなら、後のことなんかどうでもいいと考えるべきではない。
小学校の先生になって、子どもたちのために生きようとしたひとりの教師は、当然のように学校を放逐される。システムの中では不可能なのだ。教育は職業ではない。生き方だ。だから、サラリーマンではないのだから、自己の使命を全うするには辞めるしかない。だから彼は無理だとわかった時、潔く辞める。
虐待を受けている子どものために、親と戦うなんてことをしたら、そりゃあ、首になるだろう。子どものために保護者に刃向かうような教師は今の教育現場では生きていけない。本当にふざけた世の中になったものだ。
彼は現行のシステムが誤りであるのならば、自分が正しいシステムを作る。傲慢なことではない。それこそ正しい行いではないか。これは目が覚めるような小説だ。彼と彼の妻になった霧子の物語である。タイトルにある「私」が彼の妻の霧子だ。この小説の面白いところは、主人公である「彼」ではなく、視点を彼の妻の側に置いたところにある。ふつうの人間である彼女の目から「神の子」である彼の無謀な行為を客観的に見守ることで見えてくるものを、同じように彼女の視点から我々も見る。奇跡を目撃するのだ。
子どもたちの生きる力を育てるためには何が必要なのか。漠然と「生きる力」なんていう文科省の役人が言いそうな曖昧な言い回しをしたが、そんな言い方すら真実になるほど、彼の実践はリアルだ。これはきれいごとではない。
人にはそれぞれの寿命がある。理不尽なものもそこにはあるだろう。だが、大人が幼い子供の命を奪うことはあってはならない。しかも、それが彼らの親であるなんてとんでもない話だ。これは、虐待されている児童を守るための戦いを、個別のケースから描くのではなく、その元を断つための戦いとして描こうとする。これは絵空事ではないし、絵空事であるべきでもない。荒唐無稽な設定をベースにしてそこからこんなにもリアルな物語を立ち上げた。僕たちが今何をしなくてはならないのか、この小説は教えてくれる。生きる勇気がわいてくる。