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映画・演劇のレビュー

『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q』

2012-12-06 19:05:01 | 映画
いきなり始まって、ワンエピソードが終わったところで、「つづく」の文字が出る。そして、すぐに次回予告も入る。これは映画ではなく、TVそのものだ。90分の映画というスタイルで綴るTVシリーズの1編という位置づけであろう。明らかに確信犯的行為である。長編大河ドラマの1作(その第3作)ではなく、連続ドラマの1本。1話完結のエピソードという感じだ。

 「序」は、TVシリーズのリニューアル。「破」は、オリジナルをベースにした映画ならではの新展開。そして、今回の「Q」は(「急」ではないところが、一見ふざけている)TVそのものの展開。そんなふうにアプローチがまるで違う3作となった。この後、「?」が続くはずだが、それがちゃんとした完結編になるのかどうかは、出来上がってみなければわからない。

 それにしても、まったく全体の構造が読み取れない作品だった。90分が、約30分ずつのところで、アイキャッチのようなタイトルが入る。最初の30分ほどの冒頭のエピソードの後でようやくメインタイトル。でも、それって遅くないか? もちろんわざと、である。そのあと、さらに30分。終盤に入る直前にサブタイトル(?)「3・0」というやつが入る。一瞬ここで終わるのかと思わせる。そこからクライマックスのバトルになり、最後には「つづく」の文字が出る。

 映画自体は、TVシリーズでも、散々やりつくしたいじけたシンジの内面告白。ひきこもり男の愚痴がモノローグとして、バカバカ描かれていく。エヴァのコックピットの中にひきこもっていじけている。もうひとりの自分であるカヲルに守られて、「僕はひとりじゃない」とか言って、ちょっと元気になるけど、カヲルが途中で離脱したところから、やっぱりひとりぼっちなんだ、とか、僕なんていなくてもいいのだ、とか、いつものあれである。見ながら、旧TVシリーズを見ているような心地よさがあった。

 もちろん今回はそこがねらいであることは、全体の構造からしても明らかである。サードインパクトの後の世界、そして、フォースインパクトをまたもや自分にせいで引き起こす。いじけるシンジ。フォースインパクトをなんとかして、食い止めようとするアスカ。なんだかとてもわかりやすい。

 この映画が予想通りのものすごい大ヒットとなる。マニアックで表面的には難解きわまるこの映画に、こんなにもたくさんのお客さんが押し寄せてくる。社会現象となる。まぁこんなもんでしょう。

 映画の前にスタジオジブリ製作の特撮短編映画『巨神兵東京に現わる 劇場版』が同時上映される。これがまた、感動の一編。ミニチュアワークの粋を極めた逸品。見事としか言いようがない。リアルではなく、精巧の極致を目指すその芸術的行為には、目を見張らされる。これはアートだ。ペラペラのCGでなんでも出来るようになった時代への挑戦である。凄すぎる特撮映画だ。

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