『荒地の家族』の佐藤厚志の新作は小学3年生の男の子が主人公だ。彼の目で見た世界が描かれる。寂れた団地。そこで暮らす子どもたちの目線から描かれる日々のスケッチ。
喘息を持ち支援学級で2年を過ごした蓮は3年から普通クラスに入る。環境の変化に最初は戸惑う。虐めに合う不安もある。だけどなんとか溶け込み、なんと、いじめっ子とも上手く渡り合う。順風満帆な毎日。だけど緊張は続く。転校生と仲良くなったり、いじめっ子に憧れたり、さらには兄や父親の暴力とも向き合う。団地にいるという怪人の面影。団地に守られて、ここで過ごす日々。
学校と団地の往復の日々のその先には何があるのか。いや、そんなことよりまず今日一日を生き抜くこと。8歳という時間は毎日が永遠のように長い。