TVアニメの映画版、というよくあるパターンだ。TVシリーズも見てないし原作漫画も全く知らなかったが、たまたま70分ほど時間ができたので、ちょうどいい尺だったからと見始めた。だが、最初の5分見て「さすがにこれはないわぁ、」と思う。やめようかと思う。この幼いアニメを大人が見続けるのは苦行かも、とも。だが、せっかくなので我慢して見続けた。するとそのうちなんだかこの何とも言えないほのぼのした世界観にハマってしまうことに。なんなんだこれは。でも、これはこれでいいかも、と。
田舎の中学3年生、夏休みのお話だ。西片くんと高木さんは恋人未満で友人以上の関係。ふたりはこの中学生活最後の夏を思い切り楽しみたいと思う。その想いはこのふたりだけでなくほかのクラスメートたちも同じだ。「なんなんだ、これは、」と思う。
田舎の中学生たちは受験勉強とかしないのか? この映画の子供たちは一切受験の一言すら口にしないぞ。進路については話すのに、である。大事なことは中学最後の夏休みをいかに過ごすか。それが一番でそれ以外のことは2の次。なんてこの子たちはノーテンキなのだ。素晴らしいな、と感動した。
瀬戸内海の島(小豆島)を舞台にしてのんびりとひと夏を過ごす彼らの姿を描く映画はたった72分という短い上映時間。その中で描かれるのは夏の日のことだけ。主人公のふたりは中3なのに小学校低学年のように無邪気に毎日会って、遊んでいるし。お寺でみつけた赤ちゃん猫を飼うエピソードも中3とは思えないおぼこさ。小豆島の中学生はみんなこんなふうに純粋培養されているのか、と(いうわけはなかろうが)思う。
ラストではなんと大人になったふたりのその後がさらりと短く描かれる。結婚して子供が生まれて、3人でホタルを見に行くエピソードが追加されているのだ。しかもエンドタイトルの後。そこにさらりとそんな描写が挿入されていて、なんだかうれしくなる。なんて心優しい映画だろう。
もちろんこれは大した映画ではない。なんだかなぁ、の映画だ。だけど、こんな映画はたまにあってもいいかぁ、と思う。これはこれで見てよかった。この感じは『若おかみは小学生』を見た時の感動に近い。(もちろん、あの傑作には到底及ばないけど)