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映画・演劇のレビュー

『新聞記者』

2022-01-31 14:32:08 | 映画

藤井道人監督がネットフリックス映画として新たに作ったもうひとつの『新聞記者』を見た。森友学園問題を正面から扱う意欲作で、全6話約6時間に及ぶ大作で、とても面白かった。最初の2話までを見た時には、これって報道された事実そのままで、今更こういう形で映像化することに意味があるのか、と少し首をひねらざる得なかったけど、当然のことだが、これはただの豪華版再現ドラマには堕さない。吉岡秀隆演じる財務局職員が自殺したところから、話は大きく動き始める。政府の(というか、自民党の)隠蔽工作を暴き真実に迫ろうとする米倉涼子演じる記者だけではなく、群像劇としてお話が動き出すからだ。事実の背後にあり、悔しい思いをしている人たちの戦いのドラマとして映画は立ち上がる。

米倉だけではなく、もうひとりの主人公に横浜流星を配して、新聞を読んだことのない大学生が叔父の自殺から事件を他人ごとではなく自分の問題と感じ、真相を知ろうとするお話を展開させた。これは入り口としてわかりやすく、事件を通して何を描こうとしたのか、意図は明確だ。あからさまな事実の単純なドラマ化ではなく、事実を通して物語として、現実と向き合うきっかけになるはずだ。

安倍政権(というか、安倍総理)のしたことを、告発するだけではなく、さまざまな出来事の奥には何があるかを、事実をもとにしたドラマとして再構築していく意義を感じた。事実そのままではなく映画としての脚色を施したフイクションだろうが、大事なことはこういう事実を隠蔽して平気で政治を行う人たちがこの国を牛耳っているという事実だろう。国民をバカにした政治がまかり通るのが今の日本だというのなら、それを誰かが何とかして変えなくてはならない。横浜演じるノンポリ学生が新聞記者となり、真実を報道しようと思う、という展開は安直だが、それはそれで尊いことではないか、と思う。自殺した職員の遺族が、裁判に立ち向かい、それを支持する人たちがいる。政府の隠蔽に断固としてNOと言う。そういう頑なな姿勢がこの映画の動機だ。わかりやすく事件の核心を描き、自分たちが何をなすべきかを熱く語る。そんな力作である。必見。


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