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映画・演劇のレビュー

1970 年 大阪万博

2025-03-16 07:48:00 | 映画
今回の中之島映像劇場は大阪万博。もちろん2025ではない。あの輝かしい1970である。あの時僕は小学4年生で、あの場所で「未来」の美しさと「世界」の広さを体感した。千里丘は夢のような場所だった。

あれから55年。この春から始まるらしい大阪万博には行かない。たぶん、いや絶対僕は夢の残骸である夢洲には行かないだろう。ディストピアを見たくはない。

1970。もちろんあの頃、あの場所には未来だけがあったわけではない。1970がどんな年だったのかは大人になってから改めて理解した。70年安保に揺れる日本はとんでもない岐路に立たされていたことは明白で、大阪のお祭り騒ぎよりベトナムのことや目の前のことの方が大切だと思う人たちが多数いたことだろう。暢気に『人類の進歩と調和』なんて言ってる場合ではない。だけどまだ小学生だった僕にはそんな難しいことはわからない。

今大人になって,もう一度あの1970を振り返って見る。そんな機会に感謝する。昔、山田洋次監督のこの傑作映画『家族』を見たのは偶然だった。休みの日のお昼間に暇で、なんとなくNHKで放送していたのを見てしまった(はず)。あの時衝撃を受けた。たぶん中学生の頃だろう。あれが本格的な山田洋次作品との出会いだった。今回久々に見て最初から涙が出て困った。確かにこれはあの頃の風景だと思った。

谷口千吉監督の『日本万国博』はたぶん配信(Amazonプライム)で数年前に見た気がする。(10年も経っていないのに、もう忘れている)懐かしい気分になった(はず)でも違うかもしれない。これは丁寧に万博を記録している貴重な映像だろう。

羽田澄子と勅使河原宏作品は未見である。あの頃の万博会場で、あるいはどこかで、この2作を見るにはまだ僕は幼すぎたからだ。羽田作品は古河パピリオンで未来を見せる富士通の挑戦を描くドキュメンタリー。勅使河原作品はパピリオン内で(自動車館)公開された映像作品。こんな映画を今見れるなんて、国立国際美術館は相変わらず攻めてくれる。

久々の『家族』はやはり素晴らしい映画だった。70年にあれを作った山田洋次はやはり凄い。続く『日本万国博』はさすがにキツかった。あれを3時間見せられるのは地獄だ。ただの記録だからせめて1時間半くらいにして欲しいけど。(もちろん当時はこれだけのボリュームにしなくてはならなかったのだろうが)羽田澄子のPR映画が紹介するのは富士通のコンピュータだけだけど、それだけで充分当時の会場の様子は伝わるし万博の雰囲気は楽しめる。勅使河原宏監督の『1日240時間』も楽しい。バカバカしいけど、当時の気分がよく伝わってくる彼らしい作品だ。脚本はもちろん安部公房。当時、この皮肉を平然と明るい未来のフリして万博会場で見せたのか。

それにしても朝の10時から6時までの長丁場は凄い。これだけのプログラムを用意するってさすがだ。満腹である。今回の企画は大阪万博協賛であろうが、もう一度「あの時」を見つめ直すためのとてもいい企画だった。

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