『はかないものがたり』とサブタイトルにはある。79は戦後79年のこと。それを「泣く」と読ませる。これは3人の女学生の終戦までの日々を描く小さな物語。3人はバレエが大好きで女学校のクラブ仲間。チームメイトは疎開やさまざまな理由でばらばらになり今ではここには3人しかいない。芝居は彼女たちと(時には顧問の先生とも)のおしゃべりが中心になる。
今年の仰星高校のコンクール参加作品。惜しくも本戦出場を逃し見ることが出来なかった(地区大会で優秀賞止まり)が、今回私学芸術文化祭参加作品として再演されたのでこうして見れたのが嬉しい。
余談だが、地区予選で審査員がこれを落とす理由はわからないでもない。とてもよく出来ているけど、あまりにストレートすぎて余白がないからだ。意外性もない。だからそこを不満に思う人もいるのだろう。だけど最初から作り手はそんなものを目指していない。
彼女たちは20年8.14大阪大空襲で命を落とす。後1日で戦争は終わったのに。あの日の空襲でたくさんの人が亡くなった。この芝居は彼女たちのなにげない日々のスケッチを通して彼女たちの抱えた傷み、無念な想いを描いた。3人の役者たちが素晴らしい。素直にそこにいる。それだけでいい。(もちろんさりげなくサポートにまわる先生も悪くない)
今回の阪本さん(作、演出は阪本龍夫先生)はこんなにもストレートに戦争を描く。いつものように舞台中央に巨大な日の丸。ラストで日の丸が落ちる。少女たちの死と共に。ここまで直球勝負をされるとさすがに怯む。だけど今こんな風にして高校生たちと共に戦争に向き合うことは素晴らしいと思う。これは人ごとではない。我々自身の問題だから。
年末最後にいい芝居を見ることができた。感謝。