習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ブリングリング』

2015-05-16 20:44:56 | 映画
ソフィア・コッポラの新作だ。今回も彼女は自分の興味の赴くまま、自由に世界を切り開く。少女たち(少年も混じる)のキラキラした暴走振りに圧倒される。むちゃくちゃする。おいおい、と思う。でも、彼女たちは止まらない。犯罪映画なのに、その遊び感覚は楽しい。不謹慎は承知の上で彼女たちのショッピングを(その危ない冒険を)なんだか、応援してしまう。きっととんでもない目に遭う。そんなことは、わかっているのに、(というか、彼女たちも頭ではわかっていたはず、)なのに、どんどんエスカレートするのは、楽しからだ。

 セレブの家に忍び込んで服からバッグ、ジュエリーの数々を盗みまくる。自分の身につけ、楽しむ。留守の豪邸で羽を伸ばして好き放題する。そりゃ楽しいはずだ。最初はちょっとおどおどしたけど、だんだん慣れてきて、もう自由自在。いいのか、ここまでやりたい放題。お金だって盗み放題だし。だから、もう普段からお金には困らない。

 映画は捕まった後の彼らの姿から始まる。でも、自業自得ということを言いたいわけではない。そりゃ警察もバカじゃないから、いつか、捕まる。というか、もっと早く捕まえられたはずなのに、どうしてこんなにも時間がかかったのか、と信じられない。でも、楽しい時間は少しでも長いほうがいいから、わざと捕まえさせなかったのか。そんなふうにすら思うくらい。

彼らの背景とかを、ごちゃごちゃ言わないけど、ちょっとした描写でしっかり描く。(同日見た『ジェリーフィッシュ』とは大違い)こんなに簡単にセレブの家に忍び込めるのか、とあきれるけど、これは実話の映画化で、本当にそうだったみたいだ。なんと実際の被害者が映画の撮影に協力している! それも凄いことだ。それにしても、どんだけ、彼らのセキュリティ意識は甘いんだ、と驚く。だいたい何度も忍び込まれているのに、気がつかないって、そっちの方が異常だ。

犯罪行為を通してきらきら輝く子供たちという凄い図式なのだが、そういうとんでもないことを、否定的には描かない。もちろん、彼らが正しいというわけではことは、当然の事実なのだが、映画は彼女たちを断罪しない。きらきら輝く彼女たちをまぶしい存在として描く。特に自分の容姿のコンプレックスを持っていて、自信のなかった転校生の男の子が彼女たちと一緒にいることでどんどん自信を持っていく姿は見ていて、楽しい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ジェリーフィッシュ』 | トップ | 笑の内閣『名誉男性鈴子』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。