習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『マルタのやさしい刺繍』

2009-07-29 21:12:42 | 映画
 おばあちゃんたちの大冒険のお話。80歳のマルタは夫が死んでからずっとふさいだままだ。仲間たちは気が気ではない。もう9ヶ月も経つのに今も引きずって塞ぎ込んだままだ。何も手がつかないでいる。そんな彼女を友だちは励ます。

 なんだか、いじらしいではないか。スイスの田舎の村を舞台にしたハートウォーミングなのだが、ただ心温まるだけのお話ではない。けっこうシビアだ。彼女を応援するのは身近な仲間だけで、男たちや、周囲の人たちは冷ややかだ。彼女は昔やっていた仕事をもう一度やりたいと言う。それはランジェリーを作ること。だが、老人がそんな「いやらしい下着」を作って販売するなんて、村の面汚しだ、と批判される。でも、彼女と仲間たちはめげない。牧師をしている息子は最低の男で、母親の気持ちなんてまるで理解しようともしない。

 結局、大切なのは友だちだったりする。彼女たちが励ましてくれるから、マルタは店を出せたし、嫌がらせのもめげずに頑張れたのだ。でも、周囲の目はなかなか厳しい。次から次へと難題が降りかかる。たった90分ほどの小さな映画なのに、大変だ。

 夢見る気持ちはいくつになっても失われない。80歳から新しい人生を始める老人たち。彼女たちの嬉々とした姿を見ていると元気になれる。なんだか人生捨てたもんじゃないな、なんてね。単純な話だが、なかなか単純に話が運ばないのもいい。これは夢のようなお話ではなく、夢見るおばあちゃんのお話。あきらめない心が彼女を成功に導く。ネット販売での成功から、ラストの、老人ホームの人たちの協力を得る場面まで終盤は一気に駆け抜けていく。この小さなお話はみんなに勇気と元気を与えてくれる。

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