先日のアニバーサリーver.と較べると、とてもわかりやすい作品に仕上がっていることに驚く。各作品はそれぞれちゃんと劇場に合わせたアレンジがなされているのだが、基本は同じ台本を使ってある。それをこんなにも肌合いの違う2本の作品に仕上げたのだ。台本を書いたはせひろいちはこのオリジナル版の方にも少し手を入れてくれたらしい。オリジナルはもちろんこのウイングフィルドで上演されたものだから、そのままで充分この劇場仕様になっているはずなのに、さらに手を加えるという大サービスぶり。はせさんも一緒にこの企画を大いに楽しんでいる。
この線路脇の倉庫と6階建ての雑居ビル。そのロケーションもしっかり取り込み、さらにはそれぞれの劇場自体の特質も生かして、異なるキャスト(人数も)で、同じ話がまるで異なる様相を呈する。演出の関川さんの狙い通り。
さすがにこちらはオリジナルver.なので、台本にも無理がない。シンプルな仕立て方をした。6階という空間設定からスタートしてその高さを効果的に使う。実際の窓からさりげなくブロックを落とすシーンの生々しさ。刑事による尋問からスタートして、事件の概要、彼女の存在、ここにやってくる男と、彼女を監禁する男。3者の関係性もシンプルでわかりやすい。
2時間の上演時間だったアニバーサリーver.の混沌とした雰囲気、わかりにくさも棄てがたいけど、テンポよく見せて100分にしたこの作品のわかりやすさの方を買う。前回の関川さんの粘っこい演出はとても彼らしくてよかったと思うけど、今回のスマートな見せ方もとてもいい。主役の3人の芝居も初々しくていい。