先週ようやく細田守監督の最新作であるこの映画を見ることができた。ずっと見たかったのに、時間がなかった。でも、見れてよかった。とても、感動した。途中からずった泣いていた。小さなころのいろんな想いがここには溢れている。なのに、この感想を書くまで1週間もかかった。それくらいに時間がなかったのだ。たった30分の時間を作れないほど忙しいって、異常だ。
平日の朝いちで見たので空いていてゆったりとした気分で見ることができてよかった。梅田の屋根裏スクリーン(4,5番スクリーン)は、狭いだけでなくいたずらに横長なので、サイドから見るのは苦しいし、5列しかないから前の方で見るのも苦しい。快適に見るためには最後列中央で見るしかない。観客が8人だったので、周囲を気にせず見ることができた。あまりよくないという評判も聞いていたので、覚悟して見たのだが、僕はとてもよかった。期待通りの傑作だ。
最初から今回は小さなお話を目指しているのだから、お話が広がらないのは大前提だろう。スケールの小さな大冒険を目指した。基本的に家から出ない。とても狭いエリアでのお話だ。これは4歳児のくんちゃんの見た世界のお話なのだ。彼が未来から来た妹ミライちゃんと家族の100年の歴史をたどる冒険に出る。ストーリーも短編連作のスタイルになっている。中庭からスタートした小さな話の連鎖の先に未来のくんちゃんが待っている。
くんちゃんはミライちゃんと時をかけることによって、100年に及ぶ家族の歴史をみつめることになる。4歳児が生まれたばかりの赤ちゃんとの確執を通して、今ある状況を拒絶したとき、中学生になったミライちゃんと出会う。おかあさんの子供の頃、ひいおじいちゃんの若かったころと時代をさかのぼる。自転車の乗れるようになるエピソードなんてあまりのたわいなさに唖然とさせられるけど、そこがいい。恥ずかしがらずに、どこにでもあることをちゃんと描こうという姿勢がいい。
とてもバカバカしいことに必死になって、時をかける少女となりくんちゃんのもとにやってくる大きな妹(中学生!)ミライちゃん。過去の物語と今ある現実。そして、未来をみつめる。10数年後の自分と出会い(高校生に、なっている)未来世界を旅するくんちゃんは東京駅で迷子になる。
これは確かに実にたわいもないお話でしかないかもしれない。だけど、こんなふうにして、人は生きていく。それは事実だろう。小さな子供の視点から、両親のこと、生まれてきたばかりの妹のこと、自分の置かれた位置、そんなこんなのいろんなものが見えてくる。今年一番の傑作であり、これは細田版『となりのトトロ』だったのだ。
そして一番羨ましいのは、くんちゃんと同じぐらいの年齢でこの映画が見られる男の子。歳をとるごとにこの映画が内包するものを一つ一つ味わえるのはきっと素敵だと思うのです。