中学生の女の子が学校になじめず孤立する中で、出口を見出していく、というパターンの児童文学を2冊連続で読む。
第58回講談社児童文学賞・新人賞を受賞したこの作品は、マレーシアからの帰国子女が、同じように孤立していた先輩を通して短歌と出会い自分の居場所を見出していくまでを描くさわやかな作品。タイトルの『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』はマレー語で「5,7,5,7,7」ということ。謎の呪文ではない。要するに短歌の31音を表す。マレー語を短歌にまぜるだけで、全く違う新しい世界が広がっていく。とても小さな話だけど、ひとりの女の子の心の軌跡を丁寧に追いかけていて好感が持てる。明るいタッチで暗い想いが描かれる。
同じように、中学女子を主人公にした『地図を広げて』は少し暗めの作品。読んでいて少しつらいけど、この重さは岩井成子の持ち味だろう。両親の離婚によってバラバラに暮らしていた姉と弟が、母の死によって4年の歳月を経て一緒に暮らすことになる。別れ別れになっていた日々を埋めることは簡単にはできない。小3になる弟が戻ってくることで広がる波紋が描かれる。転校してきた弟は、昔住んできたはずの町になじめない。4年の空白を埋めることは難しい。地元の小学校になじめず、中学に上がるとき私学で新しいスタートを切った主人公もまた、中学でも同じように周囲に溶け込めない。孤独なふたりが少しずつ今ある環境に溶け込んでいこうとする姿が特別な事件もなくゆっくりとしたペースで描かれていく。何かを手にするためには時間がかかる。その時間の重みに耐えかねる日もあるがなんとかして切り抜けていくしかない。誰かが助けてくれるわけではないが、周囲に誰もいないわけでもない。父もいるし、一握りの友人もいる。そして、姉には弟がいるし、弟には姉がいる。それだけでいいのだと思う。