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このよくわからさが、ジャブジャブサーキットらしくていい。短編集のはずなのに、まるでどこにも完結していない。1篇1篇は独立もしていない。短編連作ではなく、1本の作品のようにつながっている。どこかで確かに。冒頭ウィルスの感染に対してのやり取りから始まったので今回はそこを追求していくのかと思ったら、そうではなく、いつも通りのパターンになり、全体の作りに緩さとストーリー性のなさに、不安になりつつも、目の前に繰り広げられる何気ない対話に引き込まれていき、舞台から目が離せなくなる。ああ、これがジャブジャブサーキットだ、と思わせられる至福の90分間だ。
「舞台から」と先には書いたけど、今回は「スクリーンから」と書くべきだろう。こういう形でもこの時間を共有できてよかった。約2年ぶりとなるジャブジャブサーキットの新作である。今回は大阪公演はない。名古屋と東京だけになったのは悔しいけど、仕方あるまい。大阪は、この名古屋公演のライブ・ビューイングとなった。ウイングフィールドの大スクリーン(舞台と同じサイズ)で上映される。ちゃんといつも通り観客を入れて芝居小屋での上映というスタイルが嬉しい。まるでナマで芝居を見ている気分が(あくまでも気分ですが)味わえる。芝居はライブだから面白いし、観客がそこにて、お互いのコラボでもある緊張感が素敵だ。このできるだけそれに近い上映という試みはうれしい。しかも、上映後、はせひろいちさんと虚空旅団の高橋恵さんのアフタートークもしっかりある。今見た芝居の興奮を共有してはせさんたちのお話が聞けるのである。こんな贅沢はなかなかあるまい。しかも、終演後、ロビーではせさんと立ち話もできた。(もちろん、一瞬だったけど、)
今回、久々に咲田とばこが大活躍されるのもうれしい。怪しい研究員として最初から登場する栗木己義もいい。尺八とのコラボもあり、コロナ禍を象徴する『研究員Cの画策』を起点した短編を再構成して長編仕様にした。お話自体はかなり抽象的で、ぼんやり見ていたらなんだかよくわからなくなり焦った。でも、舞台から目が離せないのは先にも書いた通りだ。
終末医療の現場や、ギャンブラーの話、さらにはその二つの話を行き来する生きているのだか、死んでいるのだかよくわからない人々の話。3つの世界の同時進行。何が何だかよくわからないけど、妙に心にひっかかって、それがずっと続いていく感じが心地よい。劇中のギャンブルは、トランプやサイコロによるアナログ定番を踏襲、4桁の数当てにこんなにもドキドキさせられる。