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映画・演劇のレビュー

沢木耕太郎『銀河を渡る』

2018-11-10 21:51:28 | その他

 

25年ぶりの沢木さんの全エッセイ、ということだ。『路上の視野』『象が空を』に続く3冊目なのだが、先の2作とは少し趣を変えて、量的にはそれほど膨大ではない。2段組だった先の2作は圧巻だった。特に『路上の視野』はあの頃の僕にとってバイブルだった。80年代の20代の僕にとって沢木さんの著書を読むことは最高の至福だった。あの頃、沢木さんと、川本三郎、藤原新也は僕の神様だった。あれから30年以上の歳月が経った。

 

この本を読みながら、久しぶりに、新鮮な気持ちにさせられた。わかっていたことだけど、沢木さんは変わらない。なのに、僕は変わってしまった。彼より10歳以上若い僕はもう晩年を迎えている。あの頃の情熱はもうない。覇気もなく、ただなんとなく惰性で毎日を無為に過ごしている。こんなはずじゃなかった。幾つになってもいろんなことに興味を持ち、自分に自信を持って、仕事に挑む、はずだった。なのに、どうしてこんなに無気力な人間になったのだろうか。そんなことを考えながらむさぼるように読んだ。

 

変わらない沢木さんの情熱を目の当たりにしながら、それに影響され自分も元気になれたならよかったのだが、そんな甘いことはない。最終章は死者を悼むエッセイ群だ。ちゃんと生きた人をたたえるような文を読みながら、自分はどうだ、と思うと、ますます情けなくなる。

 

 


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