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映画・演劇のレビュー

『ジョン・ウィック パラベラム』

2019-10-20 08:47:10 | 映画

 

このシリーズ第3弾は完結編だったはず。しかも、お話のクライマックスで終わる前作を受けて、本作はそこから始まるので、全編がクライマックスになる。2時間11分の最初から最後までが過激なアクションの応酬。息つく間もないとは、このことだろう。

 

だけど、これはきつい。どれだけ凄いアクションであろうとも、そればかりが続くとさすがに飽きる。映画には緩急が必要だ。この映画は最初からそのバランスを崩している。派手なアクションを連打して、それをさらにエスカレートさせて、それでいったいどこに向かうのだろうか。それって虚しい。それに、これでも終わらないという選択肢をどう受け止めればいいのか。なんだか、騙された気分だ。

 

第1作目を見た時の感動と興奮はめったにないものだった。あまり期待していなかったと言うこともあるけど、想いもしない展開と凄まじいアクションシーンに興奮は抑えられない。引退した殺し屋が、犬と車のために、とてつもない殺戮を繰り返すさまに啞然とした。

 

その興奮は2作目にも続く。だが、それをさらにエスカレートしたこの3作目で、僕はちょっと待てよ、という気分になる。凄いことが虚しくなるなんて、想いもしなかったけど、それが事実だ。これはあくまでも映画なのである。映画の魅力はそこに描かれるドラマのなかにある。なのに、この映画にはもうドラマはない。だって、これはお話のクライマックス部分だけを拡大したのだから。単調になり、飽きる。4作目を暗示するラストを見ながら、もういいよ、と思う。

 

1作だけでよかった。昔のジャッツキー・チェンのカンフー映画を見たときのような気分だ。『酔拳』『蛇拳』の頃だ。野っ原で師匠と(あるいは、敵と)アチャアチャしてる。それを延々と見せられるとだんだん退屈してくる。もうどんな凄まじいアクションシーンにも興奮しない、ようになる。あれと同じだ。

 

とてもよく出来た映画だ、それだけに。これではなんだかもったいない。世界中の殺し屋たちを敵に回してたったひとりで戦う。でもそこに悲壮感はない。孤高のヒーロー、ジョン・ウィックというキャラクターは凄くいいのだから、もう少しちゃんとした仕掛けが欲しい。

 


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