2021年は読みたい本をどんどん読もうという夢にような時間を過ごした。年間277冊の本を読んだ、そのほとんどが小説である。そして基本的に新刊を中心にして読んだ。とても楽しかった。映画や、(ちょっとした)仕事(のようなもの)のない日は読みやすい本なら1日2冊くらいのペースだ。じっくり読みたい本は数日かけて終日読む日を作ったりもした。もうやりたい放題である。
昔、将来の夢は、本を読んでそれが仕事となればいい、とバカなことを思ったこともあった。朝、9時くらいに職場に行き、そこで終日、好きな本を読んで、5時くらいになれば家に帰る。それで給料を貰えたなら最高だな、となんて思っていた。「本を読んで」、というところを「映画を見て」に変えてもいいけど、それはさすがに厚かましいか、とも。そんな仕事はないかな、と思っていたけど、あるわけがない。
今、仕事を辞めて、毎日家で本を読んで、配信で映画を見て暮らしている。だいたい週に2回、2本ずつくらいのペースで映画館に映画を見に行く、というのがパターンだ。悠々自適って感じだ。飽きるまで、しばらくはこれでいい。というか、これがいい。お金はなくても時間はある。本は図書館で借りる。
1位 ほたるいしマジカルランド (寺地はるな)
2位 スモールワールズ (一穂ミチ)
3位 猫弁と鉄の女 (大山淳子)
4位 毎日が生きづらい (宮田真冬)
5位 やさしい猫 (中島京子)
6位 きみの傷跡 (藤野恵美)
7位 7、5グラムの奇跡 (砥上裕將)
8位 ばにらさま (山本文緒)
9位 神さまのいうとおり (谷瑞恵)
10位 血も涙もある (山田詠美)
次点は「その扉をたたく音」(瀬尾まいこ)、「最高のアフタヌーンティ」(古内一絵)他、100冊くらいか。今年は寺地はるなの読み残していた小説を一挙に読めた。いずれも素晴らしいものばかり。
坂井希久子『たそがれ大食堂』、柚木麻子『らんたん』、彩瀬まる『新しい星』、丸山正樹『ワンダフルライフ』、小川糸『とわの庭』、岸政彦、柴崎友香『大阪』、加藤千恵『この場所であなたの名前を呼んだ』、朝倉かすみ『にぎやかな落日』、山本悦子『ボーダレス・ケアラー』、谷口雅美『私立五芒高校 恋する幽霊部員たち』、大島真寿美『結 妹背山婦女庭訓波模様』、吉田修一『オリンピックにふれる』、等々。タイトルだけでもきりがない。
本当は年頭に読んだ『私を月に連れてって』(鈴木るりか)の衝撃がベストワン級なのだが、2021年出版作品からのベストテンにしたのでそれは除外した。同じ理由で、江國香織『彼女たちの場合は』、寺地はるな『水を縫う』、一穂ミチ『今日の日はさようなら』も。特に後者のふたりの作品が素晴らしい。だからベストテンでは彼女たちの2021年作品を1位、2位にしてみた。角田光代『銀の夜』、町田そのこ『うつくしが丘の不幸な家』(評判になった『52ヘルツのクジラたち』よりこちらの方がいい)もよかった。初めて読む作家では、幸村しゅう『私のカレーを食べてください』がまさかの拾い物だった。
それにしてもベストテンだけではなく昨年読んだ本のほとんどが女性作家のものばかり(7割が女性作家の作品)だった。最近ますますそういう傾向が強まる。男性作家の書くものは性に合わないものが多い。翻訳はあまり読まないけど、数少ない海外作家の小説では、林育徳の『リングサイド』がベストワン。
もちろん、ベストテンといいつつも、ほとんど順不同だ。いつものことなので、順位は気にしないでください。