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映画・演劇のレビュー

『白頭山大噴火』

2021-09-03 09:31:31 | 映画

2019年韓国で大ヒットしたディザスター・パニック映画。だが、これは『日本沈没』のような映画ではない。悲観的な現実を描くのではなく、何があろうとも前向きに未来を信じ、この局面を乗り越えようとする。韓国映画は力強い。日本映画とは違う。

冒頭の大地震のシーンが凄い、このつかみが見事で、これだけのスペクタクルを最初にやりきったらこの先はどうなるのかと、心配になる。だが大丈夫。そこを踏まえて本題に入ると、映画は災害映画ではなく、壮大なミッションを受けた2人の男の冒険大活劇になる。朝鮮半島の半分が崩壊する大災害を食い止めるため、白頭山に核を装備して、噴火をそこで食い止める。そのためにはウランが必要で北朝鮮に入ってウランを盗み出し、4度目の白頭山の大噴火の前に、爆発させるとかいうようなお話だ。

『彼とわたしの漂流日記』のイ・ヘジュン監督と、『神と共に』シリーズの撮影監督キム・ビョンソが共同でメガホンをとった。イ・ヘジュンの『彼とわたしの漂流日記』はとてもチャーミングな映画で、今回のこの大作映画を彼が手掛けるなんて意外だったが映画を見て納得した。派手なアクション大作だけど、とても温かい映画に仕上がったのは彼の力だろう。この手の映画によくある安っぽいヒロイズムとは無縁だ。

北朝鮮の工作員を演じたイ・ビョンホンが素晴らしい。これは彼と主人公であるハ・ジョンウによるバディムービーにもなっている。ニヒルなイ・ビョンホンと、少し間抜けなハ・ジョンウによる凸凹コンビの珍道中ものなのだ。75時間という短い時間で困難を極める任務を乗り越えなくてはならないにしては、なんだかとてものんびりしているし、緊迫感がないのはご愛敬。悲壮感溢れる映画になるしかないところをこのふたりが和ませる。

でも、ふざけているのではないし、映画はこのとんでもないミッションを一つ一つ乗り越えていく姿を納得で描いているのはさすが。北朝鮮軍と戦い、アメリカ軍にも追われて、もちろん時間までに使命をやり遂げなくては半島は壊滅するし。ハラハラドキドキの手に汗握る映画でもあるのだ。というか、そういう映画なのだ! なのに、この余裕。イ・ジュンの采配は見事。それをキム・ビョンソが支えたのだろう。説得力のあるビジュアルを創造した。これは2人の役者と2人の監督のコンビネーションが見事にとれたバランスがいい映画なのだ。だから安心して楽しめる。2時間8分があっという間のできごと。第1級の娯楽活劇だ。こんなにもよく出来た映画がちゃんと大きなマーケットで公開されないのは悔しい。


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