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映画・演劇のレビュー

HPF、信愛『エトワールと青い月』

2008-08-04 21:20:45 | 演劇
 僕にとっての今年のHPFはこの作品で幕を閉じた。三会場を使って20日間にわたり、22作品を上演した今年の高校演劇祭は例年以上にハイレベルな作品を多数生み出すことが出来たのではないか。状況が過酷になればなるほどその切実さが高校生達にも伝わり、そのピリピリするような緊張が作品を予想以上のレベルへと引き上げることとなったのかもしれない。

 僕はたった5作品しか、見ていないから偉そうな事は言えないが、少なくとも僕の見た5本は粒揃いだったし、周囲の人たちの話から察するに秀作がここから続々生まれてきていたようだ。後日の講評会が楽しみ。

 さて、信愛のこの芝居だ。これには一切大人の手が入っていない。堤先生がいるのにそれって何?とは思わない。反対にこれを見て、何も言わずにそのまま上演させた先生と、このチームに拍手を贈りたい。これだけ素朴で、無邪気な作品を心のままに上演させたのは凄い。彼女たちを信頼し、失敗も含めて経験としていこうとする強い姿勢なくしては成立しない作品である。

 自分たちの力だけで拙いながらも、思いの丈をすべてぶつけ、1本の芝居の中に投入していこうとした。感動的な作品だ。

 ここには無駄な時間が山積みされている。90分という上演時間は、もたもたした暗転処理ひとつで10分くらいは詰めることも出来そうだし、芝居の内容自体もどう考えても50分程度でコンパクトに描ける程度のものである。段取りの悪さ、無駄なシ-ンが、芝居をこれだけの長尺にしてしまった。

 しかし、それが何だというのか。この幼い芝居を通して表現された世界は、今の等身大の彼女たちの芝居だと断言できる。胸を張って私たちはこの芝居を作り上げたのだ、と自慢してもらいたい。自分たちで勝ち取った栄光がここにはある。

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