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映画・演劇のレビュー

『次郎長三国志』

2008-10-15 23:08:31 | 映画
 マキノ雅彦監督第2作である。叔父であるマキノ雅弘監督の代表作のリメイク。これはかなりの気合いが入った作品であろう。東宝版全9部作のいいところを存分に1本に投げ込んで仕上げた渾身の力作、のはずだった。だが、現実は厳しい。だいたい最初から、これは無謀だと思った。この素材は映画向けではない。

 次郎長もののよさはディテールにある。子分たちをいかに魅力的に見せていくかが最大のポイントとなる。なのに映画ではそのための細かいエピソードをじっくりとは描けない。2時間強の尺しかないのだから不可能なのだ。そうするとポイントを絞り込まなくては成立しないこととなる。それは無理だ。この素材の魅力が生きないからだ。だが、そんな苛酷な条件の中、この映画はよく健闘したとは思う。

 子供の頃、テレビで見た『清水次郎長』が大好きだった。毎週土曜日の8時が楽しみだった。あの時のときめきが忘れられない。次郎長は竹脇無我だった。今回、なんと彼がお蝶の兄役で出演してる。冒頭に出てきたときにはちょっと感動してしまった。大体最近彼を映画で見たことがない。ということはこの映画だから出演したのだろう。この冒頭の捕り物シーンはかなり良く出来ていてワクワクさせられた。この映画の中で一番いい。(それって、なんだかなのだが)お蝶と次郎長の祝言の場面である。テンポのいい幕開けだ。前半はあれよあれよで早すぎる展開もこの映画なら仕方ないし、なかなか上手いと思った。

 だが、後半に入ってだんだんペ-スが落ちてくる。ラストに黒駒の勝蔵(佐藤浩市)との対決がないのにも唖然とする。尺の関係だろうがあんまりだ。それならその前のお蝶(鈴木京香)の死の部分をもっとはしょったらよかったのではないか。大友康平と木村佳乃の部分もいらない。あそこでもたもたするから、クライマックスが弾まない。竹内力が怪演を見せてくれているのだから、あの場面から一気に佐藤浩市との対決までつなげて欲しい。

 次郎長一家の面々はよく描かれている。個々のエピソードの見せ方もこの現状(2時間の上映時間)ではベストではないか。これ以上は不可能だ。マキノ監督の狙い通りに出来ている。それだけに後半からラストへの流れが悪くなるのは残念でならない。中井貴一の次郎長も素晴らしいのに惜しい。

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