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これが今年度のウイングカップ最後の作品になる。これもまた近大発ウイングカップ行きの若手劇団である。
お話自体は実にバカバカしい。だけどただふざけているのではなく、かなり真剣になっている。終盤にはなんと深刻にもなる。田中と生徒会長の対決なんてこれは何なのか、と思わせた。だからこれはただのコメディではない。
とある高校の部室。男子女装ロボットダンス部。(いくらなんでもこの団体名では職員会議に通らない!)通称「男ダン」(タイトルも『だんっ!だんっ!』)は先輩たちが卒業して現在部員は2名。新入部員を入れないと廃部になる。
というか、まずこんなクラブが存在するはずがない。ふつうなら学校が認めないだろう。冗談だから、あり得た。そんなリアリティ・ゼロの世界を芝居だから作れる。
くだらない話から始まる。部室でだべっているふたりの話題は女の子のオッパイを揉みたいという事。オッパイはあったかいか、とかで会話は盛り上がる。実にくだらない話に熱が入る。
部室に間違えてやって来た新一年をなんとかして入部させようとしてあの手この手。まぁよくあるバカ芝居になる。適当に笑わせて終わり、というパターンか。
だけどなんだか少し違う。ただのおふざけコメディではなく、そこに切実なものが秘められている、かも、と思わせた。よくわからない。どこまでが本気でどこからが冗談なのか。そんな微妙なラインで作られているから、わかりにくい。
だけど、それがこの作品の魅力かもしれない。だが、やはりそれってかなり微妙。芝居は不思議な世界を提示するには至らないが、とりあえず普通じゃない世界は提示した。当日パンフのクラス通信、チケットの入部届というちょっとした気配りも楽しい。いろんな意味で自分たちの世界を構築するために細心の配慮をする。もちろん悪くない。そんなところから新しい芝居が生まれる(のかもしれない)。