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映画・演劇のレビュー

『インセプション』

2011-06-12 20:17:45 | 映画
 夢の中の夢の中の夢に入り込む。この4重構造によるラスト1時間に及ぶクライマックスは圧巻である。しかし、いかんせん1時間は長すぎる。最初の現実の6倍の時間が夢の中の時間で、その更に6倍がその内側の夢の時間だから、6×6倍ってことなのか? まぁ、ともかく夢の中の10秒が、もの凄い長さになるということだ。そこに生じる複雑な構造がこの映画自体をおもしろくすると同時に退屈にもしてしまう。これは両刃の剣だ。もちろんクリストファー・ノーランはそんなこと、承知の上で、この危険な映画に挑戦している。

 ラストも、それがはたして現実なのか、それすら曖昧にするようなオチを用意する。昨年、公開されたとき、これを見てがっかりした。大劇場のスクリーンで見たくて、公開と同時に時間を作って映画館に行った。仕事のあとのレイトショーで見たのがまずかった。疲れていたから、劇場の椅子に腰掛けたところで、安心し、ついついうとうとしてしまい、最初の方で何度か夢の世界に入ってしまった。そのせいで、話がわからなくなった。あれには焦った。すくなくとも、2時間20分以上は見たから、ほんの少しなのだが、それだけでこの映画に於いては致命傷となる。

 2度目は、今年の正月、旅行で飛行機に乗ったときに見た。吹き替えだったし、飛行機の中だし、とても落ち着いて見れる状態ではなかったが、そんなことより、何より、自分がやはりちゃんとストーリーを把握していないことに気付かされて、衝撃を受けた。見てないシーンも一杯あったし。びびった。ちょっとした見落としが、全体の理解を損なう。最初に見たとき、こんなの夢やから、なんでもありやんか、と思い、がっかりしたが、2度目で、夢の論理を見事に使ったよくできた映画だと、わかった。それはともかく、この飛行機の中で見る夢を描くこの映画を、飛行機の中で見るなんて、偶然とはいえ、なんか凄い。

 あれから、5ヶ月。もう一度今度はDVDでちゃんと見た。やはり面白かった。ようやく1年越しでこの映画と本当に出会った気分だ。最初は夢うつつ。2度目は、夢のように。3度目は、夢から覚めたあとで。こんなふうにして、まるで別の印象を、1本の映画から満喫出来たなんて、それも凄い。こんな短期間に3度も同じ映画を見たのも久しぶりだ。



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