ついに完結編。このシリーズ第6作で、小学校を卒業するまでが描かれる。といってもこれは1年から始まったビルドゥングスロマンというわけではない。1年からではなく5年からだし、ひとりの主人公のお話ではなくクラスメイトたちの小さなエピソードに積み重ねだ。まず5年1組から3組までが描かれて、それから6年1組から今回の3組まで。3部作×2。
毎回たくさんの子どもたちが登場して、短いお話が綴られてきた。学校だって同じではなく、今回は今年限りで廃校になる海辺の波島第一小学校が舞台となる。今回も15人のお話からなる短編集。
卒業と同時に母校がなくなる。下級生は来年からは波島第二小学校に通うことになる。15人の想いを乗せてお話は卒業に向かう。
ささやかなお話がさりげなく描かれる。だけどこんな、たわいもないことのひとつひとつが思い出になる。ことさら感動的なドラマは用意しない。ラストは卒業式が描かれるけど、それだってそこまでの日常の延長線上にある。吉野真理子は、こんなにもささやかな時間を丁寧に綴る。それだけ。だから愛おしい。