東京モノレールを舞台にした深夜ドラマを作りたいという連絡があり、東京モノレール総務課の清藤澄奈、35歳はTVプロデューサーと脚本家に会う、というところから話は始まる。小野寺さんがこの日本初の東京モノレール小説を書くということと、劇中劇であるドラマ作りの話は微妙に共鳴する。
始まると相変わらずの小野寺小説である。今回は東京モノレール羽田空港線を描きたかったのだろう。その路線を書くためにお話をでっち上げた、って感じ。小野寺さんは町を舞台にして小説を書く。お話は後回し。まず、どこの町を書きたいか、からスタートする。駅から主人公の住むところまで、さらにはその周辺のロケーション。そんなことが最優先事項だ。
東京モノレールの路線の町。東京モノレールという会社。今回はここで働いている4人が主人公になる。最初は直接ドラマは描かれないけど、小説と企画されたドラマはリンクする、と思いつつ読んでいたら、4話の後にはドラマが示された。しかも彼らが主人公ではないけどちゃんと登場することになる。本編は会社の人たち、ドラマ部分は東京モノレールを利用する人たちが主人公になる。
1話は相変わらずの街歩き小説でもある。小野寺さんは最近このパターンが大好き。だけど2話からは少し違うパターンに。運輸部の梅崎初巳30歳、営業部の水村波衣25歳、最後は技術部の杉本滋利40歳。世代、性別、部署。さまざまなケースでこの会社で働いている4人のスケッチだ。そこにはドラマらしいドラマはないけど、彼らの話からそれを30分4話からなるドラマに仕立てるお仕事小説。少しいろんな仕掛けを施しすぎてまとまりはよくない作品になったのは残念だ。あまりに狙い過ぎた。