これはとても高校生らしい作品だ。幼いながらも(失礼!)精一杯背伸びしている。だけど、そんな(無理する)ところが微笑ましいし、好ましい。中編作品の2本立。
前者は、高校時代からの4人の友だちの話。彼らの過ごす長い歳月。その中の日々をいくつかの点景として描く。数年に何回かある飲み会での描写が中心になる。ラストはコロナ禍のオンライン飲み会まで。
もう1本の後者は、17歳最後の日を繰り返す男の子の夏の一日を描く。バス停でのクラスメイトの女の子とのなんでもない会話。暑いなぁと繰り返すだけ。18歳にはまだなりたくない想いから、同じ1日を繰り返す。
2本ともやりたいことはわかるけど、あまりに単純すぎていささか退屈。それはお話に仕掛けがないからだ。森のうさぎたちやきつねが見守ることにも意味を持たせきれてない。(こういう傍観者の視線は面白いけど)この内容なら2本をセットにして描けることがある。それを打ち出すことも出来たはず。大人になること、再開発による環境破壊。大人になりたくないこと、17歳という時間へのこだわり。対比を通して今と未来を考える、そんな作品に仕立てることも可能だった。全体に対するテコ入れが欲しい。