上田啓輔の企画、演出、主演による公演。先月のwomen'sによる公演に続いて今回は男たちだけでの公演となる。横山拓也の傑作戯曲に挑戦する。劇団大阪では今までも横山作品を3度取り上げてきて今回で4回目となるが、今回は上田さんの個人プロデュース。彼のこの作品への深い思い入れが充分に込められた作品に仕上がっている。
とても怖い話である。だが、そこは彼らにとってはなんでもない日常。いつもの一日が描かれる。食肉処理の現場が休憩室の描写を通して淡々と描かれていく。知らない世界を垣間見る。彼らの当たり前がまるでホラーのように映る。上田演出はその違和感や差異をさらりと見せてくれる。たった3人の役者によって演じられる不安と恐怖の世界。たった90分ほどの悪夢。
横山拓也の世界観を見事に自分のものに置換した。描かれることは彼らのただの日常。だけど、そこからはみ出すちょっとした事件が起きる。描かれるのは延髄紛失を巡るドラマ。食肉加工の現場に足を踏み入れる85分。毎日当たり前に食べている牛肉や豚肉。その解体作業を直接見せるわけではないが、ここからその空気感が確かに伝わってくる。
2人の日常に異物であるひとりの男が混入してくることから生じるドラマ。彼らが狂気に至るまでが描かれて、再び日常に戻るまで。まるで何事もなかったかのようなラスト。丁寧に作られた佳作である。