ついついこういう緩い小説を手に取ってしまう。電車の中で読むのにちょうどいいからだが、働いてないから今は週に3回くらいしか電車に乗らない。働いていた時は毎日電車の往復の間しか本を読むことが出来なかったが今は生活の中心に読書時間がある。昔はそんな暮らしに憧れていたけど、実際のところそうなるとこれはこれで退屈。まぁ、人間わがままだから仕方ない。さて、この小説だが、あまりに緩すぎて物足りない。昨日の『可哀 . . . 本文を読む
この大胆なタイトル(性欲、ではない。誤解してこれにエロを期待することはないと思うけど)以上に大胆な内容を伴う長編小説を2時間余に抑えて映画化した。岸善幸監督は、この難しい題材と正面から向き合う。それにしてもここまで抑えた映画になっているとは思いもしなかった。商業映画の限界に挑んでいる。終わった後、まだクレジットが流れているのに「わからん」と声を上げて怒っている老人が映画館にいたけど、仕方ないと思う . . . 本文を読む
今回の万博設計はサカイヒロトによる新作と13年に上演した一人芝居の二本同時公開。10周年記念公演となる。世界の、同時に劇団の、過去と未来を見つめる。
サカイヒロトの新作台本が見れるなんて夢のようなことで、それをもちろん本人の美術、映像で見せる『YO RU TO RO TO RO』』は素晴らしい出来の作品だった。演出も彼ならそれは万博設計ではないから、もちろん演出は橋本匡市。これは橋本さんの提示す . . . 本文を読む
可哀想な、の後に猫とかではなく、蝿と続くと「えっ!」と思うだろう。これはそんな「えっ!」が描かれた小説。それは冒頭の『可哀想な蝿』だけではない。次の『まりこさん』もそうだった。可哀想なのは誰? その答えから始まる物語。猫を虐待する男を撮った動画を投稿したことで、インスタでバズったことから始まる。猫なら可哀想で蝿は可哀想じゃない。蝿を殺しても誰も蝿に同情したりしないし、殺したことを非難することはない . . . 本文を読む
これは重松清からのメッセージ。早稲田大学でのゼミの延長線上にある若い世代の子どもたちに思いを綴る『夜明け前に目がさめて』を中心にして編まれた作品集。彼は僕と同世代で、いつも言っていることがよくわかるけど、少し甘いからなんだか面映い。恥ずかしくなる。小説でもそうだから、こんなセミ・エッセイはなおさらだ。だけど、こんな時代だから、彼からのストレートなエールは心温まる。さすが重松!って感じ。
冒頭の掌 . . . 本文を読む
昨日待望の『こころ』を見てガッカリしたところだけど、同年公開のこの映画を今日見て、そのあまりの素晴らしさに衝撃を受けた。これもAmazonで配信されていた。さすが市川崑だ。40代に突入した50年代、絶好調の時期。これはさまざまな作品を乱打していたアブラの乗り切った頃の作品だ。この直後には大作『ビルマの竪琴』を作っている。だが、これはあれよりも充実した別格の傑作だった。
モダンで斬新。 . . . 本文を読む
江國香織の新作はもちろん恋愛小説ではない。そういうのはもう今の彼女の眼中にはないのだろう。50代の3人の女性たちの日常をスケッチする。10代からの付き合いで、今も仲良くしている3人組。途中からは彼女たちの周囲の人からの視点も含めて描かれる。
作家で独身、母親とふたり暮らしの民子。自由人で離婚してイギリスから帰って来た今は無職で宿無しの理枝。普通の主婦で、施設にいる認知症の義母の面倒も . . . 本文を読む
夏目漱石の傑作を市川崑が1955年に日活で映画化した作品。以前から機会があれば見たいとは思っていたが、見る機会がなかった。それが、なんとAmazonに入っていたのだ。しかも後10日で配信終了。ということで早速ワクワクしながら見ることにした。
市川崑監督の作品は大好きだが、これはいただけない。原作をまるで理解していない。お話を安易になぞっただけの映画になっている。どうしてこんなことにな . . . 本文を読む
これは森鷗外の若かりし日の物語。短編連作で描かれる診療日誌だ。ただ彼が鷗外じゃなくてもいい、って感じ、はする。鷗外が鷗外になる前の森林太郎時代、まだ、何者でもない若者が(医者だけど)さまざまな患者や仲間たちと出会い、成長していく青春ドラマ。NHKのTVドラマにぴったりの小説。
読みやすいし、それなりに感動することもできる。ただ後には(あまり)何も残らない。ひとつひとつのエピソード . . . 本文を読む
山崎貴監督が挑んだゴジラ70周年記念大作。庵野による『シン・ゴジラ』以降の新作はハードルが高い。そのハードルを彼は難なく乗り越えていく。彼は国産ゴジラのエポックとなる作品が求められる。そしてこれは第一作、さらには『シン・ゴジラ』に続く第3のゴジラ映画になった。
まず、設定が素晴らしい。それだけで勝ちは決まった。まさかの戦後すぐの日本が舞台だ。戦争の生々しい傷痕が残る焦土の東京にゴジラ . . . 本文を読む
二冊目。こちらはからさんの視点から描かれる。前作から3年後。からさんが乳ガンになり、人生の終末を意識して過ごす日々が描かれる。治療は上手くいき、しばらくは安心したがまた転移した。この先どうなるかわからない。そんな日々のスケッチ。まひろはからさんの自伝を書いてライターとしても、活躍している。「まひろの章」が素晴らしい作品だったから期待したけど、この続編は残念ながら、後日談の域を出ない。語りたいお話自 . . . 本文を読む
二部作になっている。2冊同時に出版された。から(伽羅)さんの家を舞台にして、そこで暮らすことになったまひろとその家の主人であるからさんのお話。まず『まひろの章』から読む。(次に『伽羅の章』に続く)
18歳。高校を卒業したばかりのまひろは義理の祖母であるからさんの家で暮らすことになる。家事手伝いと作家であるからさんのアシスタントのようなことをする。大きな家には3人の同居人がいる。シェアハウスのよう . . . 本文を読む
今時こんな昭和テイストの映画が作られるだなんて驚きだ。(描かれる時代は明治だけど)敢えて古いタッチを目指したというより、まるで考えもなしに作っている気がした。これは最初から「今の映画」であることを無視している。こんなにも真面目に感動ドラマを一心に作る時代錯誤ぶりには軽い衝撃を受けた。ここには映画としての仕掛けがない。今これを作る意味がわからない。この無邪気な映画は悪気なんてまるでない。純真すぎて眩 . . . 本文を読む
前作『リチャード3世』に続くシェイクスピアシリーズ第3弾。今回も3部構成で3時間半の大作である。原作を活かしながらさらにその先をあるものを目指したくるみざわしんの台本を得て笠井友仁の演出は冴え渡る。テキストを踏まえた前半は少し単調だが、そこから逸脱してくる後半が素晴らしい。父の亡霊と立ち向かい、母と向き合い、この狭い世界から外に出て行く。イギリスに送られるところからラストまで、まさかの展開で手に汗 . . . 本文を読む
今朝方、夢を見た。一度2時半くらいに目醒めて、もう一度眠りに着いたが気づけば4時半。起きた時には、「あっ、夢、」と思っていた。そこは広い田んぼ、か野原。道があり向こう側には別の町。こちらの町と向こうを繋ぐその道をゆったり歩いていく。あたり一面、何もない広大な畑野。ようやく向こう側に着き、町中を歩き始める。知らない町を歩くのは大好きでそれが一番の趣味だと思っている。(映画と演劇、読書は日常。)どんど . . . 本文を読む