安倍夜郎「深夜食堂」


 漫画の続きです。

 昨年読んで気に入った漫画の第2巻と新規作を数冊読みました。うーん、一部は微妙な読後感です。「デトロイト・メタル・シティ」も面白さは同じなのですがもう笑えないというか、読み進む喜びを感じないというか、どうしても次巻を読みたいという気にさせないような印象を持ちました。

 「バガボンド」は圧倒的に面白いです。最新の27巻まで行くかもしれません。「岳」もいいですね。実際に高度な登山を体験している作者だけが書きえる迫真性があります。「神の雫」もワインの深遠な世界への作者の傾倒が垣間見えて単なる劇画を超えたリアリティがあります。
 結局、現在の漫画も原作次第という面があるのでしょうか。分業するケースがあるにしても、骨太の原作に魅力的な作画も必要となるとこれは大変な力量が求められる世界です。

 今回、新規に読んだ2作品にしみじみとした感動を覚えました。1作目は、吉田秋生「蝉時雨のやむ頃」です。これは女性コミックなのですが、2007年のナンバー1と評されていたので購入しました。鎌倉に住む3姉妹、家族を捨てて別の女に走った父の訃報が舞い込み、山形での葬式に一応参加する…というところから物語は始まります。しっとり系の人間模様/ラブコメなのですが、登場人物の描き方がうまいのと舞台となっている鎌倉が作品全体に柔らかい印象、落ち着きを感じさせて引き込まれます。
 私は鎌倉には最近行っていなくてあまりイメージが沸かないのですが、この漫画を読むと住みたい町ナンバー1というのが分かる気がします。しかも、古いけど広い日本風住宅、多くの人の理想を具現化しているのかもしれません。
 読み終わってすぐに第2巻を買おうと本屋に行きましたが、まだ第1巻しか出ていませんでした。続きが楽しみです。

 もう1作、安倍夜郎「深夜食堂」です。「営業時間は深夜0時から朝の7時頃まで。メニューは豚汁定食にビール、酒、焼酎…それだけ。あとは勝手に注文してくれりゃあ、できるもんなら作るよ。」という帯と、表紙のタコの形の赤いウィンナー、これを新刊コーナーで見て、これは間違いないだろうと思いました。
 期待どおりです。赤いウィンナー、きのうのカレー、猫まんまなど注文される食べ物にまつわる優しいタッチのストーリー、絵に癒され、楽しめます。食堂のおやじと客との交流、懐かしい食べ物、この設定だけでは数話しかもたないと思いますが、様々な人間模様がキレイごとなくきっちりと描かれています。一風変わった注文にも納得させられる。ホンワカしているんですが、単なる癒し系作品ではありません。食べるって人生のドラマの重要な一部なんだなあと改めて実感しました。
 こちらも第2巻はこれから、初夏発売予定なんだそうです。楽しみです。

 その他、賭け将棋とアキバ系をミックスした不思議な迫力のある柴田ヨクサル「ハチワンダイバー」も面白かったです。これも最新刊まで一気の予感です。


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