紫式部『源氏物語』(角田光代訳)




 角田光代訳の源氏物語を読みました。面白かった。多分大丈夫だろうと恐る恐る開きましたが、期待以上。1000年以上生き残ってきた2000ページ、伊達じゃありません。以前、与謝野晶子訳を手にしたこともありましたが数ページで一旦中断。この文学全集が発表された時、『曾根崎心中』のジェットコースター訳で夢中にさせてくれた角田光代なら源氏読めるかもと思っていました。

 分厚い単行本はさすがに電車に持ち込めないので、kindle 版も購入、トータル2万2千円くらいかかってしまいました。それでも価値あり。和歌が790近く織り込まれたこの物語の魅力、面白さは唯一無二です。

 滅茶苦茶に面白いんだけど、上巻の半分で飽きて止めるかなぁが裏切られた後は一気です。当時の一条天皇はじめ宮中の上達部、女官達も驚いただろうなぁ、そして1000年間、読者を夢中にさせ続けている。
 
 紫式部日記には源氏物語に触れた箇所が少しあるらしいのですが、ある男性から「若紫みたいな女性はいませんか」と訊かれたことについて、光源氏や若紫は架空の人物なんだから、そんな人実際にいるわけないじゃんと記しているそうです。源氏物語の中でも著者の紫式部は控えめにですがたまに嘆き、吠えます。

 それにしても最後の宇治十帖での超ネガティブターンはどう捉えればいいのか謎です。それらしい解説はどうにでも書けるのですが読み物としてどうなのか。でも光から影への転換の魅力も否定はできない、かな。

 上巻の解説で角田光代が「この化けものがどこにいくのか、ぜひ、私といっしょに見守ってほしい」と書いていますが、信じてついて行って正解でした。


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